パズル
言い訳をしないあなたと理由を欲しがらない私は、とても良い関係を築けている。
鮮やかな色合いのパズルのピースを、箱の蓋にぶちまける。あえて図面を伏せ、ふちどりを探さず、真っ赤な色合いをより分けて大輪のガーベラを浮き上がらせた。
「春に転勤になる」と、あなたは気遣わしげに私を見た。「安心させるから」と視線を合わせるその誠実なまなざしにうっとりできない私の楽天さは、きっとあなたに相応しくない。あなたのその性格は、本来なら不安で揺れる乙女心と化学反応をおこすはずだから。
揺れない心はドラマを生まない。
黄色の塊からは黄色の、オレンジの塊からはオレンジの、ピンクの塊からはピンクの花が浮かび上がる。濃淡の緑でつながれたそれぞれの花の配置を予想する。
与えられた絵を組み上げているだけなのに、とても創造的な気がする。
鉢植えの背景の淡い生成りのピースを、花の影だけを頼りに組み上げる。
芸術は俄然作業じみてくる。
あなたはあの誠実な眼差しで、似たり寄ったりのピースひとつひとつに寄り添う。
作業と割り切る私と、その姿勢は違っていて、隣り合わせのピースにはなれないみたい。
勘だけを頼りに美しく描き出されるバスケットの花々は、わかりやすすぎず、わかりにくすぎず、よい匙加減で生み出される。
「離れ離れになるよ」、と呟くあなたの寂しさと裏腹に、私はとても良いパズルを選んできてくれたのだなと嬉しくなっている。
次々と変わる鼻歌の、一曲に絞れないその喪失感を、私はわからないふりをしている。
喪失感も、誠実さも、全ては春になればわかるだろう。
思い出の小箱 十四たえこ @taeko14
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