【エッセイ_05】女性から恋愛相談を受けた時は、共感9割・意見1割の割合を心がける

 同性(女性)から相談を受けた時は、自分の意見は言いすぎない。

 もしくはまったく言わないこと。

 40年ちょっと生きてきて学んだことだ。これに限る。


 共感よりも意見が上回った時。

 良かれと思って発言したことでも、悲しいかな、疎遠を生み出すきっかけになることがある。

 女性が他者に恋愛相談をする時、意見を求めるのではなく共感してほしいということに気づいたのは、40歳にさしかかるあたりだった。

 長年女性をしているにも関わらず、なぜ気づくのに40年もかかったのかというと、

不思議なことに自分自身はこのケースに当てはまらなかったからだ。


 自分のことを振り返ると、昔も今も人に相談する時は(どんな内容であっても)

本気でアドバイスを求めている時だ。

 それに自分で言うのもなんだけど割合素直な性格なので、アドバイスしてもらったことに深く感謝をし、そのまま取り入れることが多い。


 しかし、その感覚で同性の恋愛相談にのっていたのがいけなかった。

 どうしてかというと、それまで仲の良かった3人の友人と一気に疎遠になってしまったからだ。


 ここで、疑問に思った人もいるはず。

 相談ではなく、なぜ「恋愛」の相談なのか。


 おそらく恋愛の話の方が相談してくる人の心にダイレクトに響きやすいからだろう。

 相談者の考えとは違う意見を言うと、たとえそれが客観的な意見であっても冷静に受け止めてもらえずにヒートアップさせてしまうことがある。

 そして、疎遠になった3人の同性はこのケースに当たる。


 一人目の人は、最近関係がうまくいっていない彼氏の相談だった。

 相手の男性の行動を聞いていると、その女性への扱いがやたら雑で、体の関係の持ちたい時のみ女性のもとへ連絡しているようだった。


 彼女が会いたいと言えば、相手は「仕事で忙しい」を繰り返し、同じ県内に住んでいるのに半年も会えていないと嘆いていた。


 当時、その女性は40歳に差し掛かろうとしている頃。

 彼女が本気で結婚と出産を切望していることを知っていただけに、

「結婚だけならいつでもできるけど出産まで考えているなら、別の人に目を向けた方がいいような気がします。話を聞く限り、その男性は丁寧な言葉で話しているようですけど、行動に誠実さが欠けているような気がします」と言った。


 当時30代半ばだったわたしは、その女性のことを想い、彼女の悩みと誠実に向き合った。心から考えて出てきた言葉だったけど、次の瞬間、事態は思わぬ方向へと動いた。



「わたしのことは何言ってもいいけど、彼のことは悪く言わないで!!!」。


 電話口で、彼女は大声で叫んだ。


 えっ? 

 まさかの出来事に、驚いた。


 だって、相談してきたのはそっちでしょ?

 結婚も出産も早くしたいんでしょ?


 だけど、人は一度ヒートアップするとその感情が収まるまで何を言っても受け止めてもらえないことは知っている。

「わたしはあなたのことを想って…」と言ったが、彼女の怒りは収まることはなかった。

 その後、あんなに頻繁に取り合っていた連絡は一気に途絶え、彼女の心は当時気に食わないと話していた共通の知人女性の方へとなぜか傾き、わたしは完全にのけ者にされた。


 それから1~2年経った頃だろうか。

 共通の男友達から3か月後に彼女が結婚することを教えてもらった。

 彼は当然わたしにも結婚式の招待状が届いていると思って連絡をくれたのだが、わたしには届いてなかった。

 そして、彼女の結婚式を挙げる日の2週間ほど前に「招待状を贈りたい」と電話をもらった。


 電話の向こうで彼女は、あの時の彼氏とは別れて、知人に紹介してもらった別の人と結婚するのだとうれしそうに話してくれた。

 彼女が幸せを得たことは、心からうれしかった。

 でも、共通の友人が3か月前に招待状を受け取ったのに、わたしには2週間前に連絡って…。

 義理として結婚式には招待するけど、断っていいよというのを暗に含んでいるのだろうか。


 わたしは、自分が彼女にとってこういう扱いをしていい人間になったことを悲しく思った。ただ、目上の彼女に良くしてもらった感謝の心は忘れていない。結婚式には参加して、それで彼女との関係は終わりにしようと思い、出席することにした。


 それから41歳になるあたりまで、同じような恋愛の相談を同性の2人の友人から受け、その度にバカ正直にその人のためを想った発言を繰り返した。

 さすがに3人目の女性が目の前でヒートアップした時は、うんざりした。

 だったら相談してくるなよ、と思ったが、これも人生経験だと思って黙って聞いていた。

 黙っていたのが良かったのか、その後も3人目の友人から「相談したい」と度々連絡を受け、彼女が満足をするまでひたすら聞き役に徹した。


 もう同じ轍は踏まない。

 これからは、どんな恋愛相談でも聞き役に徹すると決めた。


 それにしても、人は都合の良い生き物だ。

 相談したいと連絡をしてきたのに、彼女たちと違う意見を言うと感情むき出しになってつっかかってくる。なのに、時間が経つとその時のことがまるでなかったかのように接してくる。

 しかし、された方はその時の傷を忘れやしない。

 だから、こちらからなんとなく疎遠になってしまって、以前のように心を開いて接することができなくなってしまったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る