「Oh, ヘンリー」

るいたにかげ

「Oh, ヘンリー」

彼は深夜にタイプライターを叩いた

安物の赤ワインで酔いながら

マーラーのクラシックを聴きながら

ひとりチャンスを待った


彼は叫ぶ

俺はここだ

俺はここにいる


だが誰も彼を知る者はいなかった


彼は夜勤の工場で重い荷物を仕分ける

会話をする者は誰もいなかった

長くて寒い雨が何年も降り続けた

もう仲間の多くは夢を捨て去っていった

彼は書き続けた

何もない人生を待ち続けた


あきらめかけた一歩その先に

答えがゆらめいている


30年という月日が流れ

孤独の太陽は燃え続けた

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「Oh, ヘンリー」 るいたにかげ @ruitanikage

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