第4話

 高校につけば、荒田園高等学校入学式の看板が掲げてられており、なずなと同じ新入生と思われる生徒が保護者と共に写真を撮ったり受付を済ませていた。


なずなは天空が気遣うように自分を見ていることに気がつく。

お父さんが生きていた時はこういう行事にはお父さんも参加をしていた。


だけどなずなのためというより式に主席する大地主への挨拶やなずなの婚約者の両親への挨拶の方が目的としていたように思う。


その挨拶に一緒について回らなくていいと考えると一人、入学式に臨む方が気が楽だ。


鞄を肩に掛け直し、受付のテーブルに向かおうと歩き出せばコツンと手に何かが触れた。

何かと思い反射的に見ればそこには手が触れるほど近く天空がいた。


なにもこんなに近くにいなくてもと距離を取ろうとしてなずなはぴたりと動きを止める。


そもそも朝や昼などの明るい時間は悪霊が出現することはない。だから今日だって天空となずなが一緒に行動する必要なんてないのだ。


それなのに天空はなずなと共に高校まで歩き、入学式に立ち会っている。


天空の姿を見えるのはなずなのみのため、大地主に挨拶することも、なずなの婚約者の両親に挨拶することもできないのに。


単なる気まぐれの可能性もあるが、自分のことを気遣いついてきてくれたのかもしれない。


そう思うと今までの天空の言葉や行動が頭の中で流れるように思い出される。


きっと気まぐれではない。天空はなずなのためについてきてくれたんだ。


(私のためだけに)


そう思うとなぜだかぎゅっと喉が閉まった。胸も苦しい。


初めての感覚に戸惑うが、心配そうに眉を下げる天空にハッとして誤魔化すように歩き出した。


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