第20話 やったらやり返される

「チカ……」


「なに?」


「……」


 ちょっと意味が分からなかったけど、私の隣で寝ていたチカを無言で抱きしめた。


「朝から大胆な」


「私のベッドに入るってのはそういうことだから」


「いいけど、今日は二人っきりじゃないからね?」


 チカがそう言って後ろに視線を送るので、私もそちらを見ると、リアとユメが床に座っていた。


 何故か二人とも両手で顔を押さえて指の隙間から私達を見ている。


「言い方悪く聞こえるかもだけど、仲良しごっこ?」


「カミの熱い抱擁が刺激的なんだよ」


「リアにもした事あるはずなんだけど?」


「自分がされるのと人がされてるのを見るのだと意味が違うよ!」


 よく分からないけど、とりあえずはそういう事にしておく。


「それで何故にみんな集合してるの?」


「私が呼んだから」


 チカがモゾモゾしながら言う。


 多分私の抱擁から抜け出そうとしてるのだろうけど、私が離す気がないので諦めたようだ。


「今さ、地底したが結構騒がしくなってるの。理由は昨日の事ね」


「リアとユメも知ってるの?」


「うん、チカちゃんから聞いたよ」


「カミさんがチカさんのご家族をやっつけたって」


「家族って言われると否定したくなるけど、そうだね」


 チカの家族は地底人の中でも実力者とのこと。


 その三人を私が倒したせいで問題が起こりそうとの事だけど、私に罪悪感なんてない。


「チカを傷つける奴らなんて滅びればいい」


「ありがと。でも地上うえ地底したのどっちが滅びるかで騒がしくなってるの」


「そゆことね」


 チカが言っていたが、チカの地上に来た理由は、言ってしまえば地上の戦力を見る為。


 どこまではかは分からないけど、女子高生に紛れて流行りを知るのがチカの仕事だった。


 そこから色々なことに手を伸ばすつもりだったのか、チカの担当がそれなのかは分からないけど、流行りを知れば内側から攻めることも容易くなる。


 だけどその過程で地底人の実力者であるチカの家族が、地上人である私に完敗したとなれば慌てるのも当然だ。


「一気に攻めて終わりにするか、もっとしっかり調査してから攻めるかで話し合い中ってこと?」


「うん。実力だけは本物の人達が何も出来ずに倒せるような人がいるってなって慌ててるの」


「実際はなんでもないただの女子高生なんだけどね」


 チカの家族を倒せたのはまぐれで、火事場の馬鹿力が出たにすぎない。


 なのにチカ達からは疑惑の眼差しを向けられる。


「なんだその目は! 順番に襲うぞ!」


「言いながら私の服の中に手を入れるのやめなさい」


「やめないもんね。なんで女の子の肌はこんなに触ってて気持ちい……」


 チカのお腹をさわさわしながらだんだん上の方に手を持っていくと、二つの膨らみに手が当たった。


「ごくり」


「『生唾を飲む』を再現しなくていいから」


「……いい?」


「上目遣いでしおらしく聞かないでよ。可愛くて許しちゃうじゃん」


 チカからの許しを得たので私は二つの大きな膨らみにおそるおそる触れる。


「んっ」


「……」


「無言でそんな真剣に触るのや、めなさいよ」


「……」


 チカが何か言ってるのは分かるけど、言葉が頭に入ってこない。


 これはやばい。


「……邪魔」


「ちょっ、そ、れはぁ……」


 触るのに邪魔な布をどかし、思いつく限りの触り方を試し終わる頃には、チカの顔が赤くなり、目がトロンとしていた。


「カミ、のばか……」


「……すん」


「嗅ぐな!」


 興味本位でしっとりしていた私の手を嗅いだらチカに思い切り頭を叩かれた。


「じゃあ……」


「や、ちょ、ばっ……」


 チカの首に伝う聖水を舐めるようにキスをした。


「私を馬鹿にした罰だからね」


「して、ないの、に……」


 チカが脱力したようにベッドに体を沈める。


「カミちゃんえっちだ……」


「二人とも大人です……」


「さて、チカへの罰は済んだから、ユメはメインディッシュとして、次は……」


 私が笑顔を向けるとリアがポケットに手を入れようとしたのでその腕を掴み、押し倒した。


「逃がさないからね?」


「……やさしくしてね」


「それで出来なくなった」


 そうして私はリアの身体を思う存分に触り続けた。




「満足……」


「お嫁に行けない……」


「私が貰うから大丈夫」


 真っ赤な顔を両手で隠しながら丸まっているリアにそう言うと、絶賛罰執行中のユメを抱きしめる。


「カミさん、私にはお二人みたいなことはしないんですか?」


「されたい?」


「い、いえ、そういう訳ではないです」


 ユメへの罰は私の足の間に座らせて、後ろから抱きしめるというもの。


「ユメとは健全なお付き合いがしたいから」


「私が貧相な体だからではなく?」


「そういうこと言うなら揉むよ?」


 私が指を曲げて構えると、ユメが慌てた様子で私の手を握った。


「だ、大丈夫です」


「そう? てか近くでちゃんと見るの初めてだけど、ユメの髪って地毛なの?」


「一応そうですね。生きてる時は黒ですけど」


 私がユメをギャルと言った一番の理由は金髪だから。


 金髪イコールギャルというのは安易なのどけど、化粧をしてる事を隠す気のない化粧をして、そういうのも含めてギャルっぽいと思った。


「幽霊になったらこの姿でほんとに驚きましたよ」


「だろうね。可愛いけど」


「あ、ありがとうございます……」


 ユメが照れながら私の手をおそらく無意識にニギニギする。


(可愛い、とても撫で回したい)


 だけどいきなりそんな事をしたらユメが驚いてしまう。


 だから少し強めに抱きしめるだけに抑える。


「なんかさ、私達は体だけの関係だけど、ユメだけガチすぎない?」


「うん、カミちゃんにとって私達って都合のいい相手だよねー」


 なんだか隣から妬みの念が飛んできてる気がする。


 私の知らないところで『カミ被害者の会』を設立するのはやめて欲しい。


「リアさん、チカさん、カミさんはそんな人じゃないですよ!」


「ユメ、いいんだよ。私は極端な人間で、好きになった相手しか一緒に居ることはないんだけど、二人には私の好きが一方通行だっただけの話だから……」


「カミさん……」


 私がそう言ってユメを強く抱きしめると、ユメが私の手に優しく自分の手を重ねた。


「カミちゃ──」


「リア、ちょっと……」


 リアが私に駆け寄ろうとしたのをチカが腕を掴んで止めた。


 そしてリアに何か耳打ちしている。


(弱いところを見せたら許してくれると思ったんだけど)


 そんな打算も少しあっての発言だったけど、チカには通じなかった。


 何かしらしてくるのだろうけど、構えていればどうということはない。


「カミ」


「なに?」


「私達のことを好きなのは見てれば分かるよ。だけどそうやってユメだけを特別扱いするんだったら嫉妬するからね?」


 チカはそう言いながら私に近づいて来る。


 反対側からはリアが。


「え? 私を美少女三人が囲ってるんだけど、どんなご褒美?」


「今更何言っても遅いから。私達を弄んだ罰は受けてね♪」


(あ、私終わった……)


 そうして私は報復を受けた。


 チカにしたのと同じことをチカからやられ、リアに関しては、最初は控えめに頬をつつくだけだったのに、途中から何かのネジが外れたように私の体を襲い始めた。


 それからはずっとリアのターンで、チカとユメはなんとも言えない顔で私達を眺めていた。


 そして全てが終わった後に本題の話に戻り、リアとユメを呼んだ理由をチカが話した。


 要は地底人が攻めて来たら一緒に戦って欲しいとの事。


 攻めてくる可能性はゼロに近いけど、もしもの保険にと。


 まぁ私はそれどころではなかったけど。

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