9冊目 時を守る時計塔



 ある古い街の中心に聳え立つ時計塔。


 その時計塔から聞こえてくる鐘の音は、街の人々に時間を告げるだけでなく、ある謎を秘めていた。


 その謎を解き明かすのは、若き探偵・澄川理人すみかわりひとだった。




 事件は、時計塔の管理人が突如として姿を消したことから始まった。


 管理人は、何世代にもわたって時計塔を守り続ける家系の末裔であり、彼の失踪は街中に大きな衝撃を与えた。



 理人は、管理人の家族からの依頼を受け、調査を開始した。


 時計塔には、管理人以外の者が立ち入ることが許されていなかったため、理人は特別な許可を得て塔内へと足を踏み入れる。


 塔内の調査を進めるうちに、理人は時計塔の仕掛けられた複雑な機械仕掛けと、古い日記を発見した。


 日記には、管理人の先祖が時計塔に隠された秘密と、その秘密を守るための約束が記されていた。


 更に深く調査を進めると、理人は時計塔が単なる時を告げる塔ではなく、ある特定の日に秘密の部屋を開く鍵となることを突き止めた。


 その部屋には、街の創設者が残したとされる貴重な遺産が隠されているという。




 理人は、日記に記された手がかりと時計塔の機械仕掛けを解読し、ついに秘密の部屋の扉を開くことに成功した。


 しかし、部屋の中には遺産の影も形もなく、代わりに管理人が座っていた。


 管理人は、先祖から受け継いだ約束を果たすため、自ら秘密の部屋に閉じこもっていたのだ。


 遺産ではなく、時計塔を守り続けることこそが彼の使命だった。



 理人は管理人を説得し、彼の使命を街の人々に伝えることで、時計塔とその秘密を守る新たな約束を街中で結ぶことに成功した。


 時計塔の秘密は解明され、街の人々は再び時計塔を象徴として大切にするようになった。


 事件解決後、理人は「時計塔の秘密を守る探偵」として街中にその名を馳せることとなった。


 そして、時計塔の鐘の音は今日も街の人々に時を告げ続けている。


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