8冊目 消えた絵と残された額縁

 


 探偵事務所を営む鋭い洞察力を持つ探偵、藤木晴は、ある日、珍しい依頼を受けた。


 有名な画家の貴重な絵が、展示されていた美術館から忽然と消えたのだ。


 監視カメラには何も映っておらず、警備員も何も見ていない。


 完全なる謎に包まれた事件であった。




 晴は早速、美術館を訪れ、事件の状況を調査し始めた。


 展示室には何の痕跡も残されておらず、絵があったフレームだけが寂しく壁にかかっていた。


 彼は展示室の細部にまで目を配り、微細な手がかりを探し始めた。




 晴が注目したのは、絵の近くの床にわずかに残された異物の粒子だった。


 それは一般的な美術館の床には見られない種類のもので、特定の工芸品を扱う場所でしか見られないものだった。


 この手がかりから、晴は犯人が工芸品を扱う何らかの関係者である可能性が高いと推理した。




 次に、晴は美術館の従業員や関係者への聞き込みを行った。


 その中で、ある事実が浮かび上がってきた。


 失われた絵は、かつてある工芸家が特別にフレームを制作したものであることが判明した。


 晴はその工芸家を訪ね、彼から絵のフレームに関する貴重な情報を得た。




 工芸家によると、そのフレームは特殊な材料で作られており、熱を加えると形が変わるという。


 晴はその情報を手がかりに、美術館に戻り、絵が消えた日の展示室の温度管理記録を調べ上げた。


 すると、絵が消えたとされる時間帯に、展示室の温度が異常に上昇していたことが判明した。



 晴はすぐに結論に至った。


 犯人は展示室の温度を意図的に上げ、特殊なフレームを利用して絵を隠したのだ。


 そして、展示室が閉館後に冷却されると、絵を取り出して持ち去ったのだろう。




 この推理を元に、晴は警備システムの管理者に目を向けた。


 管理者は美術館のシステムにアクセスできる数少ない人物の一人であり、また、以前に工芸家と接点があったことが判明していた。


 詳しい調査の結果、管理者が高額な借金を抱えていることがわかり、絵を盗んだ動機が明らかになった。


 最終的に、晴の巧みな推理と根気強い調査によって、絵は無事に美術館に戻された。


 事件は解決し、晴の名探偵としての評判はさらに高まった。


 美術館からの感謝の言葉とともに、晴は次の事件へと向かった。


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