第2話 友達の証、花の贈り物
学校のある高円寺に行くつもりが新宿に行ってしまい、変なおじさんに絡まれてしまった所を
私は今日も学校のある高円寺から家に帰ろうと駅まで歩いていた途中だったが、なんだか悲しい気持ちになってしまった。
それは同級生くらいの子達が放課後に遊ぶ約束をしている風景を見たから。
もし私が高校を転校していなければ、私は今頃友達とショッピングモールで買い物でもしていたのだろうか?と思ったけど人間関係で苦しくなってしまったのだから、そんな事はどちらの選択をしても無いのだと知った。
私が転校したのはさっきも言ったが人間関係が原因。友人に選んだ人か選ばれた人かは分からないけどその人が私の人生にひたすら干渉してくるような人間で、うちには大学に行くお金というものはないから就職をすると言えば『将来お金稼げないんだから大学行きなさいよ』とか『うちもそうだけど行くんだから行きなさい』と言われる。
別にこれだけではなく登校するために別の駅から来たことに口を出されたり、バイトして親には親孝行をしろと怒られたり。
お節介なんだろうが私にとっては精神的に辛くて何をするのにもお金のことが頭に浮かんでしまい、したいことを楽しむことをやめてしまった。
そんな状況下に置かれたが、言っても教師は干渉してくるあの人間をお気に入りにしているし、私は嫌われているしで何もしないとわかっていたので学校を変えることにした。
まあどちらにしろ進学はしなければならなかったのだろうと思いながら私は駅への道を歩いている最中だった。
「瑠璃ちゃんいつも浮かない顔してるわね」
「葵依さん! 別にいつもじゃないですよ?」
「これで二回目だからまあいつもじゃないのだろうけど、二回も浮かない顔してたらいつもしてるのかと思って心配になるわよ」
「いつもはちゃんと元気ですよ? 今日はちょっと色々あっただけで」
「その色々話してくれない?」
葵依さんに再会した時に浮かない顔をしていたのを見破られた私はその理由を説明する羽目になってしまったが、葵依さんはほかの大人よりも話を聞いてくれた。ほかの大人は私の話などはどうでもいいと思っていて聞いてくれることなんてないから嬉しかった。
「話は聞いたわ、その友達確かにたんなるお節介ではないと思うくらい行動が行き過ぎよ。私が本当の友達ってのを教えるためにあなたの友達になるわ」
「本当の友達?」
「そうよ、本当の友達はね人の進路に対して最初から否定から入ってアドバイスをするんじゃなくて肯定から入ってそのうえでアドバイスを言うもんだと思うの。あと登校してきた駅がいつも違う駅なのがダメなら、寄り道で違う駅に降りるのもダメになるじゃないのよ。それに親孝行なんてねするかしないかは自由で、してない人もいるんだから!」
葵依さんがそんな風にアドバイスをしてくれたことで私は今まで残っていたモヤモヤが消えていくような感覚がした。これが俗に言う「気持ちがすっきりする」なんだなあ。
決めた、私は葵依さんと本当の友達になって誰も教えてはくれなかった本当の友達を知って今度こそ頑張るの。
「葵依さんと本当の友達になりたいんです、誰も教えてくれなかった本当の友達ってものを教えてはくれませんか?」
「私も本当の友達に瑠璃ちゃんとならなれる気がしたの、だから沢山教えてあげるね」
「ありがとうございます……」
「泣かないの、可愛いお顔が濡れちゃうよ」
葵依さんと変な会話の流れで友達になったけど、それでいいと私は思えた。これから本当の友達を私は知ることになるのだから。
「あなたが泣き止んだら、曇りだったのが晴れてきたわね。あなたは晴れ女かしら?」
「私、小さい頃からずっとお出かけすると雨ばかり降るから雨女だと。葵依さんはどうなんですか?」
「私は晴れ女で、友達にはてるてる坊主の葵依ちゃんって言われてたんだから」
「ものすごい縁起が良かったんですね」
お天道様が私たちに味方をしてくれたのか、私たちが友人同士になった事を祝っているのかは分からないけど、高円寺の空は一気に晴れた。そしてそれを喜ばしいことだと思いながら私たちは高円寺駅まで一緒に歩いた。
なんか夢見がちな少女に私が見える気がするけど、別に今日くらいは良いと思っている。
「私ね、思い出した。瑠璃ちゃんにプレゼントがあるの」
「プレゼントくれるんですか? 私、中身がお花やハンカチでも嬉しいですよ!」
「喜んでくれてありがとう。ゼラニウムってお花でね、花言葉は真の友情なの」
「ものすごくぴったりなお花。すぐ枯れてしまわないように最後までちゃんと育てますね」
大好きなあの人がくれたのはゼラニウム、花言葉は真の友情。まさしく今の私たちにぴったりなお花で心の底から嬉しくなった。
すぐに枯れたり、消えたりしないように、大切に真心込めて育てなきゃ。
「ずっとここにいたいけど、夕焼けが見えてきたからそろそろ帰ろうか」
「そうですね、私は総武線で帰るんですけど葵依さんは何線で帰るんですか?」
「私は中央線だから、ここでお別れだね。また高円寺かどこかで会おうね」
「もちろん!」
「じゃあね、瑠璃ちゃん。変な人に絡まれたりしないように気をつけて帰るんだよ?」
「はーい!」
葵依さんにそう返すと葵依さんは笑顔で手を振りながら中央線のホームに、私は総武線のホームに行った。帰る頃には学校の外に出た時にできたモヤモヤがすっと消えて、私は気付けば笑顔だった。
真の友情、ちゃんと葵依さんと成立させたいな。
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