迷える少女とカトレアの贈り物

さくら ゆい

第1話 大都会、迷う私

この春から私は大都会、東京の通信制高校生になった。

だが、千葉から初めて来たから東京が全く分からず高校がある高円寺という場所に行かなければならないのに新宿駅で降りてしまい新宿駅の南口で戸惑っている最中だ。


「お姉ちゃん可愛いね、何歳? おじさんとお茶でもしない?」


出た、これはいわゆるナンパってやつ。

ってかおじさんに興味無いし、なんで16歳の女の子にナンパなんてしてるんだよ。

ふざけないで欲しいわ、こっちは道に迷った少女だと言うのに!


「あ〜えっと……」

「だから何歳?あと予定とかないの?」


凄いしつこいなこのおじさん……。

このまま着いていくというのは不正解だが、逃げることや無視することは正解なのか? とにかく何とかしないと学校に行けなくなる、授業に出席しなければならないというのに!


「うちの可愛い妹にナンパなんてしてくれてんのよ。しかも未成年よ妹は」

「未成年!?犯罪になるからじゃあダメだ」

「見る目ないわね、本当ナンパする相手くらい見極めなさいよ」


戸惑っていたところにお花を持ったお姉さんがやってきて、私を助けてくれた。

姉妹だなんて家族設定にはなってしまったがお姉さんのおかげで私は本当に助かった。


「すみません、ありがとうございました」

「もしかしてだけど道にでも迷った?」

「そうなんです、高円寺に行きたいのに……」

「高円寺は新宿の先なのよ、私もちょうど用があったから案内するわね」

「ありがとうございます」


高円寺が新宿の先にあるなんて全く知らなかった。

電車の電光掲示板を見ればわかるだろと思うかもしれないが乗った電車の電光掲示板は全ての駅の表示ではなく、次の駅だけの表示しかなかったのだ。

でもスマホという文明の利器があるというのにそれを利用して調べなかった自分も悪かったのは確かだ。


「高円寺に行く前にお名前聞いておかなきゃね。私は葵依きい、あなたは?」

「葵依さん、私は瑠璃です」

「名前も姿も宝石みたいに綺麗なのね、繊細な感じがして守りたくなっちゃう」

「私は繊細で綺麗なんですか?」

「ええ、優しく扱わないと壊れそうな気がしてならないの」


なんか私が過敏な性格をしているからこの世には不適合な人間だって葵依さんに見破られてるみたい。

いや葵依さんは見破ってるんだ、私はまさしく不適合な人間だよ。

だって私は全日から通信の高校生になってしまったのだから道を外れたことは確かなんだ。


「三鷹行きの電車に乗ろっか」

「三鷹行きなら必ず行くんですか?」

「そうよ、中野行きは中野駅で止まるから」

「覚えておきますね」


三鷹行きの電車に行きも乗った気がするのに私はなんで新宿駅で降りてしまったんだろうか。それは寝ぼけていたからだ。ああ、私が完全に悪いなこれは。


「そんなに浮かない顔してどうしたの?」

「なんでもないですよ。そう言えば葵依さんは東京に住んでいるみたいですけど、東京出身なんですか?」

「ううん、私は三重出身」

「三重って伊勢神宮のある?」

「うん、伊勢神宮以外にも色々あるけどね」

「人生で一度は三重に行ってみたいなあ」

「三重はあなたみたいにきっと綺麗よ」


三重が綺麗なのは分かるけど、私が綺麗なのは分からないし分かりたくもない。

そして私に対して綺麗という発言はただのお世辞に過ぎないと思っている。

なんで葵依さんが私のことを綺麗と言いたがるのかよく分からずにいた。


『次は〜高円寺、高円寺』


生産性のないことを考えているうちに高円寺に着いてしまい、私は葵依さんに手を引かれ電車を降りた。


「ぼーっとしてるとすぐ閉まっちゃうわよ」

「ごめんなさい」

「気をつけるだけでいいの」

「はい」


謝らなくていいなんて初めて言われたな、今までずっと理不尽なことで怒られたとしても謝ってきたのに。

そうか私は葵依さんに出会ったばかりなのに『ダメな人間』だと呆れられたのか、でもいつものパターンがそれだから仕方ないのかも。


「目的地ちゃんと行けそう?」

「地図があれば行けますよ!」

「あとは地図さんに任せて、私は行かなきゃいけないから。学校頑張ってね」

「ありがとうございました!」

「また会えたら高円寺で会おうね」

「はい!」


そう言って走り去る葵依さんの姿を見届けて、私も高校に地図を頼って行くことにした。ああ、最初からそうすれば良かった。

でも葵依さんに出会えたのだから結果オーライなのかな。


また会えるかな。

















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