10:夢のDIY(2) 大改造計画
私は、今後、使う予定の部屋、廊下、トイレ、浴室の壁塗り計画を立てることにした。いや、壁塗りだけではない。工務店に依頼しようとしたことを今どきのDIY製品を駆使すれば、自力でいくらかできそうである。
もはや、これは仕事の計画書だ。必要製品の選定と個数、金額の見積もり。作業工程、手順とスケジュール。設置イメージ図。提案者が私で、クライアントも私なので、書式は私が分かればいいのだ。ALL私だと、簡略化できることもあれば、欠点が浮き彫りになることもある。私は最初の決断が速いが、事前調査が慎重ではない。企業ってのはうまく出来ている。プロジェクトがうまく進んでいるときは、必ず、軌道修正をするいい相棒がいたものだ。
そんなことを懐かしく思いながら、主要な部屋の電球を人感センサーつきLEDライトに変え、廊下にカーテンレールで仕切りをつくり、トイレのドアや浴室のドアを工具で取り外して外に出し、部屋、廊下、トイレ、浴室、台所の壁を塗った。
何をしているかというと、琉の居室をトイレの近くにし、バリアフリーを図りながら、琉が動いても私がすぐにわかるように人感センサーのライトにしているのだ。ただ、居室にしようとしている部屋は、リビングに隣接している昔父の吾が利用していた床の間のある和室で、当時流行の砂壁であった。これをリビングと居室予定の部屋に統一感をもたせた雰囲気を作る。
* * *
時間はいくらでもあった。時は5月も半ばになっていた。
琉は何とか熱が治まったところだ。最終的には抗生物質の投与と免疫力の強化で乗り切ったという。
「原因は、これだけ全身を襲っては正確なところはわかりませんが、おそらくは、膀胱炎ですね。尿で、真菌です。」
一段落したので、病院で宵乃生医師の説明を受ける。
「あ、そういえば、よく、トイレに行きたいけど、もう少し我慢して…なんてことをよく言っていました。」
「本人さん、直前数か月ぐらい、全身がだるかったと思いますよ。」
「それは全然言ってませんでした。」
しかし、トイレを我慢する習慣で、目を失うことになるとは随分な代償である。
「今後は、どうしますかね。熱でずっと寝たきりだったので、足が弱って歩けない状態です。ただ、もう個室の必要はないかと。」
その言い方だと、宵乃生医師も今まで個室の必要性を感じていたんじゃないかと突っ込みたい。
「そうですね、本人、意識があるのですから、本人の意向でお願いします。」
そういったものの、私は琉は個室から相部屋に移されたらきっと、いろいろ文句を言うんだろうなと思った。救急から移った直後のころ、意識があるときに琉を見舞うことはなかったが、個室では依頼した通り、TOEIC-CDがずっとかかっていた。意識が戻ってからは、本人の希望でラジオやテレビをつけてもらっていたようである。そして、個室では、ヘッドホンではなく大音量にできる。
「本人さん、相部屋でいいというので、相部屋にしますね。」
相部屋になったら、やっぱり、琉は文句を言った。
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