9:夢のDIY(1) 壁塗り

 ピンポーン。

 宅配便のお兄さんが、重そうにバケツを二つ運んでくる。天然塗り素材「ひとりでぬれーる」22㎏ともう一つは導入キットである。

 正確には重かったのは一つ。導入キットのバケツは軽かった。バケツに入っている必要もない。こてが二種類、マスカー、マスキングテープ、養生テープ、霧吹き、シリコンヘラ、雑巾、ビニール手袋が入っていたが、肝心の説明書がおちゃらけ過ぎていて、何を言っているか全然わからない。やったことが無い為、簡単そうなのを選んだのが仇となった。


 仕方がないので、壁塗りをしているDIY映像やブログ等を検索して調査する。映像、実は私、夢は好きではない。何倍速にしようが、文字の流し読みのほうが早いに決まっている。だから、説明書は重要なのだ。


 壁塗りの成功のポイントはどうも、下準備をどこまで丁寧にするかにかかっている模様。現在、塗ろうとしている壁は、40年間同じ壁紙が貼られている上、建築当時の流行か、ところどころ溝が入っている。この溝の中も壁紙は張られている。しかし、この溝は別に必要ない。

 (後に詳しくなった私から見ると、この溝は単に住宅の壁として一般的な石膏ボードの定型規格の境目である。)


 まずは、壁紙を剥がして、溝をパテで埋めて、シーラーを塗ってから、漆喰を塗るというのが本筋のようだ。漆喰も二度塗りが良く、パテで埋めたり、シーラーを塗ったり、漆喰を塗ったりするそれぞれの間には乾燥させる時間も必要。


 パテやら、シーラーやら、これもわからない。用途別種類が多すぎてどれを選んでいいか難しいのだ。しかし、やってみないことには何もわからない。汎用っぽいのを通販で購入し、届くまでは壁紙を剥がすことにする。きれいに剥がれない。40年間張られた壁紙は、大気のいろいろなものを吸い込んで、かなり頑固だ。スクレーパーなるものが必要だ。うわー、ものいり。しかし、業者に頼むより、自力でやる方が安いし、塗るべき壁も沢山ある。

 

 何とか壁紙を剥がし、宅配便で届いたパテで、溝を埋める。パテが柔らかすぎて、何度も重ね塗りをする。最初だから、パテの種類の差が判っていなかった。その時購入したのは、壁の凸凹程度の小さな穴を補修するパテであった。深い溝には向いていない。(後には発泡スチロールのような溝サイズのシーリング材を溝に入れ、網目で出来ているファイバーテープなるもので溝上面を一直線に貼ってからパテ埋めすることにした。)


 シーリング材も役に立っているかどうかわからないが塗る。とりあえず、壁はプレーンになるべく凸凹のないようになっている。


 そして、天然塗り素材「ひとりでぬれーる」に着手した。どう塗ったら奇麗なのかよくわからないながら、とりあえず頑張った。そして、二度塗りもする。実質の通算作業時間は丸一日ぐらいだが、乾燥等で二週間かけただろうか。


 すると、信じられないくらい立派な壁が出来た。隣接しているまだ40年物壁紙の張られた壁と全然違う。これは…やるしかないな。

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