8:コルセット
コロコロ
「今度、コルセットを作っていただくことになりまして。。」
何それ。聞いてない。
琉の感染症は未だ体内を暴れまわっているようで、脊椎も溶け、一部無くなっているらしい。ただ、コルセットで腰を固定しておくことで徐々に骨の復元もできるのだとか。
コルセット代は後日保険が効いて返還されるため、まずは立て替えておいてほしいとの連絡であった。
琉が目が覚めて、ご飯を食べたところで気が緩んだが、実のところはまだ、熱は高く、感染症の元が何処かも判っていないのである。また、コロナ禍の為、その内容を医師から直接対面で聞くのではなく、殆どを電話で聞くという不条理さ。
郵送で来た書類に記載事項を書いて返信し考える。さて、どうしよう。
琉の入院後、すぐに琉の馴染みの工務店に電話をした。退院後、住居に手を入れないといけないことが想定されるからだ。想定での見積もりは約80万円だった。ただ、不確定事項が多すぎる。
もし、介護保険を利用するならば、本人は退院してからでなければ、住宅改修はできない。そして、介護保険が適用できる住宅改修の内容はかなり局所的であるうえ、本人が生きているうえで一回限りである。追加申請はできない。
(厳密には急に介護度が二階級上がった場合は可能だが、異例と考えたほうがよいだろう。なお、当時の私は介護保険をよくわかっていないため、知る由もない。)
面会は著しく制限されている。面会に行っても琉は寝ていた。この状況で、できること…。
不意に、琉の台詞を思い出した。
「この壁紙、本当は張り替えたいのよねー。」
今住んでいる住居は、建売住宅で、購入時から約40年間壁紙は一度も張り替えていなかった。介護保険の住宅改修の内容を確認しても、壁紙は対象外である。現在、私に、中途半端に待つ時間は沢山ある。
よし、壁を塗ろう。
介護エプロンを購入した際、通販サイトで、コロナ禍でのDIYが流行っていることを知った。住宅に手を入れるなどということは私は今までしたことがなかった。せいぜい、カーテンレールを取り付けるくらいだ。
だが、今はずいぶんといろんな製品が出ているではないか。壁紙の張り替え等より、壁を漆喰で塗った方が機能的にも向上しそうである。私は漆喰のバケツと、それを塗る道具一式をネットで注文し、リビングの一面の荷物をすべて動かして、届くのを待った。
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