第三十七話 大反乱の原因
「……さてと。取りあえず、ダンジョンを調べようか」
ルルムと暫し戯れた俺は、そう言って天を仰いだ。
「ふむ……ダンジョンか」
「ああ。案外調べた事はほとんど無いし、だったらこれを機に、調べておこうかと思ってな。魔物の大反乱――俺が潜った直後も起こっていたようだが、あの時は無我夢中で下へ降りながら、ぶっ殺してたからな。よく分からん」
ただ、宗也の言い方的や記憶を見るに、どうやら前回の大反乱よりも確実に大きいものになると推測できる。
なら、覚えていても、余りアテにはならなかったかもな。
とまあ、それはさておき……魔物の大反乱か。
「魔物は基本的に群れでは無く、個として動く」
魔物とは、本当にただただ人間や
そして、俺たちを殺す際に他の魔物を巻き込もうが、関係ないといったスタンスをとり、本能のままに殺戮を続ける。
だが――この前、ネカフェで見た300年前の大反乱の情報。
そして、宗也の記憶から想像するに――
「居るな。統率者となる存在が」
確かに本能のままに攻撃しているが、何故かその時だけは地味に統率が取れているように見えた事から、俺はそう判断する。
これには、アルフィアも瞠目したように目を見開いた。
「ほう。して、その統率者とやらは……まさか、妾たちの同類か?」
「そこまでは分からない。ただ、魔物とて生物である以上、上位個体の命令を下位個体が聞く……という事は、あってもおかしくは無い。地上でも、狼とかライオンとか、多くの生物はそんな感じだ。ま、それらをはっきりとさせる為にも、ここらで調べるんだがな」
そう言って、俺は魔法を行使する。
負担が大き過ぎるという理由で、戦闘中どころか非戦闘中でも、全くと言っていいほど使わない、あの技能を乗せて――
「【俺は真理を観測する者。万物を見通し、万物を観測し、万物を掌握する。魂の旅路の果てに――全魂魄解放――《
直後、俺の意識は一気にクリアな物へと変わる。
そして、このダンジョンに刻まれたあらゆる情報が、流れ込んで行く。
ああ――
ああ――
ああ――
ああ、あ――
「う、ぐっ……」
ここで、俺は魔法を強制解除すると、頭を抑えながら地面に崩れ落ちる。
ああ、マジでいてぇ。
まあ、人の身には過ぎた魔法だからな。
それを魂の限界解除と高い魔力制御能力で、半ば無理やり使っているのだ。
ほんの一瞬しか使わずとも、その代償は相当重いものとなる。
「ちょ、ご主人様よ。それを使うのは、流石に聞いとらんぞ!」
「マスター! マスター!!!!」
倒れた俺を、アルフィアは下から支え、ルルムはそんな俺をゆさゆさと揺らす。
「……アラユルチカラガ、コカツシテイマス。ゼッタイアンセイデス」
その後、遅れてロボさんが俺の所に来ると、冷静にそう言った。
「あー……大丈夫だ大丈夫だ」
俺はそう言いながら、アルフィアの手を借りて立ち上がると、そのままベッドに寝転がる。
「……疲れたわ」
「そりゃそうじゃろ。理に干渉、掌握する魔法――《
俺の言葉に、腕を組みながらぷんぷんと起こるアルフィア。
前使った時も、こんな顔されたなぁ……
「ごめんて……俺もこのダンジョンについて、知れる限りの事は知っておきたいからさ。……まあ、無茶したお陰で、色々と分かったよ」
そう言って、俺は言葉を続ける。
「大反乱の根本的な理由はまた別だったのだが……見つけた。そこに居たか――統率者」
随分と上の方で、隠遁系の魔法を行使する統率者の存在を確認した俺は、そんな言葉を零すと――
「てことで……暫し寝る。その間、頼ん、だ……」
俺は魔法の反動で、昏睡状態に陥った。
◇ ◇ ◇
「誰ダ? 誰ガ、誰カガ、我ヲ見タヨウナ……」
暗い暗い影の中で。
だが、直ぐに気のせいかと思うと、今に意識を向ける。
「前回ハ、
そう言うソイツの前には、多くの魔物がまるで剥製の様に動かなくなっているのが見える。
それらを見て、ソイツはニタリと笑うと、声を出した。
「本格的ニ大反乱ガ始マッタラ、モット多クヲ支配スル。支配、支配、支配」
ソイツの頭の中は、支配で満たされていた。
あらゆる物を下し、支配する。
それがソイツに宿っている――決して尽きることの無い欲。
「……サテ、マタ強イ
そう言いながら、ソイツは能力の影渡りを行使して、第360階層へと向かう。
氷に閉ざされているその階層に居たのは、大型のマンモスのような魔物――グレイスモス。
それを前に、ソイツは能力を行使する。
「【▲▲▼▲▼◇▲▼◇▼▲▼▼◇▼▼◇▲▼▲▲▲◇】」
まるで暗号のような、不可思議な言語で放たれる魔法。
刹那、ソイツから放出した闇が、グレイスモスを包み込む。
それに激しく抵抗するグレイスモスであったが――暫くすると、その抵抗がピタリと止まった。
「手間ヲ掛ケヤガッテ……ダガ、イイ。支配デキタ。来イ」
「ブフォオォ!!!!」
そうしてソイツとグレイスモスは、闇の中へと吸い込まれて行くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます