第二十話 第893階層の探索再開
「取りあえず、第893階層の探索を再開しようか。目指すは、今回の探索で次の階層へと続く道をほぼ確定させる事……だな」
ルルムに懇切丁寧に飯の正しい食べ方を教えた俺は、そう言って皆を見やる。
「うむ、そうじゃな」
「はーい。マスター~~~!」
「リョウカイシマシタ」
俺の言葉に、皆はそれぞれそう言って頷いた。
「それじゃあ、行くか。【亜空よ、開け】【座標を繋げ――《
俺は《
そして、即座に転移魔法を唱えると、第893階層の入口へと転移するのであった。
「よし。安全確保を!……【この身の枷たる傷を癒せ。一刻でも多く闘い抜き、果てへと至らん為に――《
俺はアルフィアたちに安全確保を頼むと、その隙に常時回復と強化系の魔法を唱える。
「「「「「グアアアア!!!!」」」」」
すると、やがて壁から産み出される魔物の群れ。
む……来てから産み出されるまでの猶予が、少し短くなったような気がするな。
まあ、誤差みたいなものか。
「アルフィア、前方通路のは全て焼き尽くせ! ロボさんは護衛を!」
「うむ。了解なのじゃ」
「リョウカイシマシタ」
すかさず飛ばした俺の指示に、2人は即座に応えると、行動に移す。
「さあ――焼き尽くされるが良い!【■■■■■■■■■■■■】!」
刹那、アルフィアの右手から、膨大な熱量を帯びた炎が放出され、前方の通路に居る魔物を尽く焼き尽くしていく。
「「ガアアアァ!!!」」
だが、攻撃の合間を狙うようにして、数匹の魔物が迫って来ていた。
やはり、数が数。あれだけいれば、マグレでもアルフィアの下へ来れてしまう奴は居る。
「【我ハ
だが、その為のロボさんだ。
ロボさんは即座に障壁を展開し、向かって来る魔物どもから、アルフィアをしっかり守り切る。
「うむ。ロボさんよ、よくやったのじゃ! 【■■■■■■■■■■■■】!」
その様子を嬉々として見ていたアルフィアが、再び炎を放ち、残っていた魔物を完全に、塵も残さず消滅させて見せた。
「よし。いい感じだな」
一方、俺はというと、別方向から来ていた魔物をルルムと共に《
「きゅきゅきゅーーー!!!」
本来の姿たる、スライム形態となっているルルムが、広範囲に溶解液を霧状に散布して、魔物を一斉に弱らせていく。
「ナイスだ、ルルム」
そして、即座に俺は魔物どもに肉薄すると、剣を振るってとどめを刺していった。
「ふぅ。これで、最初に産み出された奴らはあらかた片付いたか」
魔物どもの屍が折り重なり、山となっている場所で、俺は周囲を見回しながらそんな言葉を零した。
やれやれ。それにしても、数が多いな。
レベルアップの足しになると思えば悪くないが……少し、違和感を覚えてしまうな。
「んー……マジで、何か感じるんだよなぁ……」
今のダンジョン……今までと、どこか雰囲気が違う。
ただ、気のせいと言われればそれまでと言えるぐらいには、微弱なものだった。
「……最近、色々とありすぎているし、そのせいかもな」
警戒し過ぎるのも、それはそれで危険な状態であると分かっているからこそ、俺はそう言って忘れる事にした。
「さてと。それで下への道は……」
俺は、以前ロボさんから受け取ったデータと今の感覚を元に、どの場所に下へと続く階段があるかの目途を付けようと思考を巡らせる。
「んー……流石にまだ、データが足りないな。まだ把握する事すら出来ていない場所もありそうだし、頑張ら……む?」
そう言いかけた所で、俺は視線の先に何かを見つけた。
その視線の先にあったのは、よくあるただの隙間。ただの袋小路。
だが……何かあるな。
俺はその”何か”が何なのかについて、何となく予想を付けながらも、屍の山から跳び下りると、そこへ駆け寄った。
「……おお。やはり、宝箱だったか」
すると、そこにはやはり、宝箱があった。
宝箱……最近では、美鈴とダンジョン探索をした時に見つけたが、階層が階層という事もあってか、大していい物は出てこなかった。
だが、ここ第893階層なら話は別。
これまでの経験則から、最低でも《
すると、背後から魔物の掃討を終えた3人が、こっちに駆け寄って来るのが見えた。
「何をして……おお、宝箱があったか。大体1か月ぶりかの」
「お~~宝~~箱~~~」
「コレマデノケイコウカラ、3パーセントノカクリツデ、《
「ああ。時間も惜しいし、さっさと開けよう。ロボさん、念の為障壁を頼んだ」
俺は、人型形態でくるくると回るルルムを優しく撫でると、ロボさんにそんな指示を飛ばした。
そして、ルルムから手を離すと、代わりに宝箱に手をやる。
「よし。開けるぞ」
そう言って、俺はパカリと宝箱の蓋を開けた。
すると、そこには……
「……大鎌か」
入っていたのは、一振りの漆黒の大鎌だった。
大鎌が入っているのは、剣や槍に比べたら少ないが……まあ、それでも沢山ある。
ただ、《
そう思いながら、俺はその大鎌に《
「……え? 《
そして、思わずそんな声を漏らしてしまうのであった。
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