第十九話 新しいスキルの確認

 やがて、飯を手短に食べ終えた所で、俺は口を開いた。


「取りあえず、実験とか研究もひと段落付いたから、まだダンジョン探索をしようと思ったんだ。ただ……」


「うむ。妾のスキル、についてじゃな」


「ああ。全部とまではいかなくとも、確認できる限りの事は確認しておかないと、いざという時、危ういからさ」


 俺の言いたい事を察し、言葉の続きを言ってくれたアルフィアの言葉に頷きつつ、俺はそう言った。

 スキルは、魔法とは違い、技術や才能、体質の延長線みたいなものだ。

 《気配察知》や《気配隠蔽》、《精神強化》といったスキルも、言ってしまえばある種の技術だ。スキルが無い嘗ての地球でも、これを持っているのでは無いかと思わせる様な人が、何人も居た筈だ。

 故に、魔法みたいに大きなデメリットがある訳では無いと思うのだが……何事にも例外は存在するからね。


「それじゃ、一先ず使ってみてくれ」


「うむ。《龍神化》」


 直後、アルフィアの姿が巨大な深紅のドラゴンへと変貌する。

 本来のアルフィアとは違い、鱗は漆黒では無く深紅。そして、少々身体が大きい様にも見えた。


『アルフィア。どんな感じだ?』


 ドラゴン形態故、人の言葉を発する事の出来ないアルフィアに、俺は《遠距離念話テレフォン》を用いて問いを投げかける。


『うむ。これは、”力”に特化させた姿で、体感的には普段の2倍程の力かのう? そして、魔力や体力を消耗する感覚は無い。残念じゃが、それ以外は分からぬ』


 すると、そのような言葉が返って来た。


『そうか……ああ、アルフィアたちは自身のステータスを見る事が出来ないんだったな』


 そう――忘れがちだが、解析が可能なロボさんを除いた2人は自身のステータスを見る事が出来ない。

 なら何故新しいスキルを習得したと分かるかだが……本人たち曰く、勘らしい。

 そんな事を思いながら、俺は《鑑定アナライズ》を用いてアルフィアの今のステータスを視る。


『ふむ……なるほど。筋力が確かに2倍になっていた。体力と魔力、防護は変わらず。ただ、俊敏が0.9倍に落ちている』


 結果は、まあ予想の範疇であった。


『ふむ。なるほどのう……まあ、無条件で完全強化出来るほど、甘くは無いの』


『だね。世の中……絶対に思い通りにはならないさ。それで、他2つは?』


『うむ。了解なのじゃ。次は、”防護”で行こう……《龍神化》』


 すると、アルフィアの身体が今度は白色に変化する。

 今度は、本来よりも鱗がゴツいような気がするな……

 そんな事を思いながら、俺はアルフィアに《鑑定》を使う。


『ほー……こっちだと、防護2倍、俊敏0.9倍で、他変わらずって感じだった』


『なるほどのう。何となく、次が読めた気がするのじゃ。それは、最後は”俊敏”じゃな。《龍神化》』


 そう言って、アルフィアはつい先ほど見た緑色のドラゴンに変化した。

 今度は、今までで一番スリムな感じだ。


『で、これだと……おお。俊敏3倍で防護と筋力が0.9倍、他変わらずって感じになってる』


 どうせ今までと同じ流れだろと思いながら《鑑定》してみると、何故かそんな結果になった。

 いやまあ、分からなくは無いが……そこは最後まで規則性を持って欲しかったものだな……


『ほー……確かにそんな感じじゃったの。あのルルムに、妾が本気を出さずとも、追い付かれなかったのじゃし』


『ああ、確かに……』


 ルルムの素の俊敏は、実はここに居る4人の中で1番速い。一方、1番遅いのはロボさんだが……アルフィアも、それとほぼ同じぐらいの遅さだ。

 俺は先ほどの速さを思い浮かべながら、なるほどと納得したように頷くのであった。


「それじゃ、戻ってくれ」


 その後、俺は《遠距離念話テレフォン》を切ると、アルフィアにそう頼んだ。

 すると、アルフィアの身体が漆黒の繭に包まれたかと思えば、シュルルと小さくなり、やがて中から人型形態のアルフィアが、赤い髪をたなびかせながら姿を現す。


「うむ。中なか良きスキルであったな」


 そして、腕を組みながらそう言って笑うのであった。


「ああ、そうだな。じゃ、スキル確認も終わったし、そろそろダンジョン探索に行くか」


 そんなアルフィアを前に、俺も小さく笑みを浮かべると、ルルムの方に目をやった。

 すると、そこには今だバクバクと美味しそうにカツ丼を食べる、ルルムの姿があった。

 ……何故か、丼が減っているような気がする。


「ルルム。丼がもう2つある筈なのだが……どこやった?」


「食べた!」


 俺の問いに、ルルムは花開くような満面の笑みを浮かべて、そのような事を言ってくれやがった。

 食べ……た?

 食べ……


「え、食べた!? この前、注意したよな? 包み紙とか、弁当の容器は食べるなって」


「うん! だけど、これは丼だから違う! ルルム、賢い!」


 俺の言葉に、ルルムは自信満々にそう宣いやがった。


「……ご主人様よ。食事中のルルムからは絶対に、目を離すでないぞ。ルルムに言葉は通じぬ」


「……アルフィアが何とかしてくれよ」


「妾の言葉には、よく逆らうぞ。無理じゃ」


「……はい」


 そして、俺はダンジョンよりも深いため息を吐くのであった。

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