第十七話 ロボさんを魔改造

 あれから、俺はアルフィアにブチ怒られつつも、実験を続けた。

 参考書があったお陰か、そこまで時間はかけていないのに、それなりの成果を出す事は出来たと思う。


「じゃ、まあやってみるか」


 今からやるのは、小型化した魔石圧縮炉をロボさんに取り付ける事。

 これが成功すれば、ロボさんの魔力貯蓄効率は格段に良くなり、ダンジョン探索が多少なりとも有利に働くようになる。


「さて、やるか」


「ハイ。オネガイシマス」


 そう言って、俺はその場で膝を付き、ロボさんに手を翳すと、魔力を込めた。

 そして、一部を分解すると、その中に手を入れて弄り始める。


「……」


 流石にこの規模での改造は、久々だな。

 ここまで大きくやると、失敗した時が怖いといつも思ってしまう。

 だが、それを恐れて挑戦しなければ、ダンジョンで、骸となるだけだ。

 当然、なるべくリスクの少ない行動を取る方針でやってはいるが、それでもある程度の賭けは常にやっている。ダンジョン探索の時も、失敗すれば死ぬような事を平気でやっているし。


「……こんなもんかな。どうだ?」


 やがて、短くも長かった改造が終わった。

 俺は立ち上がると、ロボさんに調子を尋ねる。

 すると、暫しの静止の後、ロボさんが報告を始めた。


「ハイ。データドオリノケッカデアルト、オモイマス。ドコニモ、イジョウハミラレマセン。キゾンキノウニエイキョウナシ」


「そうか。それなら良かった」


 ああ、今回も成功して良かった。

 これでロボさんは更に、高みへと至ったのだ。


「さて。それじゃ、ここらで一旦実験は終いにして、明日辺りからまたダンジョン探索を再開させるとしよう」


「リョウカイシマシタ。マスター」


 そう言うと、俺はロボさんを連れて魔導工房アトリエの外へ出るのであった。


「……ん? なんか騒がしいな」


 魔導工房アトリエを出て、階段を上っていくと、家の外がなんだか騒がしいような気がした。

 何かをこの目で見ようと思った俺は、即座に転移魔法で家の外へ飛ぶ。


「おお……随分とデカいなぁ」


 すると、そこには巨大なドラゴンがこちらへ向かって、上空から一気に急降下していたのだ。


「待て待て~~~~~!!!!!」


 そして、その背後からは人間形態のルルムが、上手い事空中を蹴りながら、その巨大なドラゴンを追いかけている所だった。


「いや、飛べよ。ルルム……《擬態》があるだろうに」


 俺はそんなルルムを見て、《擬態》使って空飛ぶ魔物になってから追いかけろよと思いつつも、1つある事に気が付いた。

 それは――


「あのドラゴン。初めて見る種だな」


 ここに長い事住んでいるのにも関わらず、あの種のドラゴンは初めて見たのだ。


「まあ、ここ広いから、今更見た事無い魔物が出て来ても、何ら不思議じゃないけどね」


 そう言って。

 俺は手を掲げた。


「ルルムには悪いが、余裕がある時に限り、新種は一応観察しておきたいんだ。【万物よ凍れ――”第一次魂魄解放”】」


 そして、魔法を放って直ぐ近くにまで迫っていたドラゴンを氷漬けにした。


「あびゅうっ!」


 直後、そのドラゴンを追いかけていたルルムが、氷漬けとなったドラゴンに激突する。

 その衝撃で、ピキピキッと氷が砕けかけてしまったが、続けて凍らせることで何とかした。

 それを確認した俺は、ルルムに声を掛ける。


「ルルム、すまんな。獲物を横取りしてしまっ――」


「マスター~~~!!!!」


 だが、会話を大声でぶった切られたかと思えば、勢いよく腹に突撃された。

 俺はそれを何とか防ぐと、ぎゅっと腹に抱き着くルルムの頭を優しく撫でながら、口を開いた。


「それで、もう1回言うけど悪いな。獲物を横取りしてしまって」


 そう言って、俺は改めて謝る。

 すると、ルルムから予想外の言葉が返って来た。


「獲物~~~? ルルム、獲物追いかけてないよ?」


「……んんっ?」


 不思議そうに言うルルムの言葉に、俺は困惑したような声を上げた。

 獲物を追いかけていない?

 いやいや。現に今追いかけていたじゃないか。


「え、これを追いかけていただろ?」


「うん!」


 次の問いには、元気よく頷くルルム。

 え、ちょっと待って。

 マジで意味不明なのだが……

 もしかして、新しい遊び相手とか?

 いやでも、ルルムって基本容赦なくぶっ潰すから、新しい遊び相手なんてできっこないし……


「え、獲物を追いかけていたように見えたのだが……結局、何をしていたの?」


 そして最後に、俺はそんな問いをルルムに投げかける。

 すると、ルルムからとんでもない爆弾を投下された。


「うん! だってルルムは、新しいスキルを手に入れたアルフィアと、追いかけっこをしていただけだもん!」


「……え?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る