第十二話 魔導工学、早速実践……あ
”マグトナルト”のハンバーガーセットを食べ終えた俺は、何気にダンジョン最前線の次に滞在時間の長い、家の地下にある
普段はルルムに引っ付かれ……同伴して貰っているのだが、今回は久々にロボさんと一緒だ。
「ロボさんは、ちょっとそこで待機してて」
「リョウカイシマシタ」
俺はロボさんを、大量に物があるせいで狭くなってしまった
そして、《
「ふぅ……この歳になって、勉強に打ち込む事になるとは。昔の思えば、考えられんな」
そう言って、俺は何故か最近多い感傷に浸りながら、小さく息を吐く。
俺は、小学校低学年辺りを除けば、まともに学校で勉強していない。
理由は簡単だ。
教科書は破かれ汚されて使い物にならず、教師の話を聞こうにも妨害を受け、教師はそれを無視し続けるから改善しない。途中からはバイトが忙しくなって完全に睡眠の時間になってしまった。
ただ、雑学や豆知識といった生きていく上で役に立ちそうな物だけなら、深く幅広く知っている。
そんな事もあってか、地味にこうして教科書を開くのは、憂鬱に感じる……
「と、思ったのだが、知識欲が上回ってるせいか、何も感じないや」
憂鬱さとダンジョン探索への渇望がぶつかり合い、特に何も感じなくなりながらも、俺は本を机の上に置いた。
今回買ってきたのは、魔導工学の参考書3冊だ。レベルはそれぞれ高校卒業レベル、国公立大学レベル、難関大学レベルとなっている。
中々難易度の高い代物となっているが、こちらは独学とは言え100年以上もそれをやり続けて来たのだ。流石にひよっ子レベルではない。
だが、念を入れて高校卒業レベルも買ってきた……という訳だ。
「さて、頭に入れるか。【知覚を上げよ。与えられし全ての記憶を。脳裏に刻み込め――《
そう言って、俺は参考書を1冊手に取ると、詠唱を唱えた。
そして、内容をパラパラと高速で捲っていく。
すると、見る見る内に脳内へ刷り込まれていく参考書の内容。
つい最近、この為に開発した高速暗記魔法――《
その後、俺は続けて残り2冊の内容も頭に刷り込むと、小さく息を吐いた。
「んー……想ってたよりも、難しいな」
確かに、俺が長い時を掛けて培ってきた、経験則に基づく膨大な知識は、無駄では無かったとこれを見て分かった。ただ一部、俺の知識と齟齬がある部分もあり、これをどうするのかが悩ましい。
前にも思ったが、俺と上の人間たちとでは、魔法を使う際に意識する場所が異なっており、この齟齬そのせいによるものだと思っている。
ならこの部分は俺が得た知識を使いつつ、従来の化学工学が流用されたような部分はしっかりと反映させていこうと思う。
「さて、知識が脳に馴染んできた事だし、早速やってみるとしよう。ロボさん、こっちに来てくれ」
「リョウカイシマシタ。マスター」
そう言って、歩み寄って来るロボさん。
そんなロボさんの頭に手を翳すと、俺は唱えた。
「【繋げ】……ロボさん。今送ったデータを元に、これで道具を作って欲しい。【亜空よ、開け】」
俺はいつものようにロボさんへ、参考書にあった器具のデータを送り込むと、その横に特殊な魔物の殻や武器から手に入れた、ダンジョン固有の金属――《
「リョウカイシマシタ。マスター」
そう言って、ロボさんは魔法を用いて金属の形を変えていく。
様々な面で強い俺だが、流石に適性の無い土属性魔法に関しては、ロボさんに任せた方が断然いいものが出来る。
この部屋にあるビーカーや試験管といった器具も、全てロボさんが作ってくれたんだ。
「……ハイ、カンセイシマシタ。マスター」
「ああ、ありがとう」
やがて、ロボさんが完成させてくれたのは、周囲が無数の管で張り巡らされている、内部が空洞の、直径50センチ程の球体だった。
これは内部に魔石を中心とした様々な試薬を入れて、少量の魔力を流しながら高温で熱すると、管の先から濃縮された液状の魔石を出してくれる器具だ。
これを上手い事応用すれば、より濃縮された魔力を保有する事が出来るようになり、結果として魔力容量が大幅に上がるのではないか?
と、思ったのだ。
そうと決まれば、早速実験開始。これで上手くいったら、ロボさんのどこにこの装置
入れ込むか、簡易的でも良いから考えておこう。
そんな事を思いながら、俺は実験器具をセットすると、ロボさんに火をつけて貰った。そして、自分は魔力を
「さて、後は30分程待てばいいかな?」
なら、その間は参考書を普通に読んで理解を深めようと、パラパラと本をめくり始めた。
そんな時だった。
しゅーーー!!!!
「……ん?」
なんか、管の先から変な色をした蒸気が噴き出て来た。
なんだこれ? 参考書には載ってないぞ?
想定外の事態に、俺は思わず首を傾げる――が、ここで俺はある1つの仮説を思いついた。
「……もしかして、超合アダマンタイトでは駄目とかあるのか? それとも、第893階層の魔石では駄目とか……あ!」
俺は思わず声を上げた。
直後――
パアアアアン!!!!
とてつもない破裂音と同時に、器具が爆発四散してしまった。
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