第三十三話 いざ、寿司屋へ!
「それでは……取りあえず、連絡先を交換しておきましょう」
「ああ、その方がいい。ただ、こちらの都合上、電話のみになってしまうが……構わないか?」
美玲の言葉に頷きつつ、俺は1つ要望を申し訳なさげに提示する。
これは、俺がスマホを持っていないが故の要望だ。
スマホを持っていないせいで、メールとかは出来ない――だが、電話ぐらいなら《
「あ、はい。全然それで、問題ありません」
幸いな事に、美玲は少し戸惑いはしたものの、あっさりと俺の要望を受け入れてくれた。
そんな美玲に俺は礼をしつつ、美玲と電話番号を言い合う。勿論、俺のはフェイクの番号だ。
他者と被らなさそうなものにしつつ、もし被っても連絡する人の”意思”でどちらに繫がるのかを決めるように調整した。
いやーこれは地味に難しかったな。
「……よし。そんじゃ、俺はそろそろ帰るよ」
「分かりました。では、夜道には気を付けてください……って、大翔さんに言う事ではありませんね」
「ま、油断するつもりは一切無いから、大丈夫だ」
冗談めかして言う美玲に、俺はそう言って返すと、分かれた。
「……ふぅ。で、ルルムたちはどこにいるんだ?」
美玲と別れた俺は、そう言うと気配を探る。
「ん~これは~……上じゃね?」
気配を探ってみた所、どっからどう見ても、3人皆上の方に居た。
高さはざっと40メートル程。様子からして、この辺でも屈指の高さを誇るビルの屋上に居るのではないだろうか?
「何やってんだあいつら……」
そんな所に居ても何も無いだろと思いつつ、俺はルルムたちの所へ転移した。
「よっ! えいっ! やあっ!」
転移した瞬間、聞こえてきたのは、弾むように元気なルルムの声だった。
俺は、無言ですっとルルムの方に視線を向ける。
「……あー……なるほど、ね」
なんとそこでは、ルルムが景色を眺めながら、ビルからビルへと跳び移って、遊んでいたのだ。
ビル上から、必死に《
「お~ご主――」
「マスター~~~~~~~!!!!!!」
こちらへ振り向き、声を掛けようとしたアルフィアの声を遮り、毎度の如く突貫してくるルルム。
俺はそんなルルムを優しく包み込むような感じで胸に抱き寄せ、衝撃を受け流すと、頭をよしよししながら口を開いた。
「ルルム。こんな所で何をしてたんだい?」
「んーとね。この辺が、一番高い所だったから、ここから周囲の状況を確認してるの! 新しい所の、周辺確認は大事なの~~~」
俺の問いに、ルルムはにへらっと笑いながら、ルルムにしては良く考えた事を言う。
まールルムはある意味戦闘狂だからな。戦闘という一点に関しては、割とまともだと思っている……多分。
「まあ、ご主人様の認識で、大体合っとると思うぞ。して、用件は済んだかの?」
「ああ。何の問題も無く、済ませる事が出来た」
ルルムに話を遮られ、若干むっとしていたアルフィアからの問いに、俺はそう言って答える。
そう。前回と違い、今回は丸く収まったと言って良いだろう。
妙な提案をされたが、今の所害は一切無いし。
「うむ。それなら良かったのじゃ」
「うん。……それじゃ、飯を食いに行くか。今日は……寿司だ」
少し悩んだ末、選んだのは寿司。
昔メジャーとなっていた回転寿司……では無く、古き良きカウンターに居る店主が握って出すタイプの、ややお高めの寿司屋だ。
金は沢山あるし、折角ならいいものを食べさせてやりたいんだよね。
「すし~? マスター、それって、美味しいってやつなの~~~~?」
「ふむ。妾も存ぜぬの。如何様な食べ物じゃ?」
「ワタシノデータニ、スシハソンザイシテイマセン。マスター」
俺の言葉に、三者三様な反応を示すアルフィアたち。
だが、総じて皆よく分からんって感じの反応だった。
そういや、寿司は教えてなかったな。生の魔物魚は、結構食べてたんだけど……
「寿司ってのは、まあ簡単に言えば魚だ。魚。ほら、ダンジョンでも水中に居ただろ?」
なんともまあ、ザックリとした説明。
いや、仕方ないんだって。
普通に考えて、人生を通して見ても、寿司を食べた事なんてあったっけ状態な俺が、詳しい説明なんて出来る訳無いんだよ。
もう、見てみろとしか言えん!
「ふむ。あれか……どんな感じの奴じゃったっけ?」
「ん〜〜〜〜? うん! 居た〜〜〜〜……?」
「ハイ。イゼン、モクゲキシタトキ、キロクシテオリマス」
てか、そもそも魚自体が、ロボさん以外うろ覚えだった。まー確かに最近見てないもんな。
別にずっと覚えとかなきゃいけない事でも無いし、だったら忘れるのも無理は無い。
「ネットで、良さげな店を見つけたんだ。早速行って、食べるとしよう。【座標を繋げ――《
俺だけ、本日2度目の夕食になろうとしている事には目を瞑りつつ、俺は手慣れた動作で転移魔法を発動させると、自分含む皆を寿司屋の直ぐ近くにまで、転移させるのであった。
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