第十七話 ダンジョン用品

 感激し、戦慄しつつも完食した俺は、食事代を払い、店を出た。

 中々良い店だったし、機会があればまた行きたいものだ。

 そんな事を思いながら、俺は次の目的地へと向かう。


「……到着っと。ぱっと見は、スポーツ用品店って感じだな」


 目的の店に辿り着いた俺は、大きな店の外観を眺めながらそんな言葉を口にした。

 ここが、食後に訪れようと思っていた店。

 ”ダンスタ”という名前の店で、ここではダンジョン用品が幅広く取り扱われている。

 どんな装備があるのかは気になるし、もしかしたら俺が欲しいと思えるような画期的な便利グッズがあるのかもしれない。まあ、今買う事は出来ないだろうが……


「……おお。こういうのもあるのか」


 店内に入ってまず目に入って来たのは、入り口にドーンと鎮座している魔物――オークの剥製だった。棍棒振り上げ、今にも襲い掛からんとしている状態で停止しているその姿を見て、一瞬身構えてしまったのは内緒だ。


「さて、気を取り直して何があるかなぁ……」


 店の奥へと向かって歩き出した俺は、店内をキョロキョロと見回しながら呟く。

 最初に見えてきたのは、丈夫な魔物の革で作られた戦闘衣バトルクロスや靴、リュックサックと言った基本的な物。ごくごく普通の服屋や靴屋のように、商品棚に並んでいる。


「んー俺のは自作だから、プロ謹製こういうのを見ると、ちょっと恥ずかしくなってくるな」


 そう言って、俺は今自分が装備している装備に視線を落とす。


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【名前】戦闘衣バトルクロス改訂版17号

【等級】神話級ミソロジー・クラス

海の龍王リヴァイアサン製。

・炎熱系魔法に絶対的な耐性を持っている。

・《物理魔法攻撃耐性付与エンチャント・プロテクション》、《魔力自動修復付与エンチャント・レストレーション》の半永続的付与セミパーメネント・エンチャントが施されている。

・《魔力不可干渉付与エンチャント・オブストラクション》の付与エンチャントが施されている。

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【名前】靴改訂版25号

【等級】神話級ミソロジー・クラス

海の龍王リヴァイアサン

・炎熱系魔法に絶対的な耐性を持っている。

・《物理魔法攻撃耐性付与エンチャント・プロテクション》、《魔力自動修復付与エンチャント・レストレーション》の半永続的付与セミパーメネント・エンチャントが施されている。

・《魔力不可干渉付与エンチャント・オブストラクション》の付与エンチャントが施されている。

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 どちらも、俺が自力で作った物――故に、今目の前にある物と比較してみると、どうしても劣っている部分がやや目立つ。

 家に帰ったら、直ぐにでも改良しよう。

 因みに、戦闘衣バトルクロスの下に着ている服は、レクイエムシープという羊型の魔物の毛皮で作った、それなりに頑丈でかつ、めちゃくちゃ着心地の良いものになっている。

 レクイエムシープはその名の通り、《鎮魂歌レクイエム》という固有の魔法を用いて攻撃してくる魔物で、聞いたら最後、あの世へ送られる。

 マジで。

 実際俺もあの世に送られかけたが、《魂魄回帰ソウルリターン》で自己セルフ蘇生しまくったお陰で助かった。

 まあ、あの時よりも高い耐性を持っている今なら、一切効かないけどね。


「さーてと。次々」


 目を引かれる物はあったが、欲しいと思うような物は無かった。

 そうして、俺は別の所に興味を移す。


「へぇ……魔力を燃料にした簡易コンロか。お、こっちは携帯食料」


 ダンジョンに籠もり続けていた俺では作りようの無い、科学をもって作られた物や、そもそも材料がダンジョンに無い物を前に、興味を唆られた俺は、夢中でそれらを物色する。

 ここにあるのはどれもこれも、昔喉から手が出る程欲しいと思った物の具現化だ。

 俺は嘗てを思い出しては、それを見て、「あ〜あの時これがあったらな〜」なんて、らしくもない感傷に浸り続ける。


「……さてと。ただ、これも今は要らないな」


 一通り感傷に浸った所で、俺はそんな言葉を口にした。

 確かに、以前の俺なら欲しただろうけど……別に、今はそんなにダンジョン探索に関して困っている事は無いからな。

 純粋に出現する魔物が多いし強い……っていうのがあるが、あのレベルになるとこの程度の小細工でどうこう出来る問題じゃ無いんだよね。

 あれはもう、俺自身が強くなるのが一番手っ取り早い。


「最後は武器。だが……」


 流石にこれは予想がつく。だが、ここまで来た手前、見ない訳にはいかないと思い、見に行った。

 その結果は――


「まあ、《一般級コモン・クラス》及び《希少級レア・クラス》と」


 そこには、丁寧に並べられた《一般級コモン・クラス》と《希少級レア・クラス》の武器があった。

一般級コモン・クラス》と《希少級レア・クラス》の武器には特殊効果が一切なく、武器そのものの性能も微妙。はっきり言って、それを使うぐらいなら素手の方が断然強い。

 ただ、少々興味深い事があった。

 それは、ここで売られている武器の大半が、ダンジョンの宝箱から入手された物では無く、普通の金属や魔物の素材を用いて作られた物だということだ。


「確かにこのレベルの武器なら、一部例外はあれど、普通に魔物の素材を加工して手に入れる方が手っ取り早いよな」


 それは盲点だったと、俺は目から鱗の気分になった。

 ならあの時も、馬鹿みたいに拳を振るうんじゃなくて、適当な魔物の骨を使えば良かったな。

 まあ、あの時は色々と必死で視野狭窄としていたから仕方ないか。


「さてと。一通り見たし、ネカフェに戻ろうかな」


 取りあえず、見たいものは見れた。

 なら、さっさと帰るとしよう。

 一応、礼を貰う約束を美玲としている訳だし。

 そうして、用事を済ませた俺は足早に店を出ると、ネカフェへと戻るのであった。

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