バレンタイン on the DAY

飛花

バレンタイン on the DAY

 いつもの公園へ。わたしは今日、幼馴染みに手作りのガトーショコラをあげる。毎年あげているのに、今年はひどく緊張している。


 何故って、メッセージカードの代わりに告白の手紙を入れたからだ。このままの関係だときっと、彼とは疎遠になってしまいそうだ。だって、バレンタインデーとホワイトデーにしか会わないから。


 そもそも、幼馴染みが来るかどうかも賭けなのだ。ただ時間と場所を指定するLINEを送っただけなのだ。返信は来ていないけれど、怖くて既読がついているかを確認していない。返信が来ていなくても来ると信じたいのだけれど。


 と、そのとき幼馴染みが来た。


「あ、もう来てたんだ。待たせちゃったね」


 篠崎アオイ。幼稚園の頃から一緒の幼馴染み。いつからか恋をしていた人。


「アオイひさしぶり。ごめんね、チョコ渡すためだけに呼び出しちゃって」


「ううん、モモのバレンタイン毎年楽しみにしてるから嬉しいよ」


 早速チョコレートを渡した。幼馴染みはいつも、すぐに食べて感想を言ってくれる。それが嬉しくもありプレッシャーでもある。


「めっちゃ美味しい。ガトーショコラ?かなこれ、僕めちゃくちゃ好きなんだよね」


 その言葉に安堵する。けれど本題はそちらではない。


「あ、今回手紙なんだ。いっつもメモ帳ちぎったのなのに」


 そう言って幼馴染みは手紙を読み始めた。その真剣な表情が少し怖い。なんて言われるのか。何にせよこれからの関係が変わることは確定だから。


「……どうしよう。これの返事って、ホワイトデーのときがいい? 別に今からでもできるんだけどさ」


 それの真意は何? すでに恋人がいるのか、それとも。


「どっちでもいいよ。アオイの好きなようにして」


「……じゃあ今にしようかな」


 そう言って幼馴染みは深呼吸をした。


「モモがそういうことを考えてるのはなんとなく気づいてたけど、伝えてくるのは思ってなかったな」


 言葉が頭に入ってこない。わたしはこれからどういう感情になるのだろう。マイナスの無限大かプラスの無限大か。


「それでなんだけど。僕はね、」


 無意識に息を呑んだ。


「モモのこと─────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バレンタイン on the DAY 飛花 @shil2o

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ