第15話ーエルフの少女—

 それは唐突に舞い降りた依頼だった。突然の蛮族の襲撃による掃討作戦。国の中でも稀有の存在になり始めたレオ達は奇襲任務を命じられていた。だが不平をいっている暇はない。総大将の目的が分からない以上、攻撃を耐える以外選択肢はない。しかしそれだけではいつまでたっても埒が明かない。なので—

「俺たちが呼び出されたってわけか。」

 ギルバートが気怠そうに答えた。今彼らは冒険者ギルド“蒼の陽炎”の一室に集まっていた。クライドは壁に寄りかかっており、いつでも出発できるようにすでに盾まで持っていた。カレンはドアの近くに立っており、どうやら早く外に出たいらしい。シルヴィアが前に聞いた話では、「考えるのは苦手だから、私は支持された通りに動く!ってことで指揮はよろしく!」と笑顔で言ったそうだ。

「おぬしらはスペルビア王国東部の鎮圧に向かってもらう。報酬は一人6000G。おそらく東部には総大将がいるはずだ。あそこだけやたら敵の数が多い。」

 ライゴウはそういうと、地図を取り出し、ある場所を指でなぞった。

「この道が最短ルートだ。武運を祈る。」

そう言い終わるや否やカレンとクライドが飛び出していった。その様子をみて、慌ててギルバートとシルヴィア、その次にレオ、最後に依頼の再確認をしたロークが出発していった。

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「このあたりでいいのか?」

 地図を見ながら抜け道を探していたクライドは道を確認していた。ギルバートもカレンも各々で地図を見直していたが間違いなさそうだ。

野伏レンジャーの心得がある人がいると頼もしいね。」

 レオがしみじみと思った。

「おや?前のパーティの時はいなかったんですか?」

「そう、だからすぐ道に迷った。」

雑談をしているうちに、進む道が決まった。もっとも道と呼べる道ではなかったが。

「・・・本当にこれあっているのですか?」

 ロークが疑わし気にギルバートをみた。彼はすぐ目線をそらしたが、すぐにカレンが反論した。

「今回はギルだけじゃなくて、私たちも見ているんだよ?三人がかりであっているといったんだから間違いないはずだよ!」

「・・・それ俺だけじゃ信用ならないといいたいのか!?」

 ギルバートはオーバーに悲しんで見せた。まぁ確かにギルバートは森の方向感覚は当てにならないよな~・・・っとレオは思ってしまっているのだが。

 しばらく歩いていると、ようやく開けた場所にでた。しかしその場にはゴブリンたちを率いた大柄の魔物が陣取っていた。

「・・・人族カ、排除スル!」

「ダソーです!」

 軽く通訳したシルヴィアだったが、まぁ聞かずともわかるであろう雰囲気を出していた。

「・・・いくぞ!」

  

            しかし攻撃をすることはなかった。




 どこからともなく現れた一人のエルフがその場にいた蛮族すべてを殲滅させた。一瞬でだ。レオ達は驚いた。瞬きする間もなく消し飛んだのだから。残っていたのは白髪の儚そうな顔をしたエルフの少女だけだ。レオ達が声をかけようと近づくと、エルフの少女は急に倒れこんでしまった。

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 二人のエルフが遊んでいた。片方はもう完全に成人であり、どうやら付き合ってあげているらしい。

 このとき成人しているエルフは何かをいっていたが、それは×××には聞き取れなかった。

 やがて場面は移り変わり、今度は図書館のような場所にいた。この場にも成人しているエルフがおり、魔導書を読んでいた。

「お前は本当に魔法が好きだな、×××。どうだ?今後もここに残らないか?」

「遠慮しておく。自分で学ばないと意味がないから。」

 それをきくと成人したエルフは残念そうな顔をした。

               そして―

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「あ!気が付いた?!ダイジョーブ?」

 カレンがエルフの少女が起きたことに気づき、声をかけた。エルフの少女はしばらくボーっとしていたが、どうやら自分が助けられたということに気が付いた。

「ありがとう、助かった。それじゃ―」

 そういってこの場から去ろうとした。カレンは慌てて止めた。

「いやいやいや!?まだ傷残ってるし安静にしようよ!というより野伏の心得あるの?このままここを一人で進むには危険すぎるよ!?というかお腹へってない?ひとまず一緒にご飯食べようよ!」

 カレンのころころ変わる話に思わず笑みをこぼしてしまった。その様子をみてカレンはきょとんとした顔になった。

「あれ?私変なこと言った?」

「いいえ、ただ久しぶりに人と話したからちょっと楽しかっただけ。心配ありがとう。だけどこれ以上お世話になるわけにはいかないし、それにあなたたちに迷惑かけてしまうわ。食料もただじゃないし。」

これで話は終わる―そう思ったがカレンは頑固だった。

「そんなことないよ!それに私たちだって大分強いし、なんとかなるよ!」

 しばし沈黙が続いたがエルフの少女の腹の音が盛大になった。彼女は顔を真っ赤にして止めようとしたが、止まることはなかった。

「いっしょにごはん食べよっか。」

「はい・・・」

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「ん、起きたか?っていうか腹の音すげーな。」

 エルフの少女は穴があったら入りたかった。2日何も食べてないだけでここまで影響が出るとは。

「はい、どーぞー」

 シルヴィアが渡した保存食をお礼を言って受け取り開けて食べた。久しぶりの食事は堪能し終わった。しかし彼女はここ最近でもっとも強い幸せを噛みしめていた。

「そういえばあなたのお名前は何ていうのですか?」

ロークが思い出したように尋ねた。

「・・・私の名前は 。」

「ちょっと待て。らしいってなんだ、らしいって」

 ギルバートがおもいきり眉をひそめた。

「そのままの意味だよ。私には記憶がない。何故か蛮族に襲われている。」

「何か心当たりは・・・って記憶を失っているからわからないか。」

 レオが聞こうとしたが、自分で無理なことに気づき、途中でいうのをやめた。

「ご飯はありがとう。ご馳走になったよ。」

 そういって立ち上がった。まだ体にはあちこち傷が残っており、一人は危ない、レオ達はそう思っていた。するとずっと押し黙っていたクライドが口を開いた。

「・・・俺たちと協力できないか?」

「—————?!——————」

 シルヴィアは驚いたが、確かに納得した。いるとこれ以上になく心強いからだ。イリスは悩んでいるようだったが、考えは固まったようだ。

「報酬の分け前がもらえるのなら。」

「それはおやっさんと掛け合うよ。あらためてよろしく、イリスさん!」

 レオがそういって右手を差し出した。それにイリスも応じ、こうして彼らは作戦会議に移るのであった。

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