第16話—ハエレティクス—
「私はハエレティクスに追われているわ。」
そういうと、レオ達は嫌な顔をした。ハエレティクスとは大陸東部にわたって勢力を拡大しようとするドレイク“スピラ”の各地に散らばる配下たちのことだ。
「・・・それは配下たちになのですか?それともスピラ本人からですか?」
ロークが顔をしかめながら聞いてきた。それにより重要度が変わってくるからだ。
「ひとまず“螺旋13卿”の“桎梏卿”トラジェディに追われているわ」
「幹部クラスじゃん。」
シルヴィアはますます嫌な顔をした。螺旋13卿というのは、スピラの幹部のようなものだ。百年程前に何人か倒されることがあったそうだが、ここ数十年は人類は幹部を倒していない。
「・・・えーっと・・・それってつまり?」
一人だけ状況を理解できていないカレンは、混乱してしまっていた。どうやらハエレティクスのことを知らないようだ。クライドがかいつまんで説明してようやく分かったようだ。
「しかし面倒なことに首を突っ込んじまったな。」
思わずクライドはそんなことを言っていしまった。しかし誰もクライドを責めることができなかった。どこかで自分も思っていたことなのだから。
「やめるのなら今のうちだよ」
イリスが声音を変えて聞いてきた。—正直、これ以上他人を巻き込みたくないだから—しかし彼女の重いは届かなかった。
「まぁやるしかないでしょ。」
レオが沈黙をやぶった。その目は覚悟を決めていた。
「聞いちゃったんだし、今更なかったことにはできない。そしたら一緒に付き合うよ。」
「・・・まぁ、そうだな。勝手に死なれても目覚め悪い。そしたらいっしょについっていってやるよ。」
ギルバートも嫌な顔をしていた割には乗り気だった。いっていることはともかく。
「ちょっ?!まって、この先死ぬかもしれないし、そんな簡単に請け負わないでよ!?」
イリスは錯乱し、思わずそんなことを口走ってしまった。しかしレオ達は誰も気にしていなかった。
「俺たちにもいろいろな事情ががある。ただ単にそのついでだ。俺とクライドはハエレティクスどもに故郷を奪われた。それを取り戻したい。」
ギルバートは今まで仲間にも言っていないことを話した。—無理だって言われると思ったからな―心の中でそうつぶやくと、イリスの顔を見た。
「私はそういう因縁はないけど・・・ここにいるみんなはありのままの私を受け入れてくれた。だから少しでもその気持ちにこたえたい!」
シルヴィアもそういい終わるとイリスの顔をみた。
「旅は道連れ世は情け、です。ここで会ったのも何かの縁ですよ。イリスさん、ここは流れに乗りましょうよ。」
ロークも場の空気に合わない声色で答えた。
「俺は特に何も考えていないけど、結局は困っている人は放っておけない、そういう性質なんだ。」
そういってイリスの目を見た。彼女はレオの青い目を見ると、何か胸がざわつくような気がした。しかしそれと同時にどこか安心した。
「・・・君からはどこか懐かしい気配がするよ。わかった、好きにしたら?私も君たちに勝手についていかしてもらうよ。」
そういうと苦笑した。不思議と後悔はしなかった。—もしかすると、こいつはスピラを倒すかもしれない―
そうして夜が過ぎていくのであった。
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「あれか~・・・たいした事ない気がするんだけど・・・」
カレンの目線の先には、あまりぱっとしないドレイクの指揮官がいた。一言で言うと、“ただの親の威厳を借りるボンボン”だ。
「ぶっちゃけあいつはどうでもいいんだよね。ハエレティクスでもないし、問題は向こう側のドゥイフォモールなんだよね。あいつは固いし、体力も高いから前衛がいなかったら死んでいたよ。」
「・・・イリスってこっちにいていいの?魔法強そうだけど・・・」
少し心配そうな顔でイリスを見たが、彼女は特に気にしていなさそうだ。
「あれくらい倒せていないと“螺旋13卿は夢のまた夢の話だね。」
少しひどい言い方をしたなと自覚しているが、それが事実なのだ。ここで負けているようでは、勝ち目はない。
「まぁレオ達なら大丈夫ですよ、きっと。」
ロークがお気楽な口調でそういった。両手には“天女の羽衣”と“紫電”を持っていた。
「それに向こうにも優秀な魔法使いがいるでしょ。」
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「・・・でかいな・・・・・・」
思わずレオはその圧巻の大きさに圧倒されてしまった。
「え、これ勝てるの?というか人間が戦っていいものなの?」
思わずシルヴィアは弱音を吐いてしまった。それだけの威圧があったのだ。
「ここまで来たら、やるしかないだろう。」
ギルバートも苦渋の顔でクーゼを構えた。その様子をみて、ドゥイフォモールは威厳ある声で、レオ達に語りかけた。
「ほう?このハエレティクスの一人、“孤高の巨兵”ピルゴスに挑むのか?いいだろう、受けて立つ!」
こうして、対ピルゴス戦が始まるのであった・・・
第16話—ハエレティクス—完
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