第14話—レオとシルヴィアの1日デート?—後編

 レオとシルヴィアは“淡いプリン亭”を出た後、帰りの帰路についていた。しかしこれで終わってしまうのは何か物足りない。二人はそう感じていた。

「トラストーン商会にでも行ってみる?」

 レオは何気なくシルヴィアに提案してみた。シルヴィアも特に何も思いつかなかったのでその話に乗ることにした。

「ちなみに、何か買いたいものとかあるの?」

「特に何もないけど・・・いい生地があったら買いたいかな~」

 それをきいてシルヴィアはふと疑問に思った。それは—

「そういえば、いつから服作りしているの?どう見ても一流の実力はありそうだけど・・・」

 それを聞くとレオは少し困った顔で笑った。しばらく考えてから、やがて口を開いた。

「もともと俺の育ての親が防具職人だったんだ。その奥さんが仕立て屋だったんだけど・・・俺金属鎧がつくれなくてさ、育ての親の工房は金属鎧メインだったから、脱退したんだ。親方もそのことは理解してたみたいだし、何より俺はその前に冒険者になるって伝えてたから・・・」

「で、それを一度諦めかけたんだ。」

「うっ!」

 痛恨の一撃を食らい、思わず傷ついたレオだったが、シルヴィアもすぐに謝ったこともあり、何事もなく雑談を続けることができた。

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 ギルバート ロングフェローは面白くなかった。レオとシルヴィアがデートしている姿を見ていたからだ。別に好きな人がいるわけでもないし、無理にいますぐそういうことをしたいわけではないのだが。ただそれでも見ててどこかうらやましくかんじたのだ。

「まったく・・・こういうの“リア充”っていうんだっけか?・・・」

 ギルバートは誰となく呟くと、すっかり冷めたブラックコーヒーを飲むのであった。

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 トラストーン商会についたレオとシルヴィアは次の任務などに役立つ道具を探していた。といっても特に当てがあるわけでもなく、ただただぶらぶらと道具を見て高くて買えないなどと言っているだけなのだが。

「あっこのピアスいいなー、きれい!」

 シルヴィアが指さした先には、勾玉型のイヤリングで、黒白一つずつのセットだった。

「お!お嬢さんそれは“相互フォローの耳飾りっつてな、これを付けたパートナーが失敗したとき、もう反対側は威力が上がる加護がもらえるらしいぜ?まぁ値段も高いけどな!」

 そういって金額を見せてきた。お値段実に12000G。普通の冒険者では手に入らない。

「・・・よし、おじさん買うよ!」

 そういって買おうとした。それを見ていたシルヴィアは慌てて止めに入った。

「いや!私の我がまま聞かなくていいよ?!確かに欲しいけど、そこまで無理してってわけじゃないし!」

「いや性能いいし、それにシルヴィアに似合いそうだから・・・」

 そこまでいうとハッとレオは気づき、やってしまったと思った。シルヴィアを見ると、顔を真っ赤にし固まってしまった。レオもつられて固まってしまい、しばらく気まずい沈黙がおりた。一人取り残されていた店主が妥協案を出した。

「割り勘すればいいんじゃないか?」

『じゃあそれで!!』

「まいど~」

 二人は6000Gずつ出し合い、相互フォローの耳飾りを買ったのであった。レオ達が出て行ったあと、店主は微笑ましそうに彼らを見送るのであった。

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 相互フォローの耳飾りを買った二人は、せっかくなので早速つけていた。ペアルックみたいなのでレオは恥ずかしかったが、シルヴィアはまんざらでもない顔をしていた。しばらく店内をうろついていると、不意に後ろから声をかけられた。

「おや?レオ・・・とシルヴィアさん。すみませんお邪魔でしたね。」

「いやいやいや誤解だから!」

 シルヴィアにまたもや全力否定され、少し傷ついたレオだったが、ロークのつるしているデリンジャーがいつもと違うのに気が付いた。

「ローク、そのデリンジャー・・・」

「あぁ、先ほど新しいのに買い替えたんですよ。ついでに専用化もしたのでかなりお金が飛びました・・・せっかくなので名前も付けたんですよ!“天女の羽衣”に“紫電”です。」

 そういってマシンガントークが始まった。どうやら武器を買い替えたことによってテンションが上がっているらしい。数十分聞かされ、ようやく落ち着いたロークは長話をしてしまったことを謝りながら去って行った。

「あんな生き生きしているローク初めて見た・・・」

「まだ私たちが知らないみんなの素顔っていっぱいあるんだね・・・」

 レオとシルヴィアは近くのベンチに腰掛けると、茜色の空を眺めながら今日の出来事を振り返っていた。

「いろいろあったけど楽しかったよ。ありがとう。」

「ううん、こちらこそ!またいっしょに周れたらうれしいな!」

 そういって満面の笑顔でレオを見つめた。—やっぱり敵わないな、いうなら今しかない―そう自分に言い聞かせ、レオは口を開いた。シルヴィアも何かレオが言いたいことを感じ、心臓の音が高まった。

「シルヴィア、実はずっと前k—」

「あー!レオ!シルヴィア!」

 そういってカレンがシルヴィアの後ろに突撃してきた。片手には大量のパンが袋に入っていた。

「依頼のお礼にパン屋さんからたくさんパンをもらったからみんなで食べようよ!」

『・・・・・・・・・』

「あれ?どうしたの?」

「・・・・・・ナンデモナイヨ・・・・・・・・」

 こうしてレオとシルヴィアの一日デート?が終わった。余談だがその日の夜、レオは無言で壁を頭突きしギルドマスターから騒音迷惑だと言われ、シルヴィアはカレンを部屋に連れ込み、一晩中耳と尻尾を撫でまわしたそうだ。

第14話—レオとシルヴィアの一日デート?—後編 完

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