第13話 見上げた空

「あ、七海!」

彼はこっちに来てくれた。

「もー安静にしててっていったのにー」

そんな彼の後ろには私を睨みつけている片白さんの姿が見えた。するとこっちまで大股で歩いてきて「蒼井に沿いう言うふうな態度とるのやめてくれない?見てるこっちが嫌になるんだけど」…..私は何も言えなかった。「そうやって黙ってれば可愛いと思ってる?そもそも私の彼氏にそうやって近づいてくんのやめて」その言葉はとても冷たかった。

「え…?」

沈黙を破ったのは蒼井だった。「片白さんの彼女になった覚えなんてないんだけど…」衝撃の一言だった。彼女を見ると慌てたように

「なんでそういう嘘つくの?私達今まで仲良くしてたじゃん」

「仲が良くても彼女とは違うでしょ。そもそも七海のことしか見てないし」

顔がどんどん赤くなっていくのを感じた。彼女も恥ずかしさと悔しさのあまり顔を真赤にして「もうしらない!!」とだけ言って走って逃げていってしまった。

「七海顔赤いけど大丈夫?」

「全然大丈夫!!」とっさに嘘をついた。本当は心臓バクバクで全然大丈夫じゃない。

「本当に?熱あるんじゃない?」

大丈夫と言おうとしたその時にはおでこに温かいものがあった。それが彼の手だと気づくとさっきまでの比にならないくらい鼓動が早くなった。

私って幸せだな。最近どんどん気持ちが変わっていく。でも結局最後にたどり着くのは幸せ。きっとこれからも彼とならどこまでだって行ける気がする。こんな出来損ないのピアニストでも。人は上を向けば変われる。見上げた空には思い出が浮かんでいた気がした。


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