第11話 離れていく心

「七海―!おはよ!!」今日も彼は元気に挨拶をしてくれる。でも私は挨拶を返せるほどの余裕はなかった。「大丈夫?具合悪いの?」彼はとても私に気を使ってくれた。でも片白さんにも同じようなことをしていると考えると私は彼に腹がったてしまい、つい「なんでもないから気にしないで!」と強くあたってしまった。すると「ごめん…」と申し訳無さそうに謝られた。彼が謝る理由なんてない。でも私はその場にいる事に気まずさを感じてしまい早足で学校へ向かった。いつもなら追いかけてくる彼も追いかけてくる様子はなかった。

教室に着くと机の上には落書きがされ、机の中のノート、教科書はボロボロに破られていた。誰が犯人なんて探さなくてもわかる。でもこれを誰かに相談したりしてしまうとなんだか負けたような気がして嫌だったので自分から誰かに言うことはなかった。でも噂が回るのはとても早い。だからこのことは他クラスにも話がいっているようだった。でもみんな誰が誰をいじめているのかまでは言っていないらしく私がいじめられているという話は耳にしなかった。でも、そもそも成績優秀、愛想が良い、リーダーシップがある片白さんが私をいじめたと言っても誰も信じてくれる人はいないと思う。第一先生がそうだ。私がいじめられているのを先生はきっと知っているはずだ。でも何の話もない。先生だって一人の人間だ。だから面倒事には巻き込まれたくないのだと思う。私は自分にそう言い聞かせて毎日のように机を拭いた。するとはじめは「大丈夫?」と声をかけてくれたり、一緒に机を拭くのを手伝ってくれていた子も次第に私のそばから離れていった。彼とも最近は話さなくなった。でももともと私はこうだった。たまたま私と気が合う人が近くにいただけ。本当はずっと一人でいるべき人間なんだと思う。今まで幸せだったことに感謝しなければいけないくらいだ。でも…でも…私は家に帰ると一人で泣いた。その日はあまりご飯も食べずに泣きつかれてすぐ眠ってしまった。

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