第9話色づく音楽

吹奏楽部のコンクール、ピアノのコンクール。私は何をすればいいんだろう。今まで作り上げてきたイメージが壊れていった。それから私は体調も悪くなり、ずっと微熱が続いていた。それでも私は演奏を止めない。やめられない。周りの視線が怖いから。過去の自分に怯える自分がいるから。私は過去の自分がトラウマになっている。そしてあの日見た夢すらもトラウマになっている。「ラ・カンパネラ」これが私の課題曲。あの夢と同じ。私は過去に正夢を見たことがあった。今回がもしそうだとしたら…。私は考えるのをやめた。わたしは重たい足を動かしてなんとか学校へ向かった。学校に行くと勉強や部活はコンクールに向けての練習で忙しく、あっという間だった。この時間がずっと続けばいいのに。そんな事を何処かで考えている自分がいた。昔の自分ならこんな事考えても見なかっただろうな。そんな事を考えていると「天音さーん」という声が私の耳に飛び込んできた。それはとても聞き心地の良い久しぶりに聞いた声だった。「最近なんか元気ないけど大丈夫?」彼は私の異変に気づいてくれていたのだ。その事実が私はたまらなく嬉しかった。そんな気持ちに浸っていると「もしもーし聞こえてる?」と私の顔を覗き込んできた。私は慌てて一歩下がり「大丈夫」と答えた。すると「なんで後ろに下がるのー」と少し不服そうに私の顔を見た。その顔が面白くて私はつい笑ってしまった。すると「なんで笑うのー」と彼は不服そうにしながらも笑っていた。心の底から楽しいと思えたのはいつぶりだろう。こんなにも笑えたのはいつぶりだろう。やっぱり彼は私を変えてくれる。

その日のピアノの練習は絶好調だった。ミスも一回しかしてないし何より弾いてて楽しかった。今日は音楽が私を縛り付けているんじゃなくて、私が音楽を作っているみたいだった。真っ白な空気にカラフルな音を乗せていく。モノクロの世界に色がついていく。

これが私の思い描いてきた音楽だ。

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