第3話 おかしな約束
「天音さーん」どこか聞き覚えのある声が私の名前を呼ぶ。やっと見つけた。そう言って現れたのは木下蒼井だった。またこいつか。正直なところ私は彼があまり好きじゃない。そもそも私と真反対の場所にいる君がなんで私なんか…。そんなことを思いつつも「どーしたの」と一応返事する。すると彼は「どーしたのじゃないですよー。約束したじゃないですかー」と言ってきたのだ。私が!?こんなやつと約束なんてするはずがない。思い切って「約束なんてしたっけ?」と聞くと「しましたよー!この前僕じゃあまた今度って言ったじゃないですかー」え?これは約束に入るの…?私の感覚がおかしいのだろうか。いや、きっとこれを約束という人のほうが少ないだろう。というか今初めて見た。やっぱり君とは合わないな。と思いつつも「あー確かに言ってたような…」と誤魔化しておいた。それでも彼はまだ私に話したいことがあるようだ。
「僕と付き合ってよ」
え????私の頭がパンクしそうになったところで「今日の放課後一緒に練習付き合ってくれない?」 ですよね。そんないきなり少女漫画みたいなシチュエーション来るわけないよね。ちょっとでも期待してしまった自分が恥ずかしい。というかそもそもこんなやつから告られても即お断りだったし!…さん、天音さーん聞こえてますか?はっと我に返る。あぁ大丈夫、大丈夫。とっさにその言葉を口にしたせいで...。「ほんとですか?今日予定ないなら一緒に練習出来ますね!」 そうか私は今日の放課後の予定を聞かれてたんだ。あーなんで大丈夫なんて言ってしまったんだろう。後悔してももう遅い。結局わたしは最終下校時刻まで彼の練習につきあわされることになってしまった。つまり18時までだ。どれだけあの時間が長く感じたか…。そんな私にお構いなしに彼は「また時間のある時一緒に練習しましょうねー」なんてのんきなことを言っている。まあそんな時間もこれで終りと思っていたのにまさか帰る方向まで一緒なんて。私の家は学校から大体20分くらいだ。そう考えるとまだまだ先が思いやられる。でも話しているとなんだかんだ時間の経過は早く思っていたよりは早く家についた気がする。「じゃあまた明日」私はそう言って家に入った。
そこで私は重大なミスを犯してしまったことに気がついた。そう、彼は「じゃあまた今度」というのすら約束の一つとして考える人だったのだ。完全にやらかしてしまった。でも一回言ってしまったことは取り消しできない。あぁまた変な約束を交わしてしまった。
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