元貧乏芸人の俺、最狂スキル"ギャグパワー"で異世界中を笑わせる。

エッソン

第1話 「素っ裸の勇者」

「お、お前が勇者???」

魔王がぽかんとした表情でこちらを見る。

ここは、魔王城の最上階。

俺の目の前には、金色に輝く玉座に座る、

いかにもな雰囲気を醸し出した魔王がいる。

「おいおいおい、最近の勇者はろくな装備を

買う金もないのかね(笑)」

「つーか素っ裸だけどな俺。」

そう冷静なツッコミを入れるこの俺、これでも異世界転生して五分しか経過していないのである。

ことの経緯は五分前。単刀直入に言おう。

俺は素っ裸で勇者召喚を喰らった。

芸人だった俺は日々夜遅くまで人のいない

舞台で持ち前のネタを一人で淡々と披露していた。そして日が変わる直前くらいにげっそりしながら湯船につかり、疲れを癒し少し

風呂で寝てバイトに行くという今思うと死亡寸前の狂った生活を送っていた。

売れない芸人はつらい…。

そんな俺の唯一の安らぎであるお風呂タイムに勇者召喚を喰らったのである。どこまでも神様は残酷なもので、他の召喚者は3人でどうやら高校生っぽく全員がパジャマ姿の中俺だけがアラサー芸人の素っ裸を皇室にお披露目してしまった。女子高生がフルチンの俺を見てこれでもかってくらい叫んでたがその辺のjkごときに見せるほど俺の体も安くないぞ。

「おい」

ご丁寧に解説中なのに話しかけてくるとは

コイツ魔王失格だ。変身とかも待つでしょ

敵キャラって。待てないやつは敵キャラじゃない。ましてや魔王など。

「なんだよおめー。俺は今お取り込み中なんだよ空気読め」

「は?ひとさまんちに勝手にあがりこんで勝手に妄想に浸ってるのはどこのどいつだよ!」

…一理ある。

「大体なんなんだよ貴様!いきなり俺様特注の魔王城の屋根突き破って入ってきてなにが

"俺は勇者だ"だよ!絶対殺す」

「確かに素っ裸の勇者なんて聞いたことがない。しかし俺にも色々事情というものがあってだな。」

しかしうるさいなこの魔王。こっちにもゆっくり説明する時間くらいくれないもんかね。

「なにが事情だよ!しらねぇぶっ殺す!」

そう言い叫びながらなにやらヤバめな漆黒のエネルギー玉を出現させる魔王。

「くらえぇ!全てを消し去る俺様の超上位

魔法!"獄殺波"!」

「ふんっ、なにが超上位魔法だい。こんなん俺の鼻くそで余裕だね」

「フッ!最後までまぬけなやつめ!」

そういってやつがなんとか波を溜めている間に子供の頃からつちかってきたスキル高速鼻くそほじりを使って素早く鼻くそを指に装着する。みんなわかる?他の人に見られたくないから素早く鼻ほじるあの心理。

「フンッ!」

という魔王のくっさそうな鼻息と共に波動がこちらへ猛スピードでやってくる。

よーししっかり狙って…えーい!

その直後、俺のわずか数メートルほど先で

すさまじい爆音と共に魔王のなんとか波が消え去った。

「…な?言っただろ?」

「…」

…魔王のなんともいえないマヌケ面と共に

流れるなんとも言えない沈黙。

するとその気まずすぎる沈黙を破るように

最上階の重い扉が突き破られる音がする。

「ま、魔王様!?今の爆音は…どうなされました!?」

そこにいたのはゴリゴリマッチョのくせに

タキシードを着ているゴブリン。

なんだ執事かなんかか?

「…」

相変わらずそこの空間だけ時が止まっているかのようにマヌケ面のままザ・ワールド状態の魔王。

「ま、魔王様っ!?どうされました魔王様っ!?」

そういい俺をガン無視して魔王の元に一目散に駆け寄るタキシードゴブリン。

しかしゴブリンがタキシードなんか着るんだな。もっと魔王城の下らへんで棍棒持ってでてくんじゃないのゴブリン。…おっと異世界でも差別はよくないな。ゴブリンだってタキシードきてもいいだろ!

「魔王様っ!!魔王様ぁぁぁぁ!一体なにがあったというのですかぁぁぁ!」

「お前アホなん?なんで俺ガン無視?」

「うおわぁァァァァァッッッ!!!」

大袈裟気味に後ろに驚きながら吹っ飛ぶタキシードゴブリン。…コイツマジで俺に気づいてなかったの?

「な、何者だッ!貴様の仕業かッ!そしていつからそこにいたッッッ!」

なんか今日ジョジョネタ多くね…?

「いや…さっきからずっとここにいるし。素っ裸の男よりマヌケ面で今にも目ん玉飛び出て死にそうな魔王に目が行くかね普通。」

「マヌケ面ッ!魔王様になんてことを…

ブッ…ククク…ハッ!マヌケ面とはなんだ無礼者が!」

コイツ頭おかしいでしょ。なんでこんなの雇ってんの魔王。

「さぁ話せ!なんださっきの爆音は!一体なにがあっ…」

タキゴブはいきなり話すのをやめて魔王を見つめる。ん…?目だ。魔王の目がなんかプルプルして揺れている!やっぱりこうなるか。てことは…

「魔王様どうされま…」

そしてまたタキゴブの話を遮るように今度は魔王の大きな二つの目玉がコロコロっと床に落ちる。

「あ…あ…あ…あァァァァァァァァァァァッッッ!!!」

そんな今にも爆発しそうな泣き叫ぶタキゴブをよそに魔王が落ちた目玉を残し崩壊していく。

「まっ、魔王様ァァァッ!体がァァァァァ」

サァァァッとゆっくり崩壊していく魔王。

なんで目玉は残るんだ?いらないんだがこの仕様。

「まっ、まっ、ァァァァァァァァァ!魔王様ァァァァァァァァッッッ!!!」

消えていく魔王の体を掴もうと必死のタキゴブだがそんな行動も虚しくやがて目玉を残し魔王の体は消えていった。

「…なぁ、この目玉ってもしかして高値で売れたりする?」

「…」

ちょっと不謹慎だったか…!?さすがに!?

…そして絶対に笑っちゃいけない沈黙が流れだした。

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元貧乏芸人の俺、最狂スキル"ギャグパワー"で異世界中を笑わせる。 エッソン @kinkai

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