第53話『変化の兆し』後編
そして、新幹線は品川へ到着します。
大井町へは、東京から横浜へ向かう京浜線にのります。新幹線の改札を出て、頭の上の案内をみますと、京浜は右へとあります。素直に進んでゆくと、新たな頭の上の案内には「京急……はて?」
健康な頃は、たまに、東京へ行くこともありました。古本街の神田や、小劇団のメッカ、下北沢。京浜線がJRなのか私鉄なのか感覚的にわかりません。目の前は「京急」のきっぷ売り場です。
大阪も、大阪ダンジョンと呼ばれるぐらいには、電車と地下鉄が乗り合っています。
ですが、東京はその比ではありません。
「じぇんじぇ~ん、わかりません」
しかし、大阪は日本NO2の都市(実際は横浜に抜かれている)。御上りさんでもその自負(じふ)があります。
「すんまへん。ワテ大阪から、まいりましたんでっけど、すんまへんが、京浜線とかいいますのは、どない行きまんの?」
「そんなこともわかんないの、これだから田舎者の大阪人はダサいんだよ。そこだよ、そこ!」
なーんて、言われたくありません。
京急のきっぷ売り場の柱の陰に、彼氏と待ち合わせでもしている女子高生と、微妙(びみょう)な距離(きょり)をとって、グーグルマップで調べます。
あやうく、もう少しで、女子高生に声をかけるところでしたが、寸前で、JKの略文字が「京浜東北線」だとわかり、間違えずにJKに声をかけ、東京都の迷惑防止条例(めいわくぼうしじょうれい)で、私服警察に捕まった。。。(ウソよ)
そして、京浜線のホームで、もう一段おどろいた!
1 見送ったと思ったら、すぐに、次の電車がくること。
2 乗客が「拷問か!」と感じるほどぎゅうぎゅう詰めで詰め込まれていること。
3 列に並んでも、3度は見送ること。
4 強い決意で、自分の体をねじ込まなければ乗れないこと。
「東京は、戦場(せんじょう)やわ、キツイ……」
と腰が引けたが、「負けてなるものか!」と、ヘンな負けん気がでて乗り込んだ。
一駅、もみくちゃにされて、大井町に到着。そこで、叔母と待ち合わせしたが、久しぶりに会ったらわからなかった。
「亮ちゃん、ひさしぶり」
叔母が、手を振って、隣の若者に声をかける……、おもわず、「コントか!」と心の中でツッコみました。
こちらも、一瞬、叔母がわからなかったんです。記憶の叔母は、いつも黒髪。それが、真っ白になって、心なしか一回り小さくなった印象をうけました。
「叔母さん、お迎え、ありがとうございます。お元気そうで安心しました」と言ってはみたものの少し心配です。
しかーし、そんな心配も次の一声で方向が一転します。
「亮ちゃん、とんかつ食べにいこう」
「えっ? とんかつですか??」
「そうよ、美味しいところがあるのよ」
と、まさかのとんかつを食べる気満々です。
さらに、驚く光景を目にします。
骨折して、不調の叔母がスタスタ歩いて、ルーズソックスのJKを追い抜いて商店街をズンズン進みます。
「およよ……思ってたんとちゃう」
とんかつ屋は、大井町の老舗で、二階の座敷席に案内されました。
ここで、叔母の不調が、はっきりわかりました。平床のテーブルにだと、手術で人工関節を使っていることもあり、お姉さん座り(横座り)で不自由そうでした。下手な座り方をしたら、関節が外れ再手術です。
「それでも、叔母は、このトンカツ屋がいい」
なぜなら、若い頃、安孫子に住んでる弟の叔父が、苦学して大学に通っていたころ、この店を利用していた思い出の味なのだとか。美味しいはずです。
私、星川の家は、資産家ではないので、皆、勉学に励んで自力で、人生を切り開く家柄です。僕は燻(くすぶ)っていますが、叔母と叔父は、いつも「がんばんなさいよと」エールをくれます。
そんなド根性の叔父叔母を見習って、ボクには病気があるとはいえ、そう簡単に、挑戦を諦める訳にはいきません。
出来ることを最大限に、だらしない自分に発破(はっぱ)をかけて精進です。
奄美大島の義叔父にお礼を言うと、「僕が元気な間に一度、いらっしゃい。一見の価値はあるから」と言われますが、名刺代わりの書籍化作品もないのに行けません。
「カクヨムコン10」に賭ける思いは本物です!
まずは、スケジュール通りに書く。あとは、精進、精進、精進です。
がんばりまっせー! 心を支えて下さる義叔父・叔母の期待に応えるべく、がんばります。
結果は、自分で決める物ではない。出来ることは、自分の力を精一杯、発揮(はっき)して、読者の共感を得ること、日々精進して少しでもいい物を「カクヨムコン10」にぶつけます。
今回は、叔母の元気な顔が見れてよかったです。
だって、前を歩くJKを追い抜いて歩くパワフルさが見れたんですもの。うへへ、話のネタが増えました。
それでは、久しぶりの旅のレポートでした。ありがとうございました。
おやすみなさい。
〈了〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます