第52話『変化のきざし』(前編)

 叔母に呼ばれた。


「10日くらい、東京戻るから亮ちゃんこない?」


 最初の返事は、「カクヨムコン10」へ向けての執筆が遅れつつあるし、それどころではない。と思い一旦は断ったのだが、叔母の話を聞けば、「手を骨折しちゃって思うようにうごかせないのよねえ」・「膝も痛いし」・「背骨も痛い」叔母と亡くなった母が重なってみえた。


 子供の頃からとても可愛がってくださった叔母だ。会えるときに会っておかねばもしも……が、あるかもしれないと思われた。


 すぐにスケジュールを確認し、仕事終わりにその足で、強行軍で会いに行った。




 前日、新しい黒の感動パンツをおろし、洗い立てのシャツ、靴下、パンツ……、電動シェーバー、スマホの充電コード一式、最後に、足元も新しい黒のシューズをおろした。

(ふだん吐いてる靴は、毎日の行き帰りで、1日8000歩ウォーキングも兼ねる消耗品だから、スポーツデポのオリジナルブランド・ティゴラだ)


 いやね、「くいだおれ」の大阪からの御上おのぼりさんだから、「着だおれ」の東京へ行くから、今の自分にできる最高のファッション、UNIQLOで決めて新大阪の駅に向かった。


 あらかじめ、金券チョップで買っておいたJR東海の1枚1割引き株主優待券を2枚(最大、2枚使用可)づつ、往復で4枚用意していた。



 しかし、新大阪のみどりの窓口で使おうとすると、「ここはJR西日本なのでJR東海の株主優待券は使えませんと」遠くの一角を指差される。


 緑の窓口に立つまでに、S字で20分ほどの列にならんでいるのだ、ここで、時間のロスを考えると、先が読めないJR東海の窓口へ行けるわけがない。


 しかたなく、行きは正規の値段を払って新幹線へ乗った。




 思い返すと、東京へ行ったのは、数年前、平祐奈さんの主演ドラマイベントで、ツイッターで募集されていたのを、「当たるわけない」とポチリとしたら、当選し、平日の昼間、大阪から渋谷のサイバーエージェント(ABEMA)の本社へ行った以来だ。

(このエピソードもけっこうおもしろいのだが、今回は関係ないので割愛)




 新幹線は、新大阪から京都までおよそ15分(ローカルの新快速で45分かかる距離)、名古屋まで50分、そこから、新横浜、品川、東京へ東海道とうかいどう五十三ごじゅうさんつぎをたどる。


 この旅で、興味深いことに気がついた。4か所で、水圧の高い深いプールに潜ったように、耳が詰まった。


 1新大阪から京都へ向かう淀川を渡るとき。


 2関ケ原のトンネルを抜けるとき。


 3右手に駿河湾、左手に富士山をみながら走るとき。


 4箱根山のトンネルを潜るとき。


 私、星川は歴史物を書いてます。これらの場所はすでに、資料の上では調べて登場しているのに、現地で体感してはじめてわかることです。


「泣きたいです!」


(泣いてもはじまらないので泣きませんが、この体験を血肉に変えます)



 2時間ちょっとの列車の旅、「カクヨムコン10」へ向けての執筆をしようとタブレットPCを準備しています。


 テーブルを下ろして、パソコンの画面を開いて15分、「うぇ!」、世界最高の鉄道技術の日本の新幹線でもれはあります。


 みなさん、体験ございませんでしょうか、車などで本を読むと、車酔いする。それと同じことが起きたのです。


 2時間ちょっとあれば、1エピソード書き上げれたのですが、吐き気をもよおしていては、品川で行動できません。執筆は取り止めです。



 すると、タイミングよく叔母からメールが入ります。


「イトーヨーカドーのある大井町おおいまちで食事しましょう」と誘われました。


 時間を持て余すボクは、グーグルマップで検索します。到着時間は夕食時です。


(おそらく、イトーヨーカドーにあるテナントで食事をする計画だろうと、先読みします)


 そじ坊(大阪の企業ちょっと、贅沢そば屋)、とんかつ和幸(神奈川の企業)、くら寿司……、叔母は、おばあちゃんな年齢です。おそらく、さっぱりしたそじ坊か、くら寿司でしょう。東京は藪蕎麦やぶそば更科蕎麦さらしなそばで有名です。大阪の蕎麦は選ばないだろうと、くら寿司だと予想を立てました。


 到着時間は、晩御飯時、予約しないとおそらく入れない。一応、先回りして予約しておきました。





 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る