第42話 著・木村忠啓『慶応三年の水練侍』を読んだ感想文

 なんのタイミングだったか失念したが、Xのポストに木村忠啓先生が、いいね 下された。


 ボクのくだらないポストに、いいね 下されるなんて奇特な方もいるもんだと覗いてみると、作家先生だった。


 すみません、勉強不足で、木村先生をこれまで、存じ上げませんでした。



 木村先生の固定ポストを見ると、朝日新聞出版さんから『慶応三年の水練侍』が貼り付けてあった。


 これは、浪花の下町紳士としては、一度、拝読させていただこうと、ポストにもあるように、まずは、図書館へ走った。。。残念ながら、中核都市の我が町の中央図書館には置いてなかった。


 だからと言って、ボクは紳士である。読むと決めたからには、絶対に読む。


 Amazonで購入しました。


(時を同じくして、南海トラフ大地震の報道と重なり、防災グッツなど、出費が重なるタイミングだったので根性出してポチッとな)


 ここからは、読解力がないボクが、意訳しながら、内容を掻い摘んで、お送りします。




 幕末の現在の伊勢国(三重県)津藩(津市)が舞台のお話。


 殿様は、藤堂高虎の末孫、藤堂家で、湊町だから、水練が盛んなお家柄。


 時代は、ペリー来航以降の変革期、槍や剣術では、黒船の大砲には太刀打ちできない。


 主人公は、佐久間象山より砲術を学んだ市川清之助、真面目一辺倒な男だ。彼には、秀才と評判の親友がいて、名を谷口善之丞という。


 この二人が、砲術の試し撃ちの時に、何かしらの手違いで、倉庫の火薬に引火し、爆発事件が起きる。


 この時、清之助は、柱の下敷きになった善之丞を助け出そうとするのだが、火の回りが早く、断腸の思いで一人逃れた。


「清之助、オレの幼い息子が道を違わぬようよろしくな」


 と、遺言を受けた。



 それから、20年後くらいかな、清之助は、35歳。砲術指南だかの役職についていた。


 そこへ、江戸から、親友善之丞の倅、善幸が才気煥発な青年となって帰って来た。


 しかし、善幸の清之助に対する眼つきが変だ。まるで、親の仇でも見るくらいに厳しい。しかも、藩の水練の稽古で、流派の違う善幸は、なにかと清之助に絡んでくる。


 親の仇と憎んでいるのだ。



 そこから、藤堂家の支藩、伊賀上野城の伊賀忍者衆、幕末の藤堂家の立ち回りと絡まって、物語は、進んでゆく……。



 まあ、この先は、買って読んで下さい。




 木村忠啓さんの作品を読むのはこれが初めてなのだが、津藩と水練についてよく調べたものだと驚いた。


 幕末の難しい舵取りを、藤堂家はいかに乗り切るか、それを、清之助と、親の仇として憎む善幸を通じて、重役の思惑を絡めながら巧みに描いてゆく。そして、最後のどんでん返し。



 ボクは、この作品から、木村忠啓さんの作品に誠実に向き合う人柄を垣間見るような思いに駆られた。


 木村忠啓さん好きな人柄だわ。



 他にも、朝日新聞出版さんから『ぼくせん 幕末相撲異聞』最近では、双葉文庫から『十返舎一九あすなろ道中事件帖シリーズ』、祥伝社文庫から『虹かかる』など精力的に執筆されているようだ。


 まったく、楽しみな作家先生を見つけた。


 ちなみに、現在、ボクが押している作家先生は、


 1井原忠政先生『三河雑兵物語シリーズ』(茂兵衛が一兵卒、足軽から、徳川家で立身出世して行くシリーズ。めちゃ、おもろい)


 2木下昌輝先生『愚道一休』(さすが、直木賞候補に何度もノミネートされてる。とにかく、どれ読んでも狙いがおもろい)


 3杉山大二郎先生 『大江戸かあるて 秋空に翔ぶ』集英社文庫 (より、連載終わったようだけど、ボク的には、『さんばん侍』の方が好き)


 4伊東潤先生 『城をひとつ』新潮社(北条家を支えた軍師・大藤一族の話。これは、唸った)


 そして、忘れちゃいけない。現在、快進撃をつづけるWEB小説から現れた怪物。


 5 筑前助広先生(これから本格化していく期待の時代小説作家さん)



 どちらかと言うと、ボクは、脚本畑出身なので、脚本家先生の作品を読むことが多いけれど、これからは、木村忠啓先生も注目だ。


 と、拝読するまで、3週間近くかかったかな? 感想を書くと言っておきながら、遅くなって、真に申し訳ありません。


 皆さんも、木村忠啓先生の作品を開いて見てください。



 そうそう、最後に、木村忠啓先生に、書いて欲しい作品がある。先行作品は、誰が書いているかは知らないが。


「転封を何度もした、藤堂高虎の国造り、領国経営を描いて見せて欲しいように思いました」



 それでは、拙い感想文でしたが、本日も、お付き合い下さり、ありがとうございました。


 おやすみなさい。


〈了〉

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