38話『不機嫌な太陽』
住む町は重要だ。
今日、私は、奥歯の詰め物が取れて、久しぶりに、歯医者に行くことになった。
かかりつけの歯医者は、私が以前住んでいた下町の中でも下町だ。どのくらい下町かというと、物の数年前まで、色町料理屋が存在した。
(色町料理屋の説明の詳細は避けます)
「住めば都」と誰かが言ったような気がするが、その印象が180°見直される出来事にあった。
現在の私の住まいから、昔の住まいのある歯医者まで、自転車で片道15分かかる。電車ならば、1駅の距離だ。
物の半年前ならば、えっちらほっちら、片道30分かけて体力作りで歩いて行くこともあったが、直近の2週間は、金にはならないが本域で書き物しているので、無駄な時間があるならば、書き物をしたい。時間が足りないと時間を惜しんだ。
「オレは、本気で紙の書籍化作家に成りたいのだ。1000万円の年収を得て、大好きなミルクチョコレートでお菓子の家を造りたいのだ。そして、胸いっぱい。鼻血がブー! するまで貪り食いたいでっかい夢があるのだ。
まあ、冗談やけど。
とにかく、今は、
歯医者での治療が終わり、帰りの段になった。私は、食えないビンボー作家なので、食費もギリギリまで削っている。
値引きシール万歳! とにかく安くて、量が多くて、調理が簡単な食材を探し求めている。そう、歯医者の近くの商店街には、あの伝説の「業務スーパー」があるのです♡。
で、チャリンチャリンと、自転車で行ったわけさ。もちろん、商店街は車両通行禁止だから、押して歩いた。
業務スーパーの店先の駐輪場に、止めようとしたら、運悪く、先に、おばさんが止めスペースがなくなった。
「あ、どうしよう」と、どこに止めたものかと、立ち止まると、不機嫌な男の声がした。
「チッ! 邪魔や」
振り返ると、日に焼けた細身の白髪の乱れ髪のじいさんが、すぐ後ろにいた。
オイラさ、47歳の現在でこそ、当たり前に身なりを整えたり、言葉遣いを丁寧にしたり、人を労わる気持ちが少しは持てる人間に近くなったわけ。
しかし、子供の頃は、ヤクザのおっちゃんとかと一緒に銭湯に入って、談笑したり、コーヒー牛乳をゴチになったりするような下町の下町のさらに下町で育った。面白で脚本家の師匠に拾われるまでは、丸坊主の金髪、やんちゃな
最近は、優しい人に恵まれて、皆に良くしてもらって、穏やかで、ホヤホヤした、天使ちゃんみたいな人間に生まれ変わっていたの。そんな、オイラが、まさか!
不機嫌なじいさんの目の奥をまっすぐ睨んで、どこぞの構成員の方のように、威圧的な沈黙で見送った。
じいさん、怖くなったのかな、起立したように、背筋を伸ばして、真っすぐ遠くを見て「私はかんけいありまてーん」って、一切、オイラに目を合わさず野村萬斎みたいに、スルスルスルと、スグに、角を折れて身を隠した。
でも、嫌ぁ~な気持ちになった、帰りの自転車を漕いでる時も、ずーっと、おじいさんの不機嫌な顔が浮かんで嫌な気持ちだった。
その時、思い出されたの。オイラの学生時代の同級生で、経営者とか、上場企業のサラリーマンになった同級生のA君は、結婚後隣の市に引っ越し、よほど、隣の市の水が美味しいのか、同窓会にも顔を出さなくなった。
あんま、詳しくは言いたかないんだけどさ、オイラの市と、お隣の市の間には、
勝手な体感だけど、武庫川の向こうと、こっちじゃ人の民度が違う。さらに、阪神間は、南に阪神電車、JR、阪急電車と北へ行くほど民度が上がる。
オイラが、不機嫌なじいさんに出会ったのは、南側。一概に、環境・土地ガラにしたくないけど、あるんだよな、ホンマに、これが、阪急沿線の隣の市だったら、こんな気持ちにさせる不機嫌なじいさんはいない。
日に焼けたじいさんが居たとしても、それは、日サロで焼いて、歯が白く輝く、オシャレさんが呟くの。
「君、ちょっと、道を開けてくれないかい?」
こう、言ってくれれば、最敬礼で、「失礼しました、すみませんでした」と、快く、道を譲る。
その心の余裕と、言葉の丁寧さ、そして、他人への誠実な態度が、今日行った界隈には、欠けているんだろうな。
まあ、オイラ個人の狭い了見内での感想やけど。
とにかく、できるだけ、誠実な人間で居る。そう生きる。そうある。のが、「大事なんだなあ」と自分の在り方を見つめなおすきっかけになりました。
どんなことがあっても、哀れなおじいさんを、若造が威圧してはイケナイ。
そこを、笑顔で、「おじさん、ごめんよ気がつかなかった」と、笑顔で、道を譲るような紳士的な振る舞いの出来る人間に早くなりたい。
もしかしたら、夏の暑さが、本来、優しいおじいさんを豹変させ、不機嫌にさせたのかも知れない。でも、疲れた時、弱った時に、口にする言葉であったり、態度がその人の本性かも知れないね。オイラは、それでも、人に丁寧で在りたい。
〈了〉
それでは、
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それでは、また、不定期で。
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