第30話 『スマホゾンビが探す青い鳥』

 駅の改札を抜けると、そこにはスマホゾンビが溢れ出した。スーツ姿のサラリーマン・OL、制服の学生、くたびれたポロシャツに塩をふいた派遣社員。


 皆、手にしたスマホをパンツのポケットにしまうでもなしに、片時も離さない。


 歩きスマホはもちろん、誰かとLINE、X、Instagram、TikToKいつも誰かと繋がっている。


「お母さん、今日、帰るの遅れる」


「最高裁判決!」


「マリトッツォ美味しい!」


「しかのこのこのこ」



 そこに、何があるんだろう?



 人波に紛れて思うことは、


「腹減ったなぁ」


「シャワー浴びてぇーなぁ」


「ビール飲みてぇーなぁ」


 が、先だろうと思う。


 でも、現実は、皆、スマホをキメている。



 横断歩道の遮断機が下りた。


 向こうの人も、こちらの人も、車窓の人も、虚ろな目でスマホの世界を泳いでいる。


 顔上げってんのオレだけだった。


 オレが変人なのか、皆が変なのか、わからない。



 スマホの中に何があって、現実には何が足りないんだろうねぇ?


 もしかすると、スマホの中には、「幸せの青い鳥」がいるのかしらん?


 顔を上げて、前見て歩いてるの、オレだけだった。


 たぶん、皆、オレより金稼いでるし、社会的に成功してる。でも、何か一つ足りないのかな?


 オレは、金もないし、社会的地位ももちろんない。その上、家族もいない。


 でも、顔を上げて、前を向いて歩いてるから、楽しい。


 色んな先生の背中が、はっきり見えている。


 画面の中じゃないよ。心の中。


 最近は、会話もできる……。


 メンタルの病気のあるオレが言ったら幻聴だな。


 一体全体、青い鳥はどこに居るのかな?



〈了〉


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