第25話『起承転結VS自由型 勝負師とファンタジスタ創作論』【選曲】きらきら星
「星川君、オリジナル曲を書いたから見てくれ!」
バブルの頃にうどん屋で成功。競馬でも、僕の負けない買い方(複勝やワイド)ではなく、年に1度の大勝利、100万馬券を狙う勝負師気質な一面も持つ人生の先輩からだ。
スマホで歌詞のメモを見せられた。
人生の先輩は、現在を生きている。若かったころの感傷に浸る自分世代の沢田研二、長渕剛、太田裕美より、現在を生きる若者の感性の米津玄師、髭ダン、あいみょんを好む。
歌詞のテーマは、愛だ。
愛にAIを引っかけた20代の若者が閃きそうな若い感性の言葉のチョイスだった。
創作の経緯は、聞けなかったが、性格から推察するに、閃きで1発当てようと思ったのではないかと感じた。
およそ、一行17~18前後の詩でまとめられ、AIが当たり前の社会で、「真の愛」とはなんなのか疑問を投げかける内容だった。
なぜだか、1番の歌詞だけを見せてくれて、2番以降と、キラーフレーズはうかがえなかったが、その後で、こんな話をされた。
(狙いを”現在の愛”だとすれば面白い。)
「いいかい、星川君。歌詞でも小説でも、創作物はそこに『起承転結』物語があるんだ……(云々)」
僕も、大ヒット作品を書いたことも、たいして書き物で稼いでるわけではないので、プロとは自認せず、セミプロの低ぐらいの実力の自負がある。
黙って聞き流せばいいところを血圧高いから、
「書き物に関して、プロなんで」
と、小さな誇りのために、感情が一瞬走った。人生の先輩の話を遮って反論してしまった。
人生の先輩は、それ以上の話は打ち切って、テニスでともに汗を流して帰った。
その日は、とても暑い日だった。気温は30℃を超えていただろう。
もっと、ドライ機能があるスポーツウェアで行けばいいのに、先に別件の用事を済ませての参加だったから、薄手の白のTシャツに、カジュアルな紺のシアサッカーシャツを羽織ってテニスをした。
白の薄手のTシャツは汗で透ける。テニスサークルには女性もいるから、マナーもあるし、シアサッカーシャツを脱げず、汗だくで帰った。
帰宅後、汗は匂いや黄ばみの原因になる。すぐに、洗濯機を回し洗い、シャワーで汗を洗い流した。
頭からシャワーを浴びていると、人生の先輩の言葉が思い出された。
「『起承転結』物語……『!』」
ある推測が閃いた。
人生の先輩との会話の時には、
1 僕がネットに公開してるだけでも12万字超えで、結構な量を書いているのを知らない。(そもそも、見てない。面白く感じなかった、何を書いてるかわからなかった)
2 僕との日常会話で、話に簡単な構成がなされていることに気づかない。そう感じない(面白い話をする物書きは、会話にも運びの構成がしてあるものだ)
3 プロで飯を食うには、閃きと思い付きが幸運に1本だけ大ヒットするのではなく。次から次に何本も書くための日々の勉強と体力が必要だということを知らない。(僕の遅筆の原因は、確かに才能はない。勉強も嫌い。体力がない。ナイナイナイの3欠点がある……探せば、もっとある 涙)
このような解釈で、話を打ち切ったが、頭を冷やして、汗を流して、綺麗な星川になったら、自分の解釈違いに気づいた。
「星川、未熟なり!」
僕の反論は、底の浅い未熟な反論だった。
一般に、『起承転結』と呼ばれるものは、企画をペラ一枚で伝えるための短めな文章表現に使われるもので、日本の国語教育の基礎中の基礎ではあるが、長編を書くには、三幕構成などの知識が必要。さらに、中ハコ、小ハコ……説明すると切りがないので詳細は省く。
(いや、そんなものなくても書かれた名作は多いのだが……一番大事なのはとにかく『面白いこと!』。僕が、師匠から教わったのは技術じゃなくてそれだけ)
人生の先輩が伝えようとしたのは、『起承転結』の理論ではなく。僕に欠けてる……基礎練習の重要性を伝えようとしていたのではないかと……振り返った。
身も心もキレイになった僕は、すぐさま、風呂から出て、人生の先輩に、己の未熟さを恥じて、つらつらと、京極夏彦かと思うほどの長文を認めてLINEした。
――1時間後、返信が返ってきた。
『星川さんの話は、とっ散らかってるけど、面白いので好きですよ。長所と短所は表裏一体!』
まさに、的確だった。
そうです、そうです。そのとおり起承転結の型に当てはめてみると、とっ散らかってるんです。
私のスタイルはファンタジスタ任せの古いサッカーなんです。キックオフとゴールがあり、他の部分は自軍の選手が相手に合わせてファンタジスタを中心に自由にプレー、展開するスタイルなんです。
恐れ入りました。
もう少し、僕の物語のメンバーにも決めごと(型)を作って、ファンタジスタなしで戦える戦術考えます。
ファンタジスタの生きるサッカーってめっちゃ面白かったけど、ケガとかで抜けると脆い。時代は、ファンタジスタ不要。
〈了〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます