第15話 『ありがとう、さようなら、僕にとっての学校』

2024年3月17日、毎週行く書店が閉店した。


この書店は、中核都市の主要駅にある高層マンションの客の利用を見込んだ商業施設にあった。


最新の週刊漫画雑誌、週刊誌、経済雑誌、歴史、小説雑誌、グラビア、スポーツ……NHK出版、漫画本、小説、資格、絵本と、暇があればここへ通って、今の本のトレンドを学んでいた。


ここでは、最新刊を見ることで、主に流行を見ていた。


ココの店長さんがかなりの目利きで、まだヒットする前の井原忠政先生の『三河雑兵心得1 足軽仁義』を平置きしていた。


僕は、書店の隅から隅まで、「お前、店員か!」ってくらい、すべてのジャンルの入れ替わりが分かるくらいまで把握するくらい利用してた。


とりわけ、歴史物は大好物なので、常に、面白い作品に出合えないかと棚に並んだ本、特に、双葉文庫と光文社文庫は、片っ端から取り出して数ページ目を通した。


「『足軽仁義』足軽から立身出世していく話。おもしろそうだが……、作者の井原忠政って誰やねん」


が、出会いだった。


ほんと、この書店が平置きしてなかったら手に触れることもなかったかもしれない。


ほんで、読んだらめっちゃおもろいのよ、ガタイが良くて乱暴者の茂兵衛が、一番下の足軽から、上役に頭はたかれ扱き使われながら、百姓から生きるために、とにかく体張って、納得いかない無理難題を押し付けられながらも耐え抜いて、がんばるの。


これだ!


今じゃ、50万部越えの人気小説家の井原忠政先生に出会えたのも、最初に見つけて平置きした店長さんの目利きのお陰。


先述の井原忠政先生(実は脚本家・経塚丸雄先生)、一色伸幸先生(脚本家)「配達されたい私たち」「妻と女と雨が好き」「幸せであるように」、金子成人先生(脚本家)「付添い屋・六平太」「ごんげん長屋つれづれ帖」、小説家では、伊東潤先生「武田家滅亡」「城をひとつ」、簑輪諒先生「うつろ屋軍師」杉山大二郎先生「嵐を呼ぶ男!NOBUNAGA]「さんばん侍」「大江戸かあるて」……最近では、筑前助広先生「谷中の用心棒」「颯の太刀」が並んでた。


井原忠政先生は、マジで誰やねん状態で出会ったが、僕も一応脚本勉強したから、一色伸幸先生、金子成人先生は追いかけてる。

伊東潤先生、簑輪諒先生、杉山大二郎先生は店長さんの平置きのお陰。


筑前助広先生は、WEB小説から書籍化の注目作家さん。



ほとんど、僕のように、立ち読みだけして買わないから、閉店につながたのかも知れない。


でも、僕は、欲しい本があったら書店で買いたい。


1月だったか、2月だったか忘れたけれど、杉山大二郎先生の「大江戸かあるて」の新刊が出版社の在庫の問題だかで並んでいなかった。


僕は、店長に


「私は、Amazonより出来れば書店で買いたいので、入荷の予定はないですか」


と、無理に頼んだ。


その時は、店長さんは、「在庫の問題」を理由に詫びられたのだが、後日、きっちりと平置きして下さっていた。


このエピソードの詳細は、以前書いたので詳しくは書かない。


こんな、客の要望をしっかり聞いて、それを棚に並べるソムリエのような書店は貴重だ。


閉店してしまうのがホントに残念だ。




今日、最終日だったからね、ちゃんと行って来た。僕は、シャイでちょっぴりお茶目なだけで、本来は人見知りだから、店長さんにお礼こそ述べなかったが、この書店との別れの時間を……ご迷惑にも二時間ばかり物色し、最後の一冊を選んだ。


探して回ったわけではなかったが、


「え⁉ この先生、小説も書いてるんだ!」


と、今更ながらに驚いて手に取った。


この書店で最後に買った本は、”人は生きて死んで最後に何が残るのか。人生をかけた最後の旅”のお話。


北川悦吏子先生(脚本家)「生きとし生けるもの」だった。


積読多いから、ドラマ放送よりあとに読むことになるかもしれないが、本との出会いって、偶然……、それとも、必然。人と人が出会うべくして出会うように、その時に、何かの御縁で引き合うのね。



この書店は僕にとって、たくさんの先生に出会わせてくれる学校だった。


”ありがとう さようなら”


〈了〉

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