2-2

「お疲れ様です」


 今日も今日とて暇だった。

 商店街に面していながら少しさびれたこの場所はやはり近くに大型店舗が出来たのが大きいのだろう。

 それでも昔からの人は買ってくれるし、煙草を買いに来る土方姿の兄ちゃんもお爺さんもちらほらいた。

 買い忘れた調味料や便利道具なんかもあるから主婦たちも訪れて安心した顔で帰る。

 俺はそこまで話せるわけじゃないけど御影さんのおかげで顔を覚えてもらえて少しくらいなら会話が出来た。今思うと信じられない。


「受け入れられたんだよ」


 と御影さんは言った。

 どうなんだろう。


 御影さんは親が残したこの店を守りたくて一人できりもみしていたようだった。


 ◇


 帰り道、夕暮れと夜の闇が交差する時間に人気もない街頭だけがある道を歩く。

 まるで夢の中だと思った。

 音もない道の中で街頭の傍に影が見えた気がした。

 猫なのかなんなのか、 あまり興味がなかった俺は音を出していないイヤホンを付け直して家に帰る。

 静寂が支配した。


 ◇


 しん、と静まった部屋は安心を与えてくれた。

 騒がしいのも好きではないし、テレビも嫌いだ。

 テレビの笑い声を聞く度に「お前も笑え」と言われている様な気がした。

 それからテレビは見ていない。


 天気なんかは関係ないし、ニュースも気にするほど関心はなかった。


 部屋着に着替え御影さんからもらった弁当を食べる。

 店には委託で弁当を売ることもある。

 意外に売れて帰りのサラリーマンなどが買って疲れた顔をして帰って行くのを何度か見た。


 半分食べたところで手が止まる。

 やっぱりだめだ。


 何故かある時から食欲がわかず、無理して食べると吐き気が酷くなった。

 一日で食べられる量はサンドイッチ一個。それが限界だった。


「ごめん、御影さん」


 残った弁当をゴミ箱に捨てて少し悲しい気持ちになる。


「痩せすぎだよあんたは。これ食って多少は太りな」


 そう言って渡してくれたのだけどその恩に報いることができないことにやるせなさを感じた。


 薬を飲んで寝よう。

 そう思って軽くシャワーを浴びてドライヤーもかけずに布団に入った。


「今日も夢が観れるといいね」


 そんな言葉がどこからかこだました。




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