01-03

家に着くとしんとした静けさが部屋を支配した。

外の喧騒や5時を知らせるサイレンもとっくに流れ人々はこれから迎える準備をするために家で家事をしていることだろう。


冷蔵庫に入れているペットボトルの茶を取り出し一口飲む。

冷たさが喉を通り体の中に進んでいく感覚がわかる。



幸せを見ると自分の状況を俯瞰的に見てしまう。

いつだったか俺に懐いてくれた女の子は俺が言う言葉に安心を覚えてくれていた。



「もし、相手に大丈夫? とか心配の言葉を投げかけられたくなかったら」


「大丈夫なんて答えちゃいけないんんだよ」


多分、いつだったか思い出せないけど彼女は俺の言葉に救いを求めていたのかもしれない。

俺は努めて柔らかい笑みを浮かべながらそう答えた。


彼女の瞳を見つめられなかった俺は外にある木々の揺らぎや穏やかな風の音、それに意識を持っていかれそうになる。

彼女は俺の抑揚のない他愛のない言葉を聞いてすこしうっすらとうとうとし始めた。


「眠いの?」


「うん、少し」


届いているかは別として彼女は何かから逃げていたように思える。

沈黙を苦にしないところは好感が持てるし俺は彼女を邪魔だとは思えなかった。


「先輩はさ」


「うん」


「そんなこと言われたらどうこたえるかな?」


俺は少し考えてから木の向こうに見える川や窓からすっと入ってくる風を感じた。


「さぁ? 考えたこともないな」


「うそでしょ」


「いや、嘘じゃないよ」


きっと考えてない。 考えることも阿ることも考えてない。

だって、飲み込まれそうな気がするから。



スマホの画面をしばらく眺めてなんとなく眠ることにした。

薬を飲んで思いめぐらす。


幸せ

思慮

真っ暗な道と街頭

揺れる木々


それからすっと眠りについた。




「今日の死んだ人の名前」


急に見せられた紙を見るとぐしゃぐしゃで読めはしないけど知り合いの名前があった。

幼いころにやさしくしてくれた人。

冒険家のようなような大胆さもあって俺は彼のことはよく思っていた。

その後、婆ちゃんの笑顔が見えた。


ああ、夢なんだ。


俺が気付いた時にはあたりは暗く、街灯が等間隔で道を照らしていた。


俺は当てもなく歩いてこの道に終わりがあるのかと考えた。


また少女がたっていた。無表情で俺を見つめる彼女の眼は黒く吸い込まれるような深さがあった。


「こんばんは」


そう声をかけると少しぎょっとしたような顔をして俺を見た。


「見えるんだ」


「うん、夢だと自覚してからは」


「そう」


彼女はさみしそうに俯いてそこから口は利かなくんった。


そんな彼女をしり目に俺はまた歩き出す。

そろそろ覚めるころだ。



また、体が浮き上がりそして硬直した。

そして部屋に見えるのはまた神を名乗った子。

既視感がある。


「君は?」


「死神」



翌日起きるとお袋から連絡が来ていた。


夢で見た知り合いが亡くなったと。

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