第6話 冒険者として少し頑張る

冒険者登録を無事に済ませた俺は、早速依頼を受けてみる事にした。


まずは、簡単な薬草摘みの依頼を受ける。

薬草の絵を見せてもらい、特徴を覚えた。


いや~楽しみだな。

わくわくしながら、森に入っていく。


周りを見渡してみるが、全部おなじ草に見える。

んん、おかしいな?


それから、1時間。

俺は、ありとあらゆる所を探した。

木の影から、岩の隙間、水辺や崖の上など、徹底的に探した。

俺は、気付いた。

この世界の一般人にとっては、簡単な薬草摘みだが、知識がない俺にとっては、魔神と戦うくらい難しいと言うことに。


全然見つからない。

よく見かける薬草だと聞いていたのに。


更に1時間。

最初から、こんなに躓くなんて。

心が折れる音がする。


大分、森の奥に入ってしまった。

仕方なく、帰ろうかとした時、ギルドで見せてもらった、図鑑に載っていた薬草を見つけた。


俺の探していた薬草じゃないが、持って帰れば、少しは稼ぎになるかもしれない。


・・・なんて、名前だったかな?

名前も覚えてない。


とりあえず、摘んでいこう。

俺は、薬草を夢中でつんでいった。

洞窟の入り口付近に、沢山生えていたが、洞窟の中には、更に沢山生えている。


無我夢中で、摘んでいると背負っていた皮の鞄が、一杯になった。

ようやく我に返った俺は、辺りを見回してみた。


どうやら、知らず知らず洞窟の中に入ってきてしまったようだ。



すらぁ~~


すらぁ、すらぁ、すらぁ~


なんだ、変な声がするぞ。

後ろを振り返ると、三匹のスライム。


スライムくらい、簡単に倒せると剣を構えると、斬りかかる。


あれ?


全然、切れないぞ!


すらっ!!!!すらっらっ!


それでも、痛かったのか、スライム達は怒りだした。


どうやら、弱体化呪いアイテムや自分自身に呪いを掛けたりしたせいで、ちょっと弱くなりすぎたみたいだ。

首もとから、指輪がじゃらじゃらついたネックレスを取り出す。


え~と、どれを取ればいいんだ?

あれ、絡まってる、じゃあ足のやつを・・・


ズボンを捲ると、足首にアンクレットのように着けた腕輪が出てくる。

目立つから、足につけといた。


うぐぐぐ


腕輪を、無理矢理足に着けたから、そもそも抜けにくいのに、焦ってなかなか抜けない。


その間に、スライム達は臨戦態勢を整えている。

今にも、溶解液を吐き出しそうだ。


どうしよ!もう、全部取るか?

でも、そうするとこの洞窟がぶっ飛ぶかもしれないし。


「何をしてる!」


急に聞こえた大声に、ビクッとなる。

誰だ?


ズバッ


剣を振り抜く音ともに、スライム達は、光の粒子となって消えていった。


「ここは、ダンジョンの中だぞ、そんな軽装で、武器も持たず、死にたいのか?」


「ダンジョン?!」


ここは洞窟ではなくて、ダンジョンらしい。


「そうだ。しかもここは第2層だ。多分、一人で出ようとしたら死ぬぞ」


いつの間に・・・


「なんの装備も、実力もなく、どうやってここまで無事だったんだ?」


「薬草を取っていたて、気付いたらここに。」


俺にも、どうして来れたのか分からない。


「どんな、薬草を取っていたんだ?」


「これです。」


俺は、リュックから薬草を、取り出す。


「・・・・あ~、これな。これは人の血液を好む薬草で、死体とかに群生するんだ。少し体力を回復する効果があるけど、同じような効果の

薬草があるから、そっちの方が主に使われるんだよ。・・・嫌だろ、死体の上に生えてた薬草を使った薬飲むの。」


確かに・・・

それじゃあ、俺の今日1日は、全て無駄だったと言うことか?


「そんなぁ~」


「ま、まぁあれだ、死体の上を移動してたから、匂いや気配が紛れて、ここまで無事に来れたんだろう。初心者が、五体満足なだけで、ラッキーだぜ。」


「そ、そうですよね。」


「俺の名前は、ダルカンだ。丁度、あらかた探索が終わったんで、地上に戻ろうとしてた。よかったら、一緒にくるか?」


「僕は、リョウです。ありがとうございます!」


ダルカンさんは、髭の大男だが、とても優しい人のようだ。


「にしても、お前何にも知らないんだな。普通は、どこかのパーティーに入れてもらったり、先輩冒険者に教えを請うものだが。」


「そうなんですか。知り合いもいなかったので、取り敢えず一番簡単そうな依頼を受けてみとんですが。僕には、難しかったです。誰か、教えてくれる人がいないか、ギルド受付の方に聞いてみます。」



あんまり、お金持ってないけど、やっぱり教えてもらうには、お金が必要なのかなー

冒険者としてやっていく自信が、だんだんなくなってきた。


僕が、うつむきがちに歩いていると、ダルカンさんが、話しかけてきた。


「リョウ、お前がいいなら、俺が教えようか?これでも一応、Aランクなんだぜ。」


「ええっ!良いんですか?・・・あの、不躾ですけど、いくらぐらいになりますか?あまり、持ち合わせがないんです。」


「金なんて、いらねぇよ。お前が、俺の息子に似てるから、ほっとけないんだよ。」


まじか、それは有難い申し出だ。

ここは、素直にお願いすることにしよう。


「よろしくお願いします。」


どうやら、良い師匠に出会えたみたいだ。


その後、何回か魔物に襲われたが、ダルカンさんが危なげなく倒してくれた。

たどり着いたダンジョンの入り口は、僕が入ってきた入口と違うようだ。

きちんと管理され、常駐しているギルド職員もいる。

ダルカンさんに話すと、希に思いもよらない所に、入り口が開く事があるらしい。

ギルドに、場所を報告して、対処してもらう事になった。













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