第5話side、王女

我が国を象徴する神獣、白龍である、エルハイド様が居なくなったと報告があったのは、夜遅くの事だった。


はるか昔、初代の皇帝が、エルハイド様にお願いして発動してもらった、帝国を守る結界に異常はなく、気づくのが遅れてしまった。



初代は、手記を残しており、エルハイド様は、気ままな所があるので、居なくなっても探したりせず待つように書いてあった。


気が済むまで遊んだら、必ず一度は挨拶に来る、その時に文句を言いなさいと記述がある。


近年、魔王の復活等、異常事態が次々起きている。

人間には、手に負えない事態が多く。

各地で、多くの人々が死んでいる。


まさか、私の生きている間に、エルハイド様が目覚めるとは、思ってもいなかった。

この際だから、エルハイド様に、ご報告し、相談したい。


数日前、聖女様が、勇者を召還し、魔王を倒すようにと、神からのお告げを受けた。


我が皇帝は、神のお告げを信じ、古より伝わる禁術、勇者の召還を行う事に決めた。

それは、勇者の適性がある者を、異世界より転移させる魔法。

その人が、もともとしていた生活や、親しい人を強制的に捨てさせ、人間兵器に仕立て上げる。


エルハイド様は、お許しになるだろうか?


初代国王が描かせた、エルハイド様の肖像画を見ながらため息をつく。

私は、年頃になっても、男性に興味が湧かない。

父や母には、それとなく有力貴族の令息や、他国の王族を進められるが、理由は、はっきり分かっている。

私は、エルハイド様の肖像画に幼い頃から、恋をしているのだ。



早く、実際に会って話がしてみたい。

きっと、美しい容姿に見合った、高貴な人柄と不思議な雰囲気の方だろう。


そんなお方から、嫌われたくはない。

せめて勇者達には、不自由な思いをさせないように、最善を尽くそうと心に誓った。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る