第4話町で暮らしてみる

ここは、王宮城下の大衆食堂。


「リョウ、今度はこっちを手伝ってくれ。」


「は~い、分かりました。」


昼飯時のこの時間、次から次へと注文が入る。

俺のいる厨房も大忙しだ。



・・・あの後、勢いよく城を飛びだした俺だったが、早速路頭に迷った。

なぜなら、お金を持ってくるのを忘れていたからだ。

無一文の俺は、宿を取ることも出来ず、食事は取らなくても死なないが、久しぶりに何か食べたかった。


一人広場のベンチで呆然としていた俺を、助けてくれたのが、この店のオヤジさんだ。

心配して、声を掛けてくれ、後払いでいいからと、食事をさせてくれた。

行く宛も、身寄りも無い事を話すと、丁度空きが出たという事で、雇ってくれる事になった。

感謝してもしきれない。

いつか、必ず恩返しをすると心に誓った。




・・・忙しい時間が続き、ヘトヘトになった頃、ようやく客足が引き始めた。


「リョウ、そろそろ休憩してくれ。賄いも作っておいたから、テーブルに出しておいたぞ。」


「ありがとうございます。休憩いただきます。」


これから、夜の部にむけて、しばしの休憩だ。

毎日、凄く充実している。


客席の片隅に、用意されていた食事を見る。


「こ、これは!!ラーメン!」


先日、朧気な記憶を頼りに、オヤジさんに作り方を話した事があった。

雑談半分だったのに、まさか、この異世界で食べられるなんて!


ずずずっ


「んまぃ!」


何百年ぶりだろう。

箸が止まらない。オヤジさんは天才だ。


「お、食べてみたか。どうだ?リョウの言っていた東の国の麺料理に近いか?」


「すごいです!ほぼそのままですよ。」


「そうか、なら明日から昼食メニューで出してみるかな」



俺は、スープまで、全部飲み干し、一息ついた。

これで、午後からも頑張れそうだ。




夜、仕事を終えて、帰宅する。

当たり前の毎日が、新鮮に感じる。


人に混じって暮らすなんて、久々だ。


俺は、江戸時代の長屋のような住居を借りている。

最初は、オヤジさんの、家でお世話になっていたが、ある程度お金が貯まると、この家を借りた。

狭いけど、清潔にしていれば、住み心地は良い。



そんな毎日が、続いていき、俺は町の人とも大分打ち解ける事が出来た。


ずっと、食堂で働いていようと思っていたが、以前から興味のあった冒険者になってみようと思った。


力を押さえたこの状態で、どこまで楽しめるのか。わくわくする。


オヤジさん、奥さん、娘さんの三人に、俺のウロコを使ったブレスレットをプレゼントした。

このブレスレットをしていれば、中位の魔物までには、襲われない。


高位になると、襲ってくる奴もいるが、悪意のある攻撃は防ぐ魔法がかかっている。

また、幸運アップ、金運アップ、健康運アップ等のお守り要素をいっぱい詰め込んでおいた。


三人は、喜んでくれて、早速着けてくれた。

オヤジさんは、また困ったら俺の所に来いと言ってくれた。





その後、冒険者ギルドに足を向けた。


カランカラン


扉を開けると、屈強な男達にじろりと見られる。

緊張する。

この世界に来てから、何気に、はじめてのギルドだ。


受付のお姉さんに、説明を受けた。


冒険者は上から、S、A、B、C、Dランクに別れており、一つ上のランクの依頼までは受けられる。何度も依頼を受け、実績を積んだ上で、昇格試験を受けて、上のランクになる。

ギルドの最上位には、SSランクもあるらしいが、SSランクだけは、昇格試験が存在せず、ギルド長の推薦によるもだ。

現在4人のSSランクがギルドにいるが、4人とも一人で炎竜を倒せる程の実力があるらしい。

・・・なにそれ、怖い。


とにかく、俺は一番最初のCランクから始める事になった。























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る