間奏2‥

兄は音楽が好きな人でした。

ギターの弦から響く音は優しくて暖かくて

琴線に触れてくるようなそんな音

それが私には自分を落ち着かせる唯一の手段でした。

反対に、私の絵は暖かさが欠けていました。

見ていると空気が出ていって息がくるしくなるそうです。

兄と私の芸術は根本的にどこかが違いました。

ある日10年ぶりに兄のギターを手に取りました。

兄の手の形、楽譜の中で踊るコード、

生まれて初めて見よう見まねでギターに触れました。

寂しくなったわけでもない、辛いわけでもありません。

ただ兄の真似をしたらなにかが、変わると信じたかったんだと思います。

兄が側にいる心地がするのではって思ったんです。

一音。

そう たったの一音、

弾いた瞬間に息が凍るような心地がしました。

兄の作った曲、お兄ちゃんが弾いた曲なのに、

いっさいの間違いのない正解のはずの音はーーーーー



「空気も時間もない箱庭の中みたいだね。」

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雪を描く空 菱海蒼翔 @Hasumi_kyou

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