第18話 平和と明兎

 ネオンとアイナとレイナに出会った数ヶ月後。

 明兎は先生がもう少し必要だと感じた。

 だが、この地にいる中学生は少ない。殆どが小学生だ。

 そこで思いついたのが、自分が居た前の世界の人をランダムに連れてくることだった。

 条件が良ければ連れてきた後にすんなりと協力してくれると思った。


 早速魔法陣を使い、前の世界の人を連れてきた。

 その人が持ってる手帳みたいなのを見てみたら「菜乃 平和」と書かれていた。

 魔法陣は正常に起動したようだ。

 地球の住人だろう。つまり能力はない...


 と思った。


 彼女はまだ寝ている。

 だから能力を魔道具で授けて、起きた時に更に協力してくれる可能性を作ろうと思った。

 だが、彼女に弾かれた。

 彼女は起きていないし、能力は無いはず。

 これは能力が無かったら能力を誰でも授ける事ができる魔道具のはずだ。

 なんだ。なぜなんだ。


 すかさず別の魔道具に切り替える。

 能力以外にも、その人自身の人生などが見ることが出来る魔道具だ。

 これを使うと精神を消費するので、使うつもりはなかったが、仕方なかった。


 名前|菜乃 平和

 年齢|13歳

 能力|――

 世界|現実の世界リアルワールド


 能力の欄が伏せ字...?

 現実の世界リアルワールド...??


 自分にも魔道具を使う。


 名前|貯個 明兎

 年齢|14歳

 能力|兎・ミント

 世界|地球アース


 やっぱり全く違う。

 地球と何かが違うのか...


「もしかしたら、別の世界の人を連れてきたかもしれない。」


 冷や汗で落ち着かない。

 すると平和が目を開けそうになった。

 平然を装って声を出す。


「おや、お目覚めになったんだね〜...平和さん。」

「...誰。」


 これが平和との最初の接触だった。


 ◯―――――◯


 一週間経って彼女を、ボクが彼女を呼び出した研究所から学校に向かわせた。


 数日経ったらボクの事を忘れさせて、更に数ヶ月後に学校の様子を先生として見てみよう。


 平和に忘れさせたこととか思い出させて、そして先生になる。

 ...少し引っかかるのは、平和の能力が不明なことだけど。


「...クリアちゃん?...と、その子は誰?」

「あの、先生。突然ですけど...この子、どうやら新しい生存者らしくて...」

「せ、生存者...?なんでこんな夜中に...というか、なんで―――」

「あの、ボクを匿ってくれませんか...?...実は、色々あるんです。先生ならわかりますかね...。」

「...!!なるほど、貴方はあのを知っているのね。」

「そうです、どうなっているのか気になって...あ。クリアちゃんは部屋に帰っててね〜。」

「あ、え...う、うん。」


 クリアが帰った後、平和に事情を説明して、先生にさせてもらった。

 そしてなんやかんやあって、今日はクリアの部屋に泊めさせてもらうことにした。

 明日、使われていない物置を掃除してボクの部屋にするらしい。


 寝る前にクリアと話して、寝具に横たわり、ボクは目を瞑った。

 クリアは本を読んでいたけど、きっとすぐ寝るだろう。

 もうすぐ意識も眠るであろう時に、声がした。


「本を持ちながら寝たら、本が潰れちゃうよ?クリア。」


 ボクのベットからギリギリ見えるクリアの姿の横に、人が立っていた。

 だけど、ボクは眠くて頭が回らなかったのか、そのまま意識をブラックアウトした。


 ◯―――――◯


「ミント先生...大丈夫かな。」


 リキハは翼を広げて空を飛んでいる。

 勿論雲の下だと雪に当たるので、雲の上まで上昇してから飛んでいるのだ。


「早く...早くあの悪魔を止めないと。」


 リキハは焦っていた。

 この世界はミントが祈って作られたように過去では見せられているが、実際にはエンアが作ったのだ。

 エンアがこの極寒の地を作り、踏み入れ、その1日後にミントが入った。

 そのため、ラクはミントが入った時と同じ時に極寒の地になったと勘違いしたのだろう。

 本当はエンアが黒幕だったのだ。


 テラニウムは、願いを祈り、それを叶えてもらった人が死亡、または願いを無かったことにすると願い事は無かったことになる。


 ラクは寒さを感じない悪魔なため、別に極寒の地になってもよかった。だが、『ある人』から極寒の地の犯人を仕留めてくれとお願いされた。

 ラクは別にどうでもよかったが、真面目に世界の過去を探り、ミントに行きついたのだ。


 そこから考察したらエンアにもたどり着けただろうが、ラクには仕事が溜まりすぎている。なので、考察しなくても良いと判断をしてしまったのだ。


「ついたッッ!!ここから急降下...」


ゴォォォォォという音と共にリキハは学校に落下する。

雪がクッションになるので、体を並行していれば最速で学校に落ちることが出来る。


ドサッ


「ふぅ...よし、ミントを探さないと!!」


リキハは急いで校舎内に入ったのだった。

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