第17話 明兎の過去

 ミント―――明兎には前世がある。

 彼女はテラニウムを使い、極寒の地にした犯人であった。


 彼女が小学校低学年の頃だろうか―――


「明兎ちゃーん!」

「...あ、エンアちゃん。」


 彼女には親友がいた。

 エンアという天使と悪魔のハーフの少女だ。


 彼女は、友達が居なかった明兎に気遣ってくれ、何度も声をかけてくれた。

 そして一緒に帰る度に、遊ぶ仲にもなった。

 だが


 そ の 幸 せ は す ぐ に 終 わ っ た 。


 エンアは中学2年生になった途端に姿を消した。

 先生に聞いてもわからない。

 校長にも聞いてみたがわからない。

 明兎はエンアの家を訪ねてみた。


 昨日、エンアに「嫌な予感がするの。だから、私の家の合鍵を預かってくれない?」

 そう言われて渡されたエンアの家の合鍵。


(エンアちゃん...こうなること、解っててボクに鍵を渡したのかな。)


 そう思ってもエンアは居ないので、聞くことは叶わない。

 明兎の家から4分でエンアの家に着く。

 インターホンを押しても返事は無い。


「エンアちゃん、家入るよ。」


 一応断ってから入っておく。

 勿論返事は無いが。


「う...薄暗い...ね。」


 中は電気がついておらず、外からの微かな明かりのお陰で少しだけ内装が見えていた。

 エンアの家を探索していると、家族写真らしきものが落ちていた。

 左に悪魔、右に天使、真ん中にエンアが居た。

 きっと悪魔と天使はエンアの親だろう。

 写真を落ちる前に在ったであろう元の位置に戻す。

 すると、ガシャンという音が聞こえた。


「な...なんの音?」


 音がした方向に向かう。

 その場所は、リビングの端だった。

 地下へ続く梯子が付いており、その先は少し明るい。


(怖い...けど、あの写真立てを仕掛けにするなんて...何かあるのかな。)


 梯子を降りてみる。あまり古びた様子はないが、人が往復したような跡がある。


(きっとエンアちゃんの親が使ってたんだろうね...)


 意外と梯子は長く、1分ほど降りた後、地下室についた。

 そこには、キラキラと光る水色と白色が混ざりきっていない色の宝石があった。


「何...これ?」


 そう言いながらその宝石の隣りにある紙を見ると、説明書のような物があった。


『テラニウムの説明』

 これを持っている者が強い願い事をすると、願いが叶う。

 だが論理的に不可能な物は難しく、精神をひどく消費する。

 1年に1回のみ使える。


『使用記録』

 世界大戦を止めたい

 友達が欲しい

 争いのない世界に行きたい


 明兎はこれを見て驚いた。

 エンアの家にこんな宝石があるなんて思いもしなかったのだ。


「...願い事が...叶う。」


(エンアちゃんにまた会いたい)


 そう願いながらテラニウムに近づく。

 宝石は願いを聞き届けたのか、光った。

 地下室全体に光が溢れた。


 光が収まったときには、明兎の姿は地下室に無かった。


 ❆―――――❆


「ここ...どこ?」


 明兎は目が醒めたとき、辺に広がる銀色の雪が目に入った。

 彼女は兎だから雪の寒さは無い。

 確か悪魔や超越者なども寒さは無かっただろう。

 だが、その寒さ体制が無い者は防寒具を着ていなければ寒さで凍え死んでしまうのではないか。

 それほどの激しい雪が降り注いでいた。


 ❆―――――❆


 あのテラニウムで謎の極寒の地に来た日から2ヶ月が経過した。

 半壊していた学校を修理し、自分の家にした。

 そして、この世界の歴史が学校の図書室にあった。

 明兎が来た日から極寒の地になったという。


(そういえば「エンアちゃんにまた会いたい」って願ったらこうなったんだよね。...ここにエンアちゃんがいるのかな...)


「あの...っ。泊めさせてください...」


 急に話しかけられて驚いた。

 振り向くと、自分より年上の見た目をした少年一人と少女二人がいた。


(あれ、一応人は生きてたのか。)


「僕はネオン。こっちがアイナとレイナです。」

「そう。僕は明兎ミント。よろしく。」


 こっちの世界はどうやら名前はカタカナのようだ。


(ボクは他にも人がいるなら匿っていきたい。

 きっとその中にエンアちゃんがいるだろう。)


 ここからミントの学校保護計画が始まったのだった―――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る