第12話 転移の開始

 リキハは煽ってきた人に目線をゆっくり向ける。

 そこには、自分より身長が高そうな、気が強そうな男子だ。

 水色と青色の中間の色。緑色の服。

 隣には気弱そうな彼の双子の妹。


五十里いかりさんですか。」

「あぁそうだよ?って、お前ネーミングセンスほんっとーになさすぎだろ!!」


 そういって彼は大笑いする。その横で、妹の李恢りかいさんは申し訳無さそうな顔をしていた。


「どこが悪いの、それなら氷鬼だってそのままじゃないの?」

「あれは漢字だから格好いいんだよ!w」

「じゃあ転移鬼...」

「あーそれ氷鬼のパクリじゃんねww」

「はぁ...そこまで言うならあなたが命名してくださいよ。」

「えー制作者お前が作ったほうがいいよな?w」


 この人、喋ってるだけで辛くさせてくる。

 やりずらい。こういう人苦手なんだよなぁ...。


「あ〜...緋那あかなさんごめん、この質問に答えられなくて。」

「いや!全然大丈夫!!」

「ありがとう...」


「...けほっけほっ」

「あっ、李恢、大丈夫か?」

「うー...他の人に迷惑させないで...」

「わかった。」


 確か、李恢さんは優しい性格で、兄を唯一怒らせずに注意ができる存在だ。李恢さんのお陰で何人の初心者先生が助かったのだろうか...。

 そして、怒らせずに注意できる理由は、五十里が極度のシスコンだからだ。

 怒る理由も、李恢のがすごいと思っているからだとなった。


 それがあまりにも純粋(まぁ煽っている時点でそこだけは純粋ではない)すぎて、リキハは許したく...


「...いや、普通に許せないけどね...じゃあ他に質問無いよね?」


 そう聞いて誰も居なかった。

 誰をワープさせようかな〜...


 あ、最後の一人はこの人にしよう。


 ♤―――――♤


僕はニコーン...

学校の3階の教室にワープされてビビっている11歳です。


「えっ...ぼ、僕が!?嘘...」


だけど、こういう逃げる系は得意だ。

能力が氷だから、足止めができるし、滑らせたり、氷の上で追いかけられたらこっちは滑らないので絶対的有利。

そういえば、リキハさんのトランプが僕についてきてくれるって言ってた気が...


『ニコーンさん、はじめまして。』

「あ、このトランプかな?」

『そうです。あなたは、防御ディフェンス攻撃アタック妨害ヒンダができますが、味方へのバフは弱い。そのため、補助サポート型のウチ...がつけられました。』

「なるほど〜案外バランスとかそういうのしっかり考えてくれてるんだ。いいねそのやりかた。」

『よろしくお願いします。敬語外してもいいですか。』

「急だね、というかラフに話してくれたほうが嬉しいんだけど...」

『ありがとね、ウチ堅苦しいの嫌なんよなぁ。』

「僕もだね。」

『なんか、ニコーンさんとは気が合いそうやわ。』

「そだね〜。これから仲良くしよう。」

『もちろん、ウチも最初からそのつもりやし。』

「あ、ちょっと聞きたいことが沢山あるんだけど...いい?」

『ええで〜。ダチならしっかり話しきかなあかんってリキハ言うとったわ。』


「じゃあまず一個目。味方ってどこに居て誰だかわかる?」

『わからへんわ。そこはあってみんとな...。』

「じゃあ二個目。スペードさんの技は?」

『攻撃UP、防御UP、速度UP、攻撃速度UP、防御速度UP、回避率UPの6つや。』

「なるほど...めっちゃおもしろそうだね。」


♢―――――♢


え...


「もしかして...私、ワープされたの?」


...嘘...でしょ。


「...お兄ちゃん大丈夫かな。」


よりにもよって、私だなんて。


『よぉ娘、はじめましてだな!』

「あ...は、はじめまして!李恢です!!」

『お、やはり李恢殿ですな!我はと申しますぞ。李恢殿についていくトランプで、防御ディフェンスが得意なのである。』

「私は攻撃アタック補助サポート妨害ヒンダだけが得意なの、よかった...!」

『といっても、我は知っているのだ。他の人も二人人とトランプで欠点を補い合えるということをな。』

「そうなの!?教え...けほっけほっ...」

『ぬ、大丈夫か娘よ。』

「う、うん大丈夫。体が弱くて咳をしちゃうのはよくあるし...」

『...我が補助サポートが大得意なら...』

「いや、大丈夫。たとえんだろうと、私は我慢強いからこのくらい平気よ。」

『そ...そうか。』

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