第7話 平和の先生
菜乃 平和...それが私の本名と名前。
よく考えたら、カタカナの名前ばかりの世界に、漢字の名前を付けたやつがいるのか、と思われたら何も言えない。
―――――だって、私はこの世界の住人じゃないから。
私はリアルワールド...現実の世界という場所に居た。
モンスターもいたけど、同級生や先輩と倒して、一緒に皆で生きてた。
―――――はずだった。
だけどある日、気がついたら知らない場所で、知らないベットの上で寝ていた。
「おや、お目覚めになったんだね〜...平和さん。」
「...誰。」
「そんなに警戒しないでくださいよ〜...ただ、強力な貴方に協力してほしかったんです。キョウリョクだけに!」
「...帰って良い?」
「あ〜まって〜!ボクの実験台になってるんだから!!」
「...実験台...??」
彼...じゃない、彼女の名前はミント。研究員らしく、肉体にも学力にも強い私を召喚し、協力を依頼してきた。
チョコミントを美味しくしたいだとか、全国民チョコミントファン化計画だとか、くだらないことを目論んでいたが、彼女は頭が良く、逃げようとした私を操った。
「もうすでに
「いつのまに...」
「まぁまぁ〜細かいことでしょ!」
「私にとっては細かくないけど?」
このままじゃ、何されるかわかったもんじゃない。私に拒否権は無いのだから。
そう思った途端、突然...学校の先生をやって欲しいと言ってきた。
「学校の先生...?」
「そうだ。学力に優れてるんだろ?出来るはずだよ。」
「なんで...?あと、何年生相手...?」
「うーん...何年生...小1から中1。キミは中1だから、ギリ行けるよね。」
「そうなんだ...というか、私...元の世界でやることあるし、色々やることある...。」
「あぁ、大丈夫だよ。今、向こうの世界の時を止めているからね。」
「...なるほど。」
更に、彼女は他にも私を呼び出した理由があると言った。
「―――――というわけなんだ。」
「なるほど、テラニウムね。」
「このテラニウム、驚くことに、大人を子供にすることも出来てしまう。更に、子供に若返ったら、その年の記憶しか脳内に入らない。...あと、雪を大量に降らすことも、雨を大量に降らすことも出来る。...そのせいで外の世界はおかしいことになっている。」
「具体的にどういう感じ?」
「雪が周りが見えないほど降っていて、木も枯れ、草も枯れ、氷の湖が出来たりしている。おまけに子供化して凍え死ぬやつもいる。だから、学校を作って、そこで子供化した大人たち、元々子供の奴らもまとめて匿いながら勉強を教えるんだ。」
「なるほど...わかった、協力する。」
「まぁ、協力しなかったら強制的にやらせてるんだけどね〜。」
「怖。」
だが、彼女は高待遇を用意してくれた。
暖かいベットや、毎日朝昼晩の食べ物をくれるし、これも悪くはないと思った。
ふとした時に、友達のことを想ってしまうが、出来るだけ気にしないようにした。
1日目(学校まであと6日)
「そういえば、貴方の名前は?」
「ボク〜?ミントっていうんだよ〜!!正確には、
「なるほど...」
2日目(学校まであと5日)
「あなたはこの世界を救いたいってことなの?」
「うん。あ、言うの忘れてたけど、あと5日で
「コミュ障...だけど、いいの?」
「でもキミ、ボクと話す時全く動じてなかったじゃん。」
「あ...」
「なら行けるでしょ。どうせ向こうの世界でコミュ障名乗って人を避けてたってことなんだから。」
「...」
「じゃあまた明日〜。」
まるで心を見透かされていたようで、気味が悪い。
その日は明日学校に行くからか、心を見透かされたような感覚のせいか、良く寝れなかった気がする。
3日目(学校まであと4日)
「そういえば、食料はどこから持ってきてるの?」
「簡単だよ、キミを連れてきた時と同じように、召喚してるんだ。まぁ、1日に100個が限界だけど...」
「十分すぎるよ?」
4日目(学校まであと3日)
「ちなみに、学校はどういう建物?」
「ここに書いてある。1階2階3階と屋上があり、屋上には小部屋とかがある。1階には学校の教室があり、2階には音楽室やら理科室やら美術室やら...まぁ、学校の部屋であるやつは大体再現している。そして別棟。こっちは生活の棟で、寝室が十数個あり、先生用の部屋もある。2階は食堂で、広めの
「なるほど、ありがとう。」
「え、もういいの?他にも細かく説明したいんだけど...」
「ううん私、説明書は適当に目を通してから、実践するタイプだから。」
「なにその中途半端なタイプ...」
5日目(学校まであと2日)
「あと2日だよ!!平和ァ!!」
「あっそうなんだ。なんか緊張してきた。」
「それにしてはリラックスしてるね?」
「緊張してきて逆にリラックスしてきた。」
「なにそれw」
「...。」
「どうしたのさ、そんな落ち込んだ表情して。」
「友達のこと、思い出してた。」
「安心して。人手が足りなくなったら連れてくるよ。」
「...そう。」
6日目(学校まであと1日)
「...もうすぐ。」
「あれ、平和どうしたの、玄関前でうろちょろして。明日だよ?」
「あ...うん。...。」
やっぱり断りたかった。私に学校の先生なんて難しい。きっと私の器に入り切らないだろう。
そんな不安が心を支配していた。だって私は________
ただの罪人だから。
「あ、もしかして具合悪い〜?」
「別に。」
「お腹空かせたいとか?」
「だったら普通、廊下全力疾走するよ。」
「いや普通走らないよ!?」
7日目(学校の日)
「じゃあ、行くね。先生やれるかは心配だけど。」
「大丈夫だよ!キミならできる!...なんかボク、お母さんになったみたいだなぁ。」
「血繋がってないけど。」
「例えの話だよ〜!!」
「...じゃあね。」
「うん、ばいばーい!!」
私は防寒具に身を包み、歩き出す。
外の景色は窓から見てわかっていたが、とても強い勢いで雪が地面に落ちて行く。その雪は降り積もるり、足場を悪くするが、この世界の防寒具は熱を出す仕組みがあり、私の周りの雪は全て溶けていく。
だが、もちろん前が見えていないと困るため、顔だけが出ている。
「...寒い。」
寒い。
なぜこんなにも寒いのか私にはわからない。
ただただ友達のことを思えば思うほど冷たくなっていく事はわかっていた。
だけど、あのミント...彼女は、「人手が足りなくなったら連れてくるよ。」と言っていたが、私だけで物足りたら...と思うと、嫌になってくる。
それに、完全に私達を道具としか見ていないようだった。
まぁ、彼女の姿は完全に人間じゃなかった。
つまり、人間との感性は全く違うのだろう。
向こうは野生の世界を生きているのだから。
_____食うか食われるかの世界を。
「もうすぐ...かな?」
そろそろ足が疲れてきた。一週間も運動していなかったし、元々の世界でもあまり運動が好きじゃなかったからだ。
よく目を凝らせば、大きい建物らしき者があり、そこから漏れ出るような光が見える。
これが私の初日だった。
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