第6話 疑心と真実
「キャット、相談があるの。ここじゃ話せないから放課後一緒に話したい。」
クリアにそう言われて、放課後一緒に屋上の一室に来た。
「ここなら誰にも聞かれないね...。」
彼女は屋上の一室の窓から外をみる。
相変わらず雪がとても積もっている。
「クリア、何のようだ...?すごい深刻そうな顔だけど。」
「あ...うん、嫌な予感がしてて...そのことをキャットに話したいの。」
「...?先生達に聞かれたくないことか?」
「うん...」
彼女の顔はより深刻に変わってくる。
...先生に聞かれたくないことなら...
「...今は駄目だ。」
「え」
そういった後、すぐに小声で、
「...(ちょっとこっちに来い。)」と言った。
クリアは着いてきている事を音で確認しながら、更に後ろの気配を探る。
そこには...平和先生が俺と同じように耳を澄ましていた。
(今日、先生からの視線がすごかったのは、なにか怪しいことをクリアから言われているんじゃないかって気になってるんじゃないか。だとしたら、これは平和先生の隠し事につながることをクリアは知っていることになる...じゃあ、どこなら良いかというと。)
「ここにドアがある。」
「う、うん...」
「今からこれをぶっ壊す。」
「e!?」
「...っていうのは冗談で、このドアを開ける。」
「これ、どこに繋がっているの?」
「外。」
「???????????????」
そう、外だ。外は寒くて視界も悪いが、それを逆手に取る。
俺の能力は防御寄りの『春』の力だ。
「『
俺がそう唱えると、俺とクリアの周りを囲うように、桜の花びらが舞う。
「すごい...きれい...!」
「まぁな、本物じゃないが...んじゃあ行くか。」
「わかった。」
ギィイ...という音を立てて扉は開いた。
まだ平和先生は見ているだけの様子だ。
「じゃあ、行くか。この盾から出ないように気をつけろよ。」
「う、うん...」
外に一歩踏み出してみると、あたりは雪、雪、雪、雪...
でも、不思議と暖かいのは俺の
ここは屋上のままのため、行ける場所に限界がある。
...そのまま耳を澄ませてみると...
「!!?」
平和先生は、どうやら外にまで来たようだった。
驚いた...先生にも寒さを遮断する能力を持っていただなんてな...。
「クリア。」
「...えっと、ここで話すの?」
「わり、ちょっと目瞑っとけ。」
「...え?...こう?」
「すまねぇ、クリア...。ちょっと抱えて飛ぶぞ。」
「...ゑ????」
自分より一歳年上のクリアをお姫様抱っこして、俺は空を飛んだ。
「!?!?!?」
「目ェ閉じとけ、歯ァ食いしばっとけ、舌噛まねェよう注意しとくんだぞ!!」
そういうと、クリアは目を閉じて口も閉じて大人しくなった。
彼女は言われたことを疑問に抱いてもしっかりそれ通りに行動する純粋な少女だ。
動揺してもこう言えば落ち着くしな。
「ふぅ、着いた。」
「...ここは?」
「俺の空中部屋。」
「え」
「驚いただろ?お前にも隠し事してたんだよ。」
「び、びっくりした...ほんとね...でもすごいね...!?」
「まぁな〜。あの学校に行く前から作ってた秘密基地だ。クリアにはどこらへんにあるのか見られたくなかったから目閉じてもらうよう言ったんだよ。」
「なるほど...」
「...それで?どういうことを話したいんだ?」
「実はね、今日ミントっていう子紹介されたでしょ?」
「あぁ、あのボクっ娘か...」
「あの子、外にいたから学校に入れて先生のとこに連れて行ったのよ。そしたら先生とテラニウムだとか、研究だとか話し合ってて...怪しかった。」
「なるほど...んで、そいつ...ミントはその夜、どこで寝たんだ?」
「私の寝てる部屋。」
「...なーるほど。大体わかった。」
「え、わかったの?」
「クリア、お前が寝てる部屋は決まったメンバーしか入れないんだよ。なのにミントは入れている。それはミントを決まったメンバーにしているから。」
「決まったメンバー...?」
「ビットが男子組の部屋に入ろうとした時、ビリビリの網で入れなかっただろ?そのビリビリの網...それがテラニウムなんじゃねェかなってな。」
「な...なるほど...?」
「そのテラニウムの研究の事を話し合ってるんじゃねェかな。そして、平和先生は休み時間の度にクリアを追跡していたんだ。」
「えぇ...?視線は感じてたけど、ずっとマンカちゃんかと思ってた...」
「あー...あいつならやりかねねェな。...そして、なんで追跡していたかというと、昨日の話のことを言いふらすんじゃないかって見張ってたんじゃねェかな。」
「えぇ...そ、そうなの...?」
「というか、テラニウムの正体が何か、知りたくねェか?」
「...気になるね。ほんとね...」
「あぁ。そして部屋割りにそのテラニウムを何故使うのかも知りてェ...」
「今日の夜、先生の部屋に侵入してみる?」
「いいなァ、それ!よし、早速作戦会議だ!!」
その日の夜、俺とクリア、そして―――――ビットと一緒に先生の部屋に来ていた。
ビットは恐る恐るいう。
「...なんで俺?」
「そりゃあお前が一番信じてくれるかと思ったからだが?」
「うん、私もそう思った。」
「まーじかぁー...」
「じゃあ作戦通りに行ってくれ。...すまねぇな...痛いだろうに。」
「慣れてるから大丈夫だ。」
作戦はこうだ。
①ビットに怪我をさせて平和先生を保健室に誘導する。(ビット提案)
この時に軽い怪我だとすぐに戻られるから、出来るだけ重症にする。...できればやめてほしかったが、リスクとリターンがちょうど良かった...
②キャットとクリアが平和先生の部屋に入ってテラニウムのことの入った資料を探して速攻で読み、記憶する。メモ出来るならメモする。
③テラニウムが部屋にあったら、その欠片を持って帰る。
この時、粉々に砕いてしまわないようにする。
こういう作戦だ。一応すぐに戻って来られそうになったら、マンカに頼んで今日中に作り上げてもらった無線で伝えてもらえる。
無線を作ってくれたマンカに「感謝」と言ったらアヘ顔しながら踊り狂ってた。
「それで、ビット...どうやって重症を患うんだ?」
「それはな?階段から落ちるんだよ。」
「えぇ!?めっちゃ痛いよ?!やめておきなよ...!!」
「大丈夫だーって!リ◯カの代わりに何回も落ちて怪我して心配かけてもらう...それを繰り返してきたから。」
「それ、俺も初耳なんだけども...」
「とにかく、重症なってくるね〜」
ピューン
「...行っちまった...ビットに重症役やらせなきゃよかったな...」
「うん...でも行っちゃったからには無駄にしないようにしよ?」
「あぁ。」
―――――しばらくして―――――
無線からビットの声がした。
『平和先生、今呼ぶとこだよ。』
「わかった。保健室に入ったら無線は声じゃなくて、トントンと押して合図してくれ。」
『了解。』
「よし、あとは待つだけ...」
『平和先生...助けてくだ...ッ痛い...!』
『ビットさん...?ど、どうしたの?!』
『あの...トイレ行こうとして...寝ぼけて階段登って、引き返そうとしたらそのまま落ちちゃったんです...』
『そ、そうなんだ...保健室一緒に行きましょう?』
『は、はい...』
「あれ、切ってない...?」
「そ、そうなの?」
「あぁ、声が聞こえている。...このまま一応聞いておくか。」
『ところでビットさん、その耳につけてるものはなんですか?』
『え、えっと、これはですね。』
『...無線ですよね?』
「!?バレたッ!?」
「そ、相当やばいわよ...」
『い、いや無線ってなんですか?』
『声を別の場所に届けさせたり、別の場所から自分のとこに声が届く...機械ですよ?...マンカさんが作ってたのと良く似ています。』
『...』
『あのときは「お兄様の監視用ッ!邪魔しないで!!」と言われてましたが...貴方が依頼したんですね?』
『えっと...』
『ビット、貴方はなぜこんな事をしたのですか?そしてなんで無線を耳につけているんですか?』
『...』
「これは...」
「くっ、今のうちに平和先生の部屋に!!」
「え、大丈夫?」
「今これは時間を稼いでくれてるんだ。早く...!!」
「わ、わかった。」
ソーッ...
「よし、音無しでドアを開けれた...って、この部屋窓無くね?逃げ場ねーじゃん。」
「脱出通路として換気扇はあるよ。」
「えぇ...汚れたりしねぇ?」
「多分大丈夫。...雪が積もってるだろうけど。」
そんな会話をしながら、無線の方にも意識を飛ばす。
『...それよりも、保健室いきたいです...痛いので...』
『それもそうね、そっちでじっくり話したほうが良いわよね...』
ドンッ『イタァッ!!』
『だ、大丈夫!?』
『すみません...ちょっと転んでしまって...』
ちょうどいい感じに時間を稼いでくれている。早めに情報をもっと取らないと...
「ペラペラバラバラ...」
「ガタガタ...お、この引き出し、なにかありそうだな。ゴソゴソ...」
「キャットの見越した通り、あの電気の網はテラニウムによって作られたものらしいよ。...それどころか、他にも出来るらしい。」
「まじか...あと、こっちにもハンマーがあったから、テラニウムがあったらこれで慎重に叩いて...」
「それは無理らしい、テラニウムは衝撃に弱くて、割ったら半径50mの大爆発が起こっちゃうの...だから加工ができないのよ。」
「そうなのか...」
「ペラペラパラパラ...!?これは大収穫かもね...キャッt」
「まずい、平和先生が戻ってくるかもしれねェ!!しかも音を聞いたらかなりの速度!換気扇に逃げるぞ!」
「!!ok!」
「ふぅ...大丈夫かな?」
「シッ...」
「ビットくんは侵入ごっこしてたから、言いにくかったって言ってたね...じゃあ大丈夫かしら。」
「どうやらビットの方はしっかり誤魔化せたみてェだな。」
「よかったわね...」
「...そもそも、あの研究は私は反対なのだから、どうでも良いんだけどね...ねぇ、そこの換気扇にいるキャットさんとクリアさん?」
「!?」
「!!」
「なーんてね。そんな訳無いわよね...あの時見失っちゃった二人が作戦を考えて一番信用してくれるであろうビットを仲間として引き入れてるわけ無いわよね...?それで一時的にあの換気扇に閉じこもってるわけじゃ...いや、逃げる時間は十分にあったはずだし、ビットさんは嘘ついてなさそうだったし...」
「ただの独り言か...?」
「...そうっぽいわね。」
「寝ましょうかね〜...バタッすー...すー...」
「ベットに倒れた途端寝た!?」
「あ〜...確かに眠そうだったからな...多分限界まで起きてたんだろう。」
「なーるほど...」
「あと、ここからどうやって出るか?」
「それは...もう一つの出口に行くほか無いでしょ。」
「うげ...この虫がうじゃうじゃいるとこを?」
「虫は無視しなさい!」
「ダジャレじゃん。」
「...そういえば、ついさっき気になること言ってたよね...」
「誰が?」
「平和先生よ。「...そもそも、あの研究は私は反対なのだから、どうでも良いんだけどね...」って、言ってたじゃない。」
「確かに...?もしかしたら隠してくれてるのか?」
「それで私達が仲間として引き入れようとして、それが罠だったらどうするの?そうなったら皆殺されちゃうかもよ。」
「...なら、様子見が最善だな。」
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