みかんパスタ


 大学の友人からみかんを3つ貰った。



「貰い物だけど食べきれないから貰って!」



 そう言われてしまえば断ることはできない。みかんは大好きだから元々断る気もなかったが。



「やっぱみかんは炬燵だわ」



 柚子茶を淹れて、勉強机兼食卓である炬燵に足を突っ込んでみかんの皮を剥く。これぞ冬の風物詩だ。


 とはいえ、だ。貰ってしばらく時間が経っていたものなのか、実がジュクジュクし始めている。それに明日は燃えるゴミの収集日だ。皮は明日の朝捨ててしまいたい。


 1つは今そのまま食べてしまっているけれど、あと2つも消費したい。折角なら何か調理をしてみようか。


 みかんの調理なんてしたことがない。だけど前にどこかで見たものを再現することくらいならできるはず。


 今日他に消費してしまいたいものは、パスタかな。買うのが勿体なくてあまり食べないけれど、流石にそろそろ開封から時間が経っているし食べてしまいたい。



「キッチン行きたくねぇ」



 寒さに負ける気しかしなくて炬燵から出たくない。だけどみかんの皮の白いやつで汚れた手も洗わないと。



「しゃーない。よっこいしょ」



 重たい腰を上げて、お勝手に向かう。ドアに遮られた先のお勝手はやっぱり冷える。ひとまず手を洗うけれど、お湯が出ないのも身体に堪える。


 どうして料理をしようと思ってしまったのか。でも料理をしなければ食べるものが、無くはないけど満足できない。料理をしないとストレスが溜まるなら、やる他ない。


 まず部屋においてある電気ケトルでお湯を沸かす。俺が借りている部屋はコンロが1つ。電気ケトルは時短の心強い味方三銃士の1つだ。あとは電子レンジとトースター。トースターは意外と大事。魚焼きグリルのように肉も焼けるし魚も焼ける。


 話を戻そう。お湯を沸かしている間に材料の調達。みかんを使うなら塩気のあるものが欲しい。できれば生ハムとか、せめてベーコン。


 そう思いながら開けた冷蔵庫にはハムしかなかった。まあ、味付け次第で代用はできるはず。他には野菜も食べた方が良いか。健康志向をアピールせねば。


 今度は冷凍庫を開けて、予めスライスしてある玉ねぎ8分の1と、冷凍ほうれん草、株から引き抜いて冷凍しているしめじがあることを確認する。使わない分が解凍されないように小分けにしてある玉ねぎ以外は後で出す。


 しめじはしいたけとかエリンギとか他のきのこでも良いだろうけど、ちょうど切らしていた。しいたけもエリンギも切って冷凍すれば使い勝手が良いもの。今度買い足しておかないと。


 材料はどうにかなるな、と思ったとき電気ケトルがカチッと鳴った。さて、本格的に調理開始だ。


 電気ケトルからフライパンにお湯を移して、パスタ1人前分を半分に折ってお湯に投入。気持ちばかり、塩を3振りくらいとオリーブオイルをタラッと垂らす。指定の時間より1分短い時間でアラームをかけたら完了。


 パスタが茹で上がるまではすることがない。パスタが束にならないように時々菜箸でほぐすくらいだろうか。ハムを切る時間にしても良いけど、包丁は使わなくて良いなら使いたくない。


 パスタが茹で上がったらお湯を切る。多少残る程度ならこれから炒めるときに蒸発するから問題ない。


 パスタが入ったフライパンにオリーブオイルを引いて炒め始める。そこに玉ねぎと冷凍庫から引っ張り出したほうれん草、しめじを投入。ハムもちぎって入れる。


 凍っていたものが溶けて火が通ったら、火を弱める。そしてこいつの登場。



「テレレレッテレー、みかんー」



 某ロボットアニメよろしくみかんを取り出して、皮を剥く。今回は消費したいから2個。みかんに限らず、野菜の量もお好みで良いと思う。最後の味付けの量を味見しながら変えれば良いだけだから。食べるのは自分。美味しくなればオールオッケー。


 みかんに火を入れながら鶏ガラ出汁を入れて塩コショウで味を調える。塩味が強い方がみかんとの相性も良いだろうけど、高血圧には気を付けて。


 なにはともあれ、これで完成。


 お好みでお皿に盛る。俺は洗い物を増やしたくないからやらない。ちゃんと傷がついても大丈夫な古い方のフライパンで作っているから問題なし。本当は捨てるはずだったテフロンはげはげフライパンも役に立つ。


 炬燵に戻って最低限フライパンを傷つけないようにプラスチックのスプーンとフォークでいただく。甘みと塩味のバランスが美味い。これはリピート確定だな。


 みかんが手に入れば。


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