第10話
冬も本格的になってくると、ただでさえ数が少ない仕事がさらに少なくなり、
特に狩り組となっている輩は、冬場はお手上げという恰好でもあり、暖房費を少しでも浮かせる為、寒さを少しでも防ぐため、こういった酒場に集まって管を巻いているのが日常とでも言える状況である。
そういうのを眺めながら、今日も今日とて酒をあおる。
というか、昼間から飲む酒は旨い。
「お、やっぱおっさん此処にいたか、ちょっと頼まれ事してくんねーか?」
「……なんだおめぇ、藪から棒に」
「どうせ昼間っから飲んでるんだろ?いいじゃねーか」
フォーマルモノクルの獣人の奴が、酒場に顔を覗かせてきたかと思うと、まっすぐにこっちにやってきては開口一番そんなことを言いだした。
「……で、何だ?」
「ここでは何だ、移動しながらでいいか?」
「……かまわんが」
そうして、野郎に連れ出される格好で雪道を歩き出す。
厚着はしているが、やはり冷たい風によって顔が寒くなるのは変わらん。
「おっさんさ、いろいろと菓子作ってただろ?」
「……まぁ、そうだな」
思い当たるとしても、気晴らしにいろいろと作っていく中で、物から始まり薬品につながり、その薬品づくりのノウハウから料理に手を出していった。
特に菓子作りは薬品作りに似ていたから、色々と手がけてはいたな。
「今度、ボスの方に来客があってな、そこで出す持て成し用の何か無いかと言ってんだわ」
「……ふむ」
「それでよ、以前おっさんが余りもので作った菓子を持って来てたの思い出してな、ちょいと調べた」
「……なら、そのうちの何か作れと?」
「ま、そういうこった。報酬には高級酒もつけてやっからよ」
「……それを先に言え。まかせとけ」
こいつが持ってくる高級な酒はかなりの上物であるため期待ができる。
そうして、到着したのは街一番の豪邸ともいえる場所。
「お帰りなさいませ」という各人の挨拶に「おう、今帰った」という軽い返礼をしては、ずかずかと進んでいくモノクル獣人。
コイツ、曲がりなりにもこの街の代官という立場である。
実力を認められて領都に住んでいる貴族様からこの地を任されているという。
というか、その貴族様は実力主義の人の為、人選にひと悶着あったという事も、酒の席で聞いてはいる。
あと周りの奴らも、こいつの物理的な実力(この街で格闘技においては特級と呼ばれるオーガ神官とタメ張れる武術持ち)と本職(裁判官やらも兼用してる代官)という立場、さらに頭もキレる奴(頭脳戦もお手の物)と知られてもいる。
いうなれば、敵にしたら一番厄介な存在でもあるのだ。
ただ、気が合えば一緒に馬鹿するんだが、ほぼストレス発散の為ともいうが
「……なら、材料集めからだな」
「商業組合の
「……いや、それだと」
そういって連れ込まれた調理室には、いろいろと食材となるものが取り揃えられてあり、パット見た目でも果実から始まり、牛乳に卵、果てはココアパウダーまで……
「……って、パウダー?」
「
「……お前、出すモンほぼ決まってんじゃねーか」
「
「……ま、あれにはコツがあるからな」
そりゃそうだ、あれは温度管理がとても重要である。
その中で、どうやって混ぜるかも重要で、蜂蜜の固さも相まって結構シビアなんだぜ?
あと、玉軸受けが出来た時に作った遠心分離機で生成したクリームとかも使っている。
そう簡単に真似されてたまるか。
「という事で、あとは作る奴が必要ってわけだ。
「……なら、付ける具材を色々準備しとけ、あと材料が少し足りん」
「追加は
「……正直、何が合うかは調べきれとらんから、調べはそっちでしてくれ」
「ふむ、それはそうするか」
さて、チョコフォンデには拘りは一切いれないさ。
まぁ、合う具材はあいつに任せるとして、それ以外には拘ってもいいという事である!
ふっふっふっふ……あれから、お椀に入れたままだけじゃぁ物足りなかったなと、一定の温度以上に上がらないという失敗作の魔道
これまた在庫にある失敗作のチョロチョロとしが吐露しない魔道
この二つをくっつけてやれば……
失敗作で不良在庫として置いておいてあったが、ついに陽の目を見る時が来たな!
ふっふっふっふっ、面白くなりそうじゃぁないか。
その後、貴族の間に一大ムーブメントが起き、タワー型のフォンデ装置をひっきりなしに作る作業に冬季は忙殺された。
なお、フォンデレシピも
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