第9話
雪が降り積もり、口から吐くと息が常に白くなっている日、依頼品を袋と背負子に入れ込んでは外に出る。
目的地は街の一角にある一つの教会。
一応、この街にも教会がある、そして複数も。
それは、なぜなら多様な宗教があるからだ。
創造の女神様がトップで、次に武の神様と豊穣の女神様に、輪廻の神に、戦の女神に……あとは太陽の神とか月の女神に多種多様である。
とまあ、大きいものから小さいもの含めても多種多様に存在する。
その宗教の中の一つに、酒飲み仲間の神官オーガの奴がいる教会がある。
そこは、孤児院を併設しては慎ましく?生活していると言われている。
今日は、ソイツのところに頼まれものを持っていく用事で向かった。
「おや、こんな寒い日に貴方から訪れるとは……今晩は吹雪でもおきそうですね」
「……そうかそうか、コレはいらんのだな?」
「おお!よくぞいらっしゃいました!ささ、小汚い場所ですが、どうぞお入りください」
頼まれていた一つの果実系の酒瓶を、懐の袋から見せたとたんコレである。
通された先の聖堂に併設されている個室の棚には、宗教関連の本よりも酒瓶が多く、しかも小奇麗に並んでる時点でこの神官、お察しである。
生臭坊主……いや、生臭神官とでもいうのか?
"慎ましい"という言葉は、いったいどこに逃げ去っただろうのか。
それにしても……
「……今日はヤケに静かだな。ガキどもは?」
「今日は奉仕の日としまして、街の雪かきに赴いておりますよ」
「……ガキの方が慎ましく生きてんじゃねぇか。どこぞの生臭神官はどうなんだか」
「はてさて」
すっとぼけながらも、その視線はしっかりと酒瓶にひっついて離れない神官オーガ。
お前のその酒好きがなくなれば、見た目からして……いや、見た目も知らん奴からみたら、命を狩りとってきそうな凶悪な顔のために、身ぎれいになってなければ強盗と思われるだろうが。
「……ふーん、ならさっそく頑張ってるガキどもに、ご褒美の菓子でも作ってやるか」
「おお、それは素晴らしい事です。貴方の作られる菓子は一級品ですからね」
「……言っとけ。あと、その酒使うからな?」
「?!駄目ですよ?」
なに自分の背後に隠してんだ、この酒馬鹿オーガは。
菓子の香り付けに使うんだと強引に果実酒を奪い取っては、その背後から「そんな殺生な……」という悲観する言葉が聞こえてきたが、大の大人の神官様がそんな言葉を言う訳ないなと聞き流しては、台所を借り受けることにする。
途中、聖堂を通り過ぎるが、ごりっぱな女神像が鎮座しているが、その前を通りすぎるとき、「ちょっと台所借りるぜ」と通り過ぎておく。
ちょうど太陽が入り込んだのか、聖堂のステンドグラスが明るく輝いてもいた。
まぁ、美味しくできるかというより、好みに合うかはの神頼みのところもあるからな、縁起が良い事として受け取っておこう。
一通りの作業を行い、果実酒からアルコール分を飛ばした蜂蜜入りミルクチョコレートソースが出来始めたころガキどもが返ってきてた。
というか、甘い匂いにつられたのか、台所に群がっているのが見えていなくてもよくわかる。
「おっちゃん!何つくってんだ?」
「……ケーキみたいなもんだ」
「ケーキ!!」
「お菓子!!」
「やったぁ!」
「……ケーキじゃねぇ、ケーキみたいなもんだつってんだろ。もうすぐできるから、テーブルかたして来い」
「わかった!」
「みんな行くぞ!」
「「「はーい!」」」
あんな寒い中、ガキどもが頑張ってきてたからな、あったかい系統として考えたらこうなった。
ま、この前のパウダーが余っていたからともいうが、こうやって不良在庫にならずに済んだという訳だ。
そうしてできたのは、あったかいチョコレートソースをたっぷり付け食べる方法である。
各人の椀にソースをいれこんで、あとは各人で楽しんだらいい。
「何これー!」
「……チョコレートソースだな」
「え!こんなに?」
「ケーキもある!!」
「フルーツもあるよ!」
「……そいつらをだな、こうやってソースの中にぶっこんで」
食べ方をレクチャーするためにまずは自分から食べてみる。
うむ、甘すぎて口から吐き出しそうになる……
だが、ガキどもの視線が、すごい楽しそうな視線になっていて、ここは堪えどころであるとして耐える。口の中がつらい……
「……ほら、お前らもやってみろ」
「はい!!」「やった!!」
「少し待ってください」
「あ、先生!」
途中で神官オーガが割り込んできた。
すごい形相というか、かなり真面目な顔をしていた。
それよりも、そんな顔で入ってきたら、知らん奴だと絶対に強盗にまちがわれかねんぞ?
「食べる前にやる事はなんですか?みさなん」
「あっ、お祈り」
「はい、その通りです。では、食事に感謝を……」
「「「「感謝を……」」」」
しばらく、全員が黙祷を捧げているが、自分にとっちゃぁ、そんなものは気にしない口なので、なんだかなぁと思ったりはするが、これらはそれぞれの価値観だからなぁ。何も言うまいて。
「これ、うっま」
「あまーい」
「この木の実をつけてもおいしいぞ!」
「うっまうっまうっま」
「さすがは命の水、美味しいですねぇ、何杯でもいけますねぇ」
というか、生臭神官、菓子よりも昼間からそっちかよ。
……まぁ楽しんでくれりゃぁ、それでいいか。
なお数日後、どこから話を聞きつけたのか、商業組合の
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