「小さな音楽隊」

羽瀬川由紀

第1話

若葉の香りが染み出す頃


わたしは目を覚ました。


それは朝6時ぐらいだろうか。


ココン、ココンと音がする。


窓を覗きこむとドングリの木が揺れていた。なんだドングリか。もう少し注意深く見てみるとミノムシ達がぶら下がっていた。

風が吹いたのか。と思ってミノムシ達を見ていると、窓からしていた硝子を揺らす音は止み、辺りは静かになった。


コココン、コン。コン、コココン。

音階を確かめるみたいに、ミノムシ達から音が聞こえてきた。

右端にぶら下がっているミノムシが、隣のミノムシにぶつかって、さらに隣にぶつかっては、テンポをずらして、音が生まれる。

まるでお互いに音を奏で合っているようだった。


テンポが少し落ち着いた時、風の吹き荒ぶ音とミノムシ達のカラカラとした音が混ざり合い、少し切ないような、物悲しい音が流れてきた。


わたしは耳を澄ましていると、

今度はテンポが良くコンコンコンと音がした。

ミノムシ達が、踊るように、楽しむように揺れて音を奏で合っていた。


音楽は止まる事なく、流れていた。


朝からいい音楽を聴いたなぁと思って、わたしは学校に行く準備をしに、階段を降りていった。

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「小さな音楽隊」 羽瀬川由紀 @yuki024

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